質問にお答えします-第10回-

2014年6月24日 | By mori | Filed in: 心理学(2014年度).

(全文を読む場合はタイトルをクリック) 前回はオペラント条件づけの説明をしました。まずレスポンデント行動とは違う、オペラント行動の理解から始めるのが大切です。オペラント行動は、環境への働きかけによって区別される行動で、筋肉の動きによって特定される行動ではありません。全く同一の動きをしたとしても、状況が異なると異なるオペラント行動であることがあり得ます。また、刺激に誘発されるのではなく、生体が自発するものであります。これらの点で、レスポンデント行動とは異なります。そしてオペラント行動は、オペラント条件づけにしたがって学習されます。ある状況や刺激の下で、あるオペラント行動をしたとき、どのような結果が後続するかが問題です。よい結果が返ってきた場合、その状況下でそのオペラント行動をとる頻度は高くなっていきます。これを強化と言いました。悪い結果が返ってくる場合、行動の頻度は低下していきます。これを罰と言いました。特に何も起らない場合は、行動は元々持っていた自発の頻度(オペラント水準と言いました)に近づいていきます。これを消去と言いました。これら結果の返り方を、随伴性と言います。特定の状況(弁別刺激と言います)下で、オペラント行動がどういう結果を招くか(随伴性)によって、オペラント水準に比べて、そのオペラント行動の生起頻度が上がるか、下がるか、そのままかといったように変化する仕組みを、オペラント条件づけと言います。体系化したのはスキナーです。彼は、いわばワトソンの跡を継いで、行動主義を完成させた人物と考えてよいでしょう。

では以下、今回の授業の内容に対する質問への回答です。

Q1. 私は体を急につつかれたりするとかなり大きな声が出ます。これは声が出てしまうのを反応と考えるとレスポンデント条件づけですよね。しかし、声を出すことで、つつかれた事を我慢せず発散するので不快感が取り除かれます。これは正の強化なのでオペラント条件づけになりますよね?この場合はレスポンデント条件づけとオペラント条件づけどちらになりますか?

A1. 行なっている行動が、レスポンデント行動なのか、オペラント行動なのかを区別することがまず大切です。レスポンデント行動は、元々USによって発生するURとして、生得的に身に付いている行動(反射)です。あなたの大声をもたらしている、身体への物理的刺激がUSであれば、それに対するあなたの反応は生得的であるはずですし、自動的に発生するもののはずです。声を出すことが我慢できるなら違いますね、多分。URと言うべきはむしろ、つつくという刺激によって生じる「むずがゆさ」という身体感覚だと思います。これはあなたにとって、不快な反応のようです。この不快な状況が、声を出すことによって除去される。オペラント条件づけになります。負の強化の事例ですね。

 

Q2. レスポンデント条件付けについて質問があります。

消去の話を聞いたとき、探偵ナイトスクープという番組の動物嫌いの保育園の先生の話を思い出しました。

http://www.youtube.com/watch?v=yVVdHuipHNU←動画です。

この先生を椅子にくくりつけて周りに餌をまき、約10匹の犬を放し無理矢理触れ合うことで先生は動物嫌いを克服したのですがこれは消去ですよね?消去とはつまり慣れるということだと理解してよいのでしょうか?

あと動画の最後、14分20秒からの上で述べた荒療治によって普通の椅子に座るのが怖くなったというのは中性刺激だった普通の椅子が条件刺激になってしまったということであっていますか?

A2. あはは、この動画面白いですね。無理矢理触れ合わせる方法は、不安誘導療法というレスポンデント条件づけの応用です。詳しくは次回やります。皆さん、このビデオ、見ておくといいですよ。原理的には、不安誘導療法と同じです。皆さんの身の回りに、心理学の事例が沢山あります。発見して、みんなに教えてあげて下さい。授業で習ったことの理解が深まると思います。この質問をされた方の功績は大です。ありがとうございます。

消去とは、CSだけを提示し続けること(強化しない)ことによって、CSが中性刺激に戻ることを言います。「慣れ」と言い換えることもできるかも知れませんが、正確な定義の方で理解して下さい。

椅子が恐くなるのは、レスポンデント条件づけによって、椅子が恐怖反応を引き起こすCSとなった状態でしょう。犬というCSと同時に経験され続けた結果です。レスポンデント条件づけによる強化は、USと中性刺激の間だけでなく、ひとたび条件づけられたCSと中性刺激の間にも生じます。

 

Q3. まつわる現象のところでCSとCRのお話がありましたが、元から怖いと思っているものは消去できるのでしょうか。

A3. 消去はCSが中性刺激に戻ることなので、元々恐怖反応を引き起こすUSを消去することはできません。と、思うのですが。

 

Q4. 前回の授業で、「負の強化」に回避と逃避という2つがありましたが、その2つの中で更にどちらが強化されやすいなどはあるのでしょうか? (逃避→ギリギリで逃げられた 回避→事前に回避するので余裕がある。自分の経験では、余裕のある回避が強化される傾向にあるのではないかと考えます。)

A4. 回避と逃避のどちらが強化されやすいかとは面白い問題ですが、よく知りません。条件づけ(あるいは学習心理学)に関する詳しい本を読むと書いてあるかもしれない。

行動の結果得られる報酬(強化子)の大きさ(報酬価と言います)に違いがあれば、大きい方が強い強化をもたらすと思います。逃避は、一度ひどい目にあってしまうので、回避の方がひどい目に会わずにすみ、お得(報酬価が高い)かも知れません。叱られてから行動を変えるか、叱られないように行動を帰るか。確かに後者の方が強化としては強いかも知れません。ただし「余裕があるから」ではなく、報酬価の違いのせいです。

念のため言っておきますが、レポートやテストの答案を書くときには、「→」とか「=」といった記号を使ってはいけません。文章で表現して下さい。あなたの質問文であれば、「逃避の場合、逃げられるのはギリギリであるのに対して、回避では事前に逃げることができているので余裕がある。」のようになると思います。

記号が何を意味しているのか、書き手と読み手で違うことがあり、誤解を招くことがあります。答案で誤解を招いたら、解答者の責任です。気をつけて下さい。この授業の質問では、まぁいいです。誤解される可能性はありますが。

 

Q5. 大会とか試験などで緊張すると思います。緊張は反射だと思うのですが、それは何が原因で緊張するのですか?

A5. 人と状況によります。あなたが想定する大会とか試験とかに存在する、USやCSが何なのか考えてみて下さい。

 

Q6. 鳩の実験映像で赤の印が出たらつつくという行動をしていましたが、もし赤ではなく他の色の印が出たら鳩はどうなりますか?

A6. 弁別刺激は何であろうと構いません。別に赤でなくとも、色でなくともよいのです。

 

Q7. 子どもはお手伝いをしたらおこづかいをもらえることなどもオペラントですか?

A7. 「オペラントですか」ではなく、「オペラント条件づけの事例ですか」と聞くのが正確です。いい加減な文章は、時として誤解をもたらすので、正確に表現する癖を付けておいた方がよいですよ。

オペラント行動は何か、結果によって生じているのは強化か、罰か、消去かと考えてみればよろしいです。「お手伝い」はオペラント行動ですか、レスポンデント行動ですか。「おこづかいがもらえる」はよい結果がやってくる事態ですね。それによって、子供がお手伝いをするようになれば、これはどちらの条件づけですか。

 

Q8. オペラントで質問ですが、アルコールなどの依存症は強化と言うことでは同じようなものなのでしょうか?

A8. やはり正確な表現を心掛けて下さい。「オペラント条件づけについて質問ですが」でしょうか。さらに言うと「アルコールなどへの依存症」と言う方がよいと思います。

どういう行動が、どういう結果によって、どうなっているのですか。飲酒をするとどういう結果が返ってくるのですか。「依存症」ということですから、飲酒行動の頻度は高くなる(高いまま維持される)のでしょうね。ということは?

 

Q9. 子どもがいたずらをして、その子どもを叱ってもまたいたずらをします。今回の講義では罰と言う意味では反省すると思うのですが、もっと叱った方が良いのでしょうか?

A9. 基本は消去です。罰の効果については、次回の授業で詳しくやります。

 

Q10. 褒められて伸びる人は褒められることが強化になると思うのですが、叱って伸びる人は何が原因で強化するのですか?

A10. 何だと思いますか。行動の頻度が高くなる(高く維持される)には、必ず強化がなされているはずです。たとえば、「叱られるのが嫌でがんばる」(がんばれば叱られるという出来事を回避、あるいは未然に防げる)なら負の強化ですね。あなたが想定する事態で、他にどういう強化子があると思いますか。

 

今日の一句

[その壱] ドア開ける 手でも足でも  同じこと

[コメント壱] オペラント行動が環境への働きかけによって区別される行動であり、筋肉運動によって区別されるもものではないことを、一つの事例として示した句です。授業でも、この例を使って説明しましたね。オペラント行動がどういうものであるかを記憶する手だてにして下さい。

 

[その弐] 白ネズミ  見ると怖がる   アルバート

[コメント弐] 恐怖症がレスポンデント条件づけの事例であることを、ワトソンが示そうとして行なった実験の結果です。そういう事例であることを記憶するきっかけにして下さい。なぜこれがレスポンデント条件づけの事例なのかは、この句だけではわからないのだけれど、そこは皆さんの方で補って下さい。

 

[その参] 手を上げて  結果が変わる  場所により

[コメント参] 「手を挙げる」という行動が、教室でなされた場合と12号線沿いでなされた場合、全く同じ筋肉の動きだったとしても、その機能が異なるため(前者は「発言の要求」、後者は「タクシーの停車の要求」)、両者は別のオペラント行動として分類されると、授業ではお話ししました。もしこのことを詠んでくれたのであれば、「結果が変わる」ではなく「機能が変わる」です。

「結果が変わる」と言った場合、「手を挙げる」という行動の結果が、場所によって変わるという意味になります。これは随伴性が変わるということですね。簡単に言うと、同じ手を挙げるという行動をしても、場所によって「よい結果」が返ってきたり、「悪い結果」が返ってきたり、「特に何もなかった」りするということです。

 

[その肆] 環境で  行動変わる  オペラント

解説: オペラント行動は環境に対してどのような影響をもたらすかで区別される行動だと学習したので、環境により行動が変わると解釈しました。

[コメント肆] オペラント行動の定義はしっかりと把握されていますが、環境によって行動が変わるという表現は誤解を招きます。環境によって行動が変わるとは、どういう意味でしょうか。同じ身体の動きであっても、どういう状況で生じるか(どういう環境への働きかけなのか)によって、異なるオペラント行動になるという意味の句なら正しいのですが、もしそうであれば、より誤解の少ない表現があるのではないかと思います。「環境への 作用で変わる オペラント」とかね。字余りですが。

目のつけどころとその適切な表現は、一体になってこそ相手に伝わります。質問文の正確さ、表現の適切さについて私が何度も言うのは、皆さんがせっかくいいところに気づいていても、よい理解をしていても、伝わらなければ相手(評価者)にとってないも同然であり、もったいないと思うからです。表現の獲得にはある程度時間がかかります。専門課程に進んで皆さんが所属する専門ゼミや卒論で発表したり、レポートを作成したりするとき、そしてその後社会で活躍するときに、表現力は、もっと広く言うと国語力(正しく読む・聞く・話す・書く力)はとても重要になってきますので、今から少しずつ力をつけていってほしいと思います。

皆さんの国語力が公的に試されるのは、約一月後に迫った定期テストです。よろしくお願いします。


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