「身体心理」と「幻影肢痛」ということ。

2012年4月12日 | By kasai | Filed in: 身体心理療法.

身体心理療法はBody Psychotherapyボディ・サイコセラピーです。身体的な要素を取り入れた心理療法という位置づけです。ただし、この名前は何だか少し「ぬるい」感じがしています。英語圏では普通の表現ですが。
というのは、「身体・心理」が密接に連結しているという医学的な理解は今から80年以上も前から知られていて、当時、somato-psyche「身体精神」という言い方があり、身心の連結について医学的に議論され始めていました。この身体精神という言葉の方が身心の連結をよく表していると思います。
どのあたりから講義を始めて進めて行くか、まだ思案しているのですが、この「身体精神」という言葉とその実態がどれほど実質的な話なのか、カウンセリングや臨床心理学という枠組みをはるかに超えていることだけは知っていてほしいと思います。(このあたりの説明は、「身体心理療法」を履修できる三年生以上に向けて書いています)。

事故や病気などで手足の一部を切断した患者さんたちに、切断されて存在しない部位が本人には存在しているように感じられる場合があります。これを「幻影肢(げんえいし) phantom limb」といいます。
失った手足の部位が「ある」と感じられるだけではなく、そこにひどい痛みを感じる患者さんたちがいて、それを「幻影肢痛(げんえいしつう) phantom limb pain」と呼びます。
「ない手足がひどく痛い」幻影肢痛で苦しむ患者さんに鎮痛剤を与えても痛みは治まりません。薬が効いてほしい部位が存在しないので痛み止めが効かないのです。それで、本当は痛くないのに何か心理的に痛いだけなのだ…といった邪推も生まれますが、そういうことでは説明できないほどの激痛で苦しむことが多いのです。
そうした痛みで苦しむ患者さんに、広い意味での心理療法や催眠療法を行って、痛みの部位を減らしていき、最終的に痛みの領域が縮退して最小にまで小さくなるといったアプローチが有効な場合があることも分かっています。

こうした例を取り上げてみると、カウンセリングと心理療法の違いがはっきり分かると思います。さらに、それは単なる心理療法ではなく「身体心理療法」と呼ぶべきアプローチであることも分かりますね。
臨床心理学とカウンセリングは、身体的な症状や身体の病理的な実質に関わることにこれまでほとんど関心を向けてきていません。こころの問題だけに領域を限定しすぎたせいだと私は考えています。
その間に理学療法や整体などの外科的な領域では、結果的に「身体心理療法」的なアプローチを取り入れている場合があります。その反面、「からだ」の要素を見落とした臨床心理学の方では、そうした学問的蓄積も実践も進展しないままです。そういう状態は学問的にも、また身体心理的な症状などに苦しむ人たちを支えるという点でも非常に残念に思うのです…。
ということで、視野を広げるために「身体心理療法」の授業に来てみてくださいね。担当:葛西俊治



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