質問にお答えします-第12回-

2013年7月16日 | By mori | Filed in: 心理学(2013年度).

(全文を読む場合はタイトルをクリック) 前回の授業に対する質問への回答です。

Q1. レスポンデント条件付けの所で、お金を見ると喜んでしまうという話をしたときに、喜ぶ反応として、心拍数が上がったり、発汗することを説明していました。しかし、これは緊張や不安を感じた時と同じ反応ではないでしょうか。だとすると、人が感じていることと、行動を同じものとして研究すると、私たちが意識と思っているものと違いができてしまうのではないかと考えました。喜びを感じたときと、緊張や不安を感じたときの行動には違いがあるのでしょうか?

A1. 「喜び」という心的概念は、ワトソンの行動主義の観点からすると生理的反応であるということになります。このことが伝えたかったのであって、「喜び」の厳密な生理学的定義を行なおうとした訳ではありません。

ワトソンによれば、「喜び」と一般に呼ばれる状態は「不安」や「緊張」と区別される生理的状態として、特定できるはずです。もっともダットンとアロンによる「吊り橋実験」として有名な実験などによれば、同じ生理的興奮状態であっても、それが何として認知されるかで心的状態としては異なるという報告があります。吊り橋の恐怖による興奮が、対面した女性への魅力に転じてしまうという研究ですね。ここから感情の二要因理論が提唱されました。この研究などからすると、あなたが言うように、生理的興奮(ワトソンの行動)によって心的状態(意識、認知)を置き換えることはできないことになりますね。よいところに気づかれたと思います。学んだことを、自分の身の回りに当てはめてみて、学説の理解を促したり、矛盾を発見したりするのは、とてもよい学習法です。

 

Q2. 講義中のビデオで、犬のレスポンデント条件付けのときに、餌を見るとよだれを出すことは、生物は生まれもってのものであるとおっしゃっていました。しかし、犬が餌だと認知していなければ、この反応は起こらないのではないかと思いました。口に物を含むと唾液が出るのは、生まれつきのものです。しかし、餌を目の前にして唾液が出るのは、条件反応ではないのでしょうか?

A2. エサであることを特定する情報がエサの視覚像(や匂い)にあれば、エサの視覚像(匂い)も無条件刺激です。あるいはエサが発しているこれら物理的刺激が、無条件刺激です。「エサであることを特定する情報」という言い方はアフォーダンス理論の言い方なので、多分ワトソンはしないと思います。単に、「食べ物かどうかは見れば(かげば)わかる。そういう刺激を無条件刺激と言うのだ。」と言うでしょう。

確かに、多くの食べ物は見た(かいだ)だけで食べ物だとわかります。そうでない食べ物については、実際食べてみた経験によって条件づけが生じ、視覚像が条件刺激になります。一見食べ物でないものを食べ物にしてしまうのは、人間以外ではあまりないと思います。多分、ナマコとかホヤとか、食べてみて初めて食べ物となったのでしょう。

あなたの言うことは、食べてみて初めて食べ物だとわかったものについては正しいと言えるでしょう。ただし、「認知」という言葉を使ってはいけません。「条件づけられている」と言うべきです。行動主義の用語で説明できる限り、その用語を用いて説明することが行動主義の理解につながります。行動主義が正しいからではなく、どういう考え方なのかを知るための、そしてその限界を知るためのトレーニングになるので、このようなことをお勧めします。

 

Q3. 条件反応は人間にもある、とのことを聞いて気になったのですが、過敏性腸症候群(電車に乗った時や会議がある時などにお腹を壊しやすくなる症状)は「電車」や「会議」が刺激となる条件反応の一種と言えるのでしょうか?

A3. 過敏性腸症候群と呼ばれる行動(生理的反応)を引き起こす無条件刺激があって、その無条件刺激の効力が、もともと中性刺激である「電車」や「会議」によって代替されているのであれば、レスポンデント条件づけの事例です。この図式に該当するか、考えてみて下さい。

 

Q4. アメリカの心理学には、主観的心理学と客観的心理学の2つの見方があるが、日本の臨床心理学は一体どちらの立場の心理学なのでしょうか?

A4. 日本の心理学の状況は、心理学史という領域で詳しく述べられています。調べてみて下さい。「流れを読む心理学史-世界と日本の心理学-」(有斐閣)なんかいいと思います。

 

Q5. ドイツで心理学が誕生したり、心理学者にドイツ生まれが多いのには、何か理由があるのでしょうか?

A5. 「心理学者にドイツ生まれが多い」というのは事実ですか。授業でそう言った覚えはないのですが。あなたが間違っていると言っている訳ではありません。

心理学には、生理学や物理学から流れてきた人が多いのですが、当時これらの自然科学を主導したのがドイツだったため、ドイツで心理学が発祥したのだと思います。

 

Q6. 心理学が最も進んでいる国はどこですか?

A6. 何をもって進んでいると言うかには議論の余地がありますが、心理学者の人口で言ったら米国ではないかと思います。

 

Q7. 無条件刺激と無条件反応は、生物である限り持っていて、なおかつ無条件に起こるものです。この無条件刺激から無条件反応が出るというのは、生得的行動とほぼ同じに思えるのですが、違いはあるのでしょうか?

A7. 生得的行動とは、生まれながらにして持っている行動を指す言葉なので、無条件刺激によって生じる無条件反応も生得的行動と言えます。では、解発刺激と無条件刺激はどこが違うのかと言うと・・・・。さてどこでしょうね。

 

今日の一句

[その壱]

まんじゅうが 怖いと感じる そのうちに 大福怖いし 和菓子も怖い

[コメント壱]

般化を詠んでくれたのですね。皆さん、「般化」と聞いたらこの歌を思い出して下さい。


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