質問にお答えします-第13回-

2012年7月17日 | By mori | Filed in: 心理学(2012年度).

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Q1. 本日の講義では実に自分に当てはまる勉強だなと思いました。心理学の質問で、一生懸命調べて質問したときは2点だったのに、素朴な疑問を質問したときの方が点数が高くて、なんだか質問するのに自信なくなって質問出来なくなってしまいましたが、これもオペラント行動によって得た結果が「消去」だったからですよね。

A1. いえ「罰」だと思います。普通に(報酬がなくても)あなたが行なう頻度より、点数が低かったあとの質問頻度が下がっているようだからです。普通の水準(強化される以前の水準)に戻るなら「消去」ですけれども。

強化、罰、消去の手続きを用いて、人間をコントロールすることは、なかなか難しいものです。もっとも難しいことの一つは、強化(あるいは消去、罰を与えたい)したいオペラント行動を適切にターゲットにすることです。つまり狙いを外さないということなのですが。

よいよい(と私が思った)質問のとき強化しているつもりですが、「よい」という評価がこちらと質問者で異なることがあります。そうすると、「自分はよい質問だと思って投稿したのに、点数が低かった」(罰)→「質問をやめよう」(行動頻度の低下)のような、こちらの思惑と正反対の結果になることかあります。

行動主義によれば、これは決して「心」があるからでなく、人間の行動が、同時多発あるいは連鎖しているからです。「心で思うこと」は発声を伴わない言語行動ですが、これと同時に外的行動が発生したり、先行する行動(内的、外的を問わず)が弁別刺激となって別のオペラント行動が後続するなど、人間の行動は多面的です。だから、一つだけ取り出して強化したり消去したり、罰を与えたりすることがとても難しいです。こちらが「よい」と評価する質問だけを、質問者が「よい」と評価するように、まず条件づける必要があります。

 

Q2. 私は短気ですが釣りを趣味にすれば辛抱強くなると思いますか。

A2. 「辛抱強い」というのは行動の形容であって、行動それ自体ではありません。変間隔スケジュールによって強化される行動が「辛抱強い」と形容されるだけです。釣り師は辛抱強いのではなくて、「釣り」という行動が「辛抱強い」と見えているだけです。

あなたの短気を直すのであれば、「短気」と呼ばれる行動を変間隔スケジュールで強化するようにすればよいと思います。

ただし、変間隔スケジュールで獲得された行動の傾向(辛抱強さ)が、他の行動に派生する可能性はあるかも知れません。詳しく知らないので、これ以上のことは言えません。

 

Q3. オペラント行動によって得た結果が良い結果ばかりでも、それが怖くなって「消去」してしまうことってあるんでしょうか。例えば、面白い一発芸をやる度に皆が笑うのだけど、いつ飽きられるかが怖くなって、良い結果しか出ていないはずなのに、自然と消去してしまう、みたいに。

A3. これもやはり「罰」だと思います。行動を起こすと、悪いこと(飽きられるのではという不安)が起きていますから。受けなくなると、芸をしなくなるのであれば、「消去」だと思います。

人間には、発声を伴わない言語行動があります。これが「不安に思う」とか「心配」の正体です。また、他人の行動とその結果を見ただけで強化や消去、罰が起きてしまう、観察学習というのも、人間には可能です。芸が受けなくなって不遇になった(悪いことが起きた)他の芸人を見て、「受けなくなったらどうしよう」という内的な言語行動が強化され、それが弁別刺激となって、受けている芸をやらなくなってしまう。そうすると、「芸をして受けない」という悪い出来事を回避できるので(負の強化)、その受けている芸をすることがなくなって行く。こういう構造ではないかと思います。

 

Q4. 現代の精神医学では、どのような立場で治療しているのですか。行動主義のお医者さんはそれにならった治療をするのですか。

A4. 精神医学は薬(薬物療法)が中心ではないかと思います。あと、精神分析ね(少数派だと思いますが)。臨床心理学では、心理療法と行動療法が併用されていると思いますが、前者を使用する方が人数としては大きいのではないかと思います。

行動主義の立場に立つ治療者であれば、行動主義の原理に則って治療します。北海道医療大学では、行動主義に基づく治療法(行動療法)を学んでいる人が多いです。日本の行動主義者のトップの一人である、坂野雄二先生がいますからね。

行動主義や行動療法について、入門的な本が読みたい場合は「行動分析への招待」(大修館)がお勧めです。説明が丁寧でわかりやすく、また文才にあふれているので読んでいて飽きない本です。著者は佐藤方哉先生と言って、長年日本の行動主義を引っ張ってきた先生です。最近、お亡くなりになりました。

 

Q5. スキナーのオペラント条件づけで嫌悪事象が伴う(罰を受ける)は罰であって、それはその行動の頻度を減らすとありました。しかし、世の中には罰を受けることを好むものもいます。その場合は例外として行動頻度は上がると考えてもよろしいのでしょうか。

A5. ほうほう、特殊な趣味をお持ちの方をご存知のようで。

「罰に耐えるとよいことが起きる」という経験をすると、罰を積極的に受けるようになるのではないかと思います。コーチの激励によって、苦しい特訓を進んで受けるようになるとか。こういう場合、それは「罰」でなく「強化」になります。あくまで、行動の頻度を下げるものは「罰」、上げるものは「強化」と言います。あなたが挙げている例は、例外ではなく、強化の事例ととらえるべきです。

 

Q6. プログラム学習も公文式も1950年から始まったみたいですが、偶然なのでしょうか。何か関係はありますか。

A6. とてもよく似ている教授方法で、同じ年に発表されているのに、互いに交流した形跡がないのはとても不思議ですね。あなたが「何かあるのでは」と思うのも無理ないと思います。

公文さんがスキナーを参考にしたという証拠を、私は発見できていません。公文式に関する本をいくつか読んでみましたが、スキナーのプログラム学習に基づいているというような記述はみられませんでした。ですから、偶然なのか、関係があるのかと言われても、現時点で答えることはできません。授業で「両者は独立発見とみなすしかない」と述べた通りです。

 

Q7. ある授業で「目標を設定して、それを達成するための下位目標を設定し、その下位目標を達成するために努力する」という指導がなされていました。これは「オペラント条件づけの応用」で取り上げられた「シェイピング」によるものなのでしょうか。

A7. 下位目標(より単純なオペラント行動)を順次達成して行くことで、複雑なオペラント行動を学習させる技法がシェイピングです。下位目標(最終的には目標となっている複雑な行動)となっているオペラント行動を、オペラント条件づけを用いて学習します。あくまでオペラント条件づけが用いられていることがシェイピングの本質なので、下位目標が設定されているからと言って、シェイピングだとは限りません。下位目標の設定は、シェイピングの必要条件ではありますが、十分条件ではないということです。

その授業では、下位目標への到達のためにオペラント条件づけが用いられていたのでしょうか。そうでないならシェイピングではありません。

 

Q8. 私はこの前あるバラエティー番組で中国中山大学が研究結果を出した、お金を数えることで得られる快感が痛みを軽減しているという実験を実際にやってみようという内容を見ました。その実験方法というのは、

1.AグループとBグループに分かれ、仕切りでお互いが見えないようにし、Bグループには実験内容がわからないようにヘッドホンをしてもらう

2.Aグループに、50枚の1万円札を数えてもらう

3.Aグループがお金を数え終わったらお金は回収し、Bグループはヘッドホンを外す

4.両チームとも氷水に両足をつけて、より長い時間我慢してもらう

結果:Bチームはすぐに我慢出来ず上げてしまった

Aチームの方が長く我慢できた

というものでした。

そこで質問なんですが、オペラント条件付けでは、報酬と罰を用いることもあると授業で聞きました。この実験の場合、報酬(お金)がもらえないとわかってても身体が勝手に報酬を得るために行動を起こして(正の条件付け)いるのでしょうか。(行動を起こすというのは、この実験では氷水に耐えるということです。)その結果、脳が痛みよりも報酬のことを考えてしまって、普通の人よりも身体の痛みが和らいでいるのでしょうか。もしそうならば、この行動も消去などによって治療(行動修正)がなさられるのでしょうか。

A8. これは残念ながら、オペラント条件づけの事例ではなく、レスポンデント条件づけの事例ではないかと思います。お金という条件刺激によって、生理的な快反応が生じる。それが、無条件刺激である氷水の効果を低減したのではないでしょうか。「脳が痛みよりも報酬のことを考えてしまって、普通の人よりも身体の痛みが和らいでいる」とあなたが表現する、この事態がまさにレスポンデント条件づけに見えます。

「氷水のなかにとどまり続ける」というオペラント行動を強化する報酬がなければ、そのオペラント行動は強化されません。もらえるかのようにだまされているのでもないようですから、オペラント行動を強化する報酬は、この実験には存在しないようです。

二つの条件づけはきちんと区別できるようになって下さい。オペラント条件づけであれば、オペラント行動が強化や消去、罰の対象となっているはずです。オペラント行動は環境への働きかけであり、一方レスポンデント行動は筋肉運動や生理反応です。強化、消去、行動修正と、同じ言葉を使っていても、条件づけが異なればその意味も異なります。


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