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卒業生紹介 モーグル日本代表 吉川空さん(2011年度卒業)

金曜日, 2月 15th, 2013

レイクプラシッドからカルガリー、そしてソルトレイクシティ。3週間でこれだけの距離を移動し、トップクラスの競技会で連戦する。モーグル日本代表の吉川空は、わずか1週間の日本滞在を経て、再びソチで開かれるW杯にむけて出発する。

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――体調管理が大変ですね。
「そうですね。身体のケアももちろんですが、心のケアがもっと重要です。うまく気分転換をしてストレスを軽くする必要があります。」

――合宿では練習がもちろん中心ですが、それ以外では何をして過ごすのですか?
「マッサージをしてもらったり、ブログを書いたり、料理をしたり。あまり外には出ませんね。気分転換に街に出ることもありますが、そもそも合宿所は山の中なので近くに街がないことのほうが多いです。」

――料理をされるのですね。他のメンバーにふるまったりするのですか?
「いえ、だいたい一人で食べてます。得意なのはピザかな? クラストから手作りしますよ。」

――合宿のメンバーは仲間でもあり、ライバルでもありますよね。いろいろなプレッシャーがあると思います。
「競技会でもそうですが、プレッシャーはあって当たり前です。プレッシャーに強いかどうかで成績も変わります。トップ選手でありつづけるためにはプレッシャーを力に変える能力が必要です。あとはモチベーション保つことですね。代表クラスとそうでない選手は、モチベーションが全然違います。」

吉川は度重なるケガに苦しめられた。ナショナルチームから外れたことも一度ではない。そのたびに、周囲の選手のモチベーションの違いを感じてきた。代表選手とそれ以下の選手の技能が紙一重だとしても、モチベーションの高さがまったく違うという。

――モチベーションを高く持ち続けるためにはどうしたらいいのでしょうか?
「自分次第なのは確かです。ただ周囲の環境も大切ですね。代表選手は些細なことで気持ちが折れることもあります。だからといって持ち上げてもらえばいいというわけでもないし、難しいですね。それでもうまくサポートしてもらえれば、すごい力が出せますよ」

――人間関係が大切ということですね。
「そうです。代表選手は多くの人のサポートでここまで来たことをよくわかっています。昔は自分の力だけでここまで来たなどと天狗になったこともありましたが、いま考えるとバカですね。ケガで代表を外れたときもサポートしてくれた大学には感謝してます。」

――大学といえば、卒業したいま振り返ってみて、どういう意味がありましたか?
「自分の常識を固めるなということを学んだような気がします。自分が当たり前だと思っていたことが全然当たり前じゃなかったとか、ものの見方にはいろいろあるとか。1,2年の頃はすぐに役立つかどうかだけで授業を判断していましたが、いまは自分の常識を見直すためにもっと授業をとりたかったと思いますね。」

吉川のゼミ論文のテーマは「なぜ冬季オリンピックに黒人選手が少ないのか」だった。黒人選手が少ないのは当たり前だと思っていた吉川は、その背景を探る中で、貧困の問題や「黒人が選ぶべきスポーツ」という社会通念の強さ、そして黒人選手がスポンサー契約を結ぶことの難しさを知ったという。

――そのスポンサー契約ですが、大学を卒業してから吉川さんはフリーで競技を続けていますね。
「フリーですから遠征費用は全部自費です。いまはなかなかスポンサーがつかないんです。企業も選手を丸抱えするには大変な時代ですからね。だから僕は一年の半分はスキーを抱えて転戦し、残り半分はスーツに着替えて企業まわりですよ。でもそこで学ぶことも多いです。」

――たとえば?
「新しいものの見方とか、その企業から見た社会の様子とか。選手は競技が上手ければいいというものではないので、企業の人と話すのは本当に面白いです。」

人と人とのつながりを大切にし、対話の中から自分の常識を見直していく。一方で絶え間ないプレッシャーを跳ね返し、目標をつかみ取るために努力を怠らない。吉川はトップ選手であると同時に、成熟した「社会人」でもある。

――ところでオリンピック出場の可能性は?
「可能性はあります。いまのナショナルチーム7名のうち、おそらく4名がオリンピックに出場できるでしょう。3月1日にノルウェーで行なわれる世界選手権で表彰台に上れた者が、オリンピック出場内定ということになると思います。」

――つい先日ソルトレイクシティから戻られて、すぐにソチに向けて出発し、それから日本に戻って福島でのW杯、その後にノルウェーですか。時差も考えると殺人的スケジュールですね。
「僕だけじゃありません。代表選手はみんなやっていることです。この中での競争ですからね。ちなみにノルウェーの後はスウェーデン、その後のスペインが今季最終戦です。」

――うまく調整して、いい結果が出せるよう祈っております。
「ありがとうございます。がんばります。」

海外のモーグル競技実況を見ていると、吉川は実況中継者に愛されているのがわかる。一か八かで勝負をかけるそのスタイルが、彼らの心を沸き立たせる。その吉川も、スポンサー契約の行方によってはスキーを脱ぐ覚悟をしている。まだ23歳になったばかりの彼はこれからも成長する可能性がある。スポンサーが現れることを祈るばかりだ。競技の内でも外でも戦い続ける吉川に、ぜひエールを送ってほしい。

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