質問にお答えします-第14回-

2013年7月31日 | By mori | Filed in: 心理学(2013年度).

(全文を読む場合はタイトルをクリック) 前回の授業内容に対する質問への回答です。

Q1. 「アメとムチ」はレスポンデント条件付けと考えて良いのでしょうか。

A1. どういう事態を想定して質問しているのか、具体的に書いてほしいです。ある行動に対して「アメ」を与え、別の行動には「ムチ」を与えるのであれば、行動に対する結果の返し方ですから、強化随伴性のことを言っていることになり、オペラント条件づけということになります。

どうしてレスポンデント条件づけと思ったのか、考えてみるといいと思います。どうして勘違いしたのか、ということをです。そうしないと正しい理解はなかなか身につきません。

 

Q2. 知能は「生得的なもので遺伝する」というゴダードの思想は間違えていると私は思います。なぜなら、もしゴダードの思想が正しいのであれば、就学年数をどれだけ重ねても知能は遺伝的なものなので、発達しないのではないかと私は考えるからです。ゴダードの考えだと、私たちが勉強しても知能は高くならないということになるのではないのでしょうか?また、この私の考えは間違えていますか?

A2. 勉強すると知能が高くなると、あなは考えていますか? それは技量が身に付くだけで、生得的な素質が高まる訳ではないと、多分ゴダートは言うでしょう。勉強すると技量は身に付きますが、素質の程度は変わらないということです。多分ゴダートの言いたいことはこんな感じではないかと推量します。教育によって技量が身に付くことは、ゴダートもわかっていたと思いますから、あなたの主張に対してはこのように言うのではないかと思うのです。

実際知能が生得的かどうかについてですが、知能は他の心理形質に比べて後天的要素が高いと言われています。この点で言えば、ゴダートは間違いであなたが言うことが正しいです。

 

Q3. 人種差別に根ざして「黒人は劣っている」と言いますが、もし仮に、黒人が生まれてすぐに白人の国に移住し、そこで就学するとしたら、おそらく黒人は白人の知能レベルに近づくと思うのですが、実際はどうなのでしょうか?

A3. 「人種差別に根ざして「黒人は劣っている」と言いますが」の部分はいらないと思います。これ以降の文章とどうかかわるのか不明です。後の部分だけを取り上げて質問とみなします。

知能に後天的な経験の影響が大きいことが、現在諸研究によって明らかになっていますので、教育次第で知能は上がると思います。

あなたの質問は、「知能が経験(教育)によって上がる」という前提でなされています。その前提の妥当性を研究などの引用によって示さなければ、「何を勝手な前提に立っているのかな」と、ゴダートあたりに言われてしまいます。

 

Q4. 知能の発達段階の前操作期において、三つ山問題や保存問題が自己中心性の例として挙げられますが、かくれんぼの隠れ方も一つの例になるのでしょうか?

A4. 三つ山問題への失敗は、自己中心性(中心性が自己の身体に現れる)によって起りますが、保存問題の間違いは中心性によるものです。

かくれんぼの隠れ方は、相手から見つかりにくいように隠れるべきですから、他者の視点がとれないと、つまり自己中心性があると、うまく隠れることができないのではないとかと思います。

かくれんぼについては、中心性よりも、心の理論(theory of mind)という研究で語られることが多いです。こちらの方も調べてみて下さい。

 

Q5. 知能検査について教えていただきました。ビネは、知能検査誕生の動機が学力向上であったのに、アメリカでは非人道的ともいえる断種や移民制限のための検査もされていたことに驚きでした。現在のアメリカでもまだこのような断種や移民制限のための検査は続いているのでしょうか。また現在の日本では集団式検査を行っていないのでしょうか。

A5. アメリカの現状について詳しくは知りませんが、そういう話を聞きませんので、今はしていないと思います。ところで断種はともかくとして、移民制限については、個人的には、非人道的とは思えません。移民を受け入れるかどうかは国家の主権の範囲であり、受け入れようと受け入れまいと、また受け入れるにしてもどういう人を受け入れるかも、受け入れ側の裁量だと思います。

集団式の知能検査は、今もあります。日本でも行なわれていると思います。このへんの事情は「心理アセスメント」という科目で習うと思いますので、楽しみにしていて下さい。

 

情報提供、感謝します

[提供1]

論理的推論の一つに推移率というものがありましたが、これはa~bとb~cならa~cが成り立つというものです。つまり現実の物で例えると、「木は炭になる」と「炭は灰になる」を知ったときに「木は灰になる」という推論が、論理的推論の推移率になるのではないでしょうか。

[コメント1]

推移「率」ではなく、推移「律」ですね。おっしゃる通りでよいと思います。他にも、a=b かつ b=c から a=c が、a>b かつ b>c から a>c が導かれるなどがあります。

 

[提供2]

心理学の第5回目の講義で取り扱われました喃語の講義の際に〔障害がある人でも喃語を話すのか〕という疑問がでていましたので調べたところ、斉藤くるみ『少数言語としての手話』東京大学出版会,2007年という本がいいのかと思います。

この本の内容は、重度の聴覚障害で音声言語の入力が制限される聾児にも、喃語は観察される。これを「喃語は環境に左右されない生得的な能力である」と結論づけている。分節された喃語は、聾児の方が開始時期が遅く、出現頻度も低いことから言語環境や聴覚経験が喃語に影響を与える。ちなみに、手話言語環境で育った聾児のばあい、初語出現前に手話喃語(ジェスチャー)がみられ、その働きは音声言語の喃語と多くの頻度で似ている。などという内容のものです。参考文献として、こちらの本はいかがでしょうか。

 

[コメント2]

聞こえないのに喃語が出ることから、喃語の生得性が主張される訳ですね。しかし開始時期の遅れや、出現頻度から、経験の影響も認められると。手話にも喃語があるとは面白いですが、手話における喃語がどういうものか(形態的特徴)を述べてくれるとよいと思いました。詳しくは、この文献を読むということにしましょう。

 

今日の一句

[その壱]

始まりの 知能検査は 誰がために いつしか格付け 道具に変わり

[コメント壱]

「誰がために」って誰のためだったのでしょう。知識の暗記のための句と読めますので、このへんはむしろ明確にした方がよかったと思いました。

 

今学期の質問の返答は、これで終わりです。一学期間、沢山の質問、情報提供、一句をありがとうございました。


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