質問にお答えします-第12回-

2012年7月10日 | By mori | Filed in: 心理学(2012年度).

(全文を読む場合は、タイトルをクリック) 7月5日の授業内容に対して寄せられた質問への回答です。

Q1. 恐怖症や依存症は、あるものに異常に恐怖を抱いたり、あるものに異常に執着心を抱いたりすることで似ていると思います。第10回のプリントに「恐怖症はレスポンデント条件づけの事例として治療されている。」と書かれていましたが、依存症も治療できないのでしょうか。

A1. 行動主義者によれば、いわゆる「心の病」は不適切な行動が学習された状態と定義されます。依存症とあなたが呼んでいるものがレスポンデント条件づけの事例であれば、レスポンデント条件づけによって治療が可能です。オペラント条件づけの事例であれば、オペラント条件づけによって治療可能のはずです。

一概に「恐怖症」とか「依存症」とか呼ぶのではなく、解明したい症状が、どちらの条件づけの事例なのかをまず識別することが大切です。

 

Q2. 私は最近周りの人達が拍手をしていると、つられて、私がする必要がなくても無意識に拍手をしている時があります。要するに「くせ」です。ではこれ(くせ)も、前回の授業で言っていた条件刺激に入るのでしょうか。

A2. 条件刺激は、学習の結果、あなたのレスポンデント行動を条件反応として引き起こすようになった刺激です。あなたが「くせ」と呼んでいるのは、刺激ですか。違いますね。多分、「くせ」と呼ばれるものがレスポンデント条件づけの事例かと聞きたいのだと思います。こういうときは、条件刺激は何なのかを探してみるとよいと思います。また、その「くせ」は強化されているはずですが、どういう無条件刺激によって強化されているのでしょうか。この二つがみつからなければ、レスポンデント条件づけの事例ではありません。

 

Q3. トラウマも恐怖症のひとつとして数えられるのでしょうか。しかしトラウマつまり精神的外傷は辞書に神経症やヒステリーなどの精神症状の発生因となると書かれていました。では、トラウマと恐怖症の決定的な違いは何でしょうか。

A3. ある体験の後、特定の刺激によって大きな恐怖反応がでるようになった状態を、トラウマを背負ったと言うのではないかと思います。大きな恐怖反応はそれ自体が不快であることがあります。「大きな声を出して叫ぶ」という恐怖反応にともなう大きな声が、別の不快反応を引き起こす無条件刺激になることもあるでしょう。このように、成立した条件づけが基盤になって、別の条件づけが成立することがあります。トラウマが別の症状の原因になるとは、こういう事態を言うのではないでしょうか。

 

Q4. 第10回の心理学の授業で扱った、ワトソンの行動主義についての質問です。

森先生は、条件づけとは、人間の価値の学習だとおっしゃっていました。価値の学習ということは、人の好き嫌いが条件づけに大きな影響を与えているということてすよね?

極端に恐怖症やトラウマになってしまうぐらい嫌いなものやその逆に好きなものが中性刺激であるとき、よりその度合いが強ければ強いほど、その中性刺激がCSに強化されるまでの時間早くなったり、消去されにくくなったりするのですか?

A4. 「人間の価値の学習」とは言っていません。「刺激の価値の学習」と言いました。「人間による、刺激の価値の学習」という意味でしょうか。

さて、ここで言う「価値」とは、刺激が動物に対して有する効力を指したもので、一般使われている「価値」という言葉とは、用法が異なります。このように専門用語は、一般の語彙と同じラベルを使いながら、特殊な用法をしていることが多いので注意して下さい。この専門用語の意味は何かを確かめて、それを拡大解釈してはいけません。あなたはそれをしてしまっているので、まず指摘しておきます(初学者ならよくやるので、気にしなくてよいです)。

刺激の「価値」という用語を誤って使っているため、あなたの論理は正しく進みません。「価値の学習ということは、人の好き嫌いが条件づけに大きな影響を与えているということてすよね?」の部分が間違っています。ワトソンの行動主義では、刺激には無条件刺激と条件刺激と中性刺激しか、反応には無条件反応と条件反応しかありません。中性刺激が「好き」とか「嫌い」とか呼ばれるものであれば、それは中性ではありません。なぜなら「好き」(嫌い)と呼ぶべき反応を引き起こしているからです。

 

Q5. スキナーのオペラント条件づけの知的基盤となったのはエドワード・ソーンダイクの試行錯誤学習であることを調べたのですが、それは詳しくはどういう学習なのでしょうか。

A5. ソーンダイクがネコを使った問題箱の研究で見出したのは、スキナーのオペラント条件づけと同じだと思います。あなたの言う通りです。

もう一歩深く調べてみてはどうですか。よい知らせを待っています。図書館に心理学関連の本が並んでいる書棚がありますね。その最初のあたりにある、ハンドブックのような本を見ると載っていると思います。

 

Q6. 第10回「心がなくても心理学?-ワトソンの行動主義宣言-」の中に出てきた「消去」の現象について質問します。

CSのみを提示しCRを消す、「消去」の現象がありますが、以下の場合について質問があります。私の母は幼少期に素足でなめくじを踏んだせいで、なめくじに恐怖を覚えるようになりました。現在は、なめくじ本体の姿と、なめくじににた踏んだ感触を思い出し、不愉快なようです。

この場合、母のなめくじ嫌いを治すとすれば

①なめくじを見ると母の欲しいものをもらえる仕組みを作る

②なめくじに感触が似たものを踏むと母の好きな匂いが噴出する

の2つを考えたのですが、消去効果はあるでしょうか?

A6. まずこの現象が、レスポンデント条件づけであるかどうかを確かめないといけません。条件反応は不快感と呼ばれる生理反応だとして、条件刺激は何ですか。「なめくじ」?。それはもともと中性刺激だったのに、踏んだときの感覚が不快だったので嫌いになった。

多分条件刺激は「なめくじの姿」(視覚刺激)、無条件刺激は「なめくじ本体」で、無条件反応は踏んだときの「不快を示す生理反応」なんだと思います。おかあさんの症状は、「なめくじの姿を見るのも嫌」という条件反応でしょう。条件刺激が「姿」なので、これを中性刺激に戻せば(消去すれば)よろしい。「姿だけを見せ続ける」(条件刺激だけを提示し続ける)というのが基本です。「なめくじの姿」に、心地よい気分を条件づける方法があります。心地よい感覚を引き起こすような、無条件刺激を「なめくじの姿」と対提示すればよろしい。これは拮抗条件づけと言って、不快な条件刺激を消去しつつ、心地よい刺激に変える方法です。①がこれではないかと思います。よく知ってましたね、拮抗条件づけ。②も拮抗条件づけかも知れませんが、無条件刺激の変更ですから難しいかも。そもそも無条件刺激って変更できるのだろうか、という疑問もあります。

なめくじを踏むと不快な経験をする(なめくじは無条件刺激であり続ける)のだけれども、このとき不快な表情を見せないようにすることはできます。オペラント条件づけを重ねるのですね。こうすると、いわば「顔で笑って心で泣いて」という状態を作ることはできます。


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