質問にお答えします-第11回-

2014年7月2日 | By mori | Filed in: 心理学(2014年度).

(全文を読む場合はタイトルをクリック) 前回は条件づけの応用について話をしました。行動主義は衰退しましたが、条件づけ自体が否定された訳ではなく、様々なところで条件づけが利用されています。また、されてきました。自然な条件下ではまず自発しないような、複雑な行動を学習させるために考案されたシェイピングは、サーカスや水族館などでの動物ショーで利用されています。これを教育場面で展開したものがプログラム学習です。現在では公文式に、これを見ることができます(ただし授業でも言ったように、公文式がプログラム学習を利用したものかどうかは、創始年を考えてみると微妙です)。その他には、行動療法における応用があります。心を認めない行動主義では、「心の病」と称されるものはすべて「不適切行動」と読み替えられ、二つの条件づけによる行動修正が治療の本体となります。普通の人にとっては中性刺激であるものが、好ましくないCSになってしまっている場合、これはレスポンデント条件づけに従う不適切行動です。CSの消去、あるいは拮抗条件づけによって、望ましいCSとなるような再学習がはかられます。状況に相応しくないオペラント行動を行なってしまう場合もあります。例えば「服を脱ぐ」という行動は、風呂場でやる分には問題ないのですが、公衆の面前(教室とか)でやるとまずい行動です。このときは、オペラント条件づけによって治療します。生じるとまずい状況下で、そのオペラント行動を消去する、あるいは望ましいオペラント行動を強化してやるのが基本です。

それでは以下、前回の授業に関する質問に対する回答です。

 

Q1. 行動療法として不安誘発療法という、安全な状況で恐怖刺激に比較的長時間さらし続ける方法がありました。自分はこれは荒療治のような気がして、被験者に負担が大きいのではないかと考えました。トラウマになるなどして、かえって状況が悪化したりすることはないのでしょうか。

また一度身体とこころに染み付いた、CS→CRとなったものを消去することは、個人差もあると思いますが難解なことではないのでしょうか。

A1. この手の疑問はよくあります。トラウマの治療がうまくいっていない人も、実際にいます。どうしてうまくいかないのでしょうか。多分、動物と違って、人間が言語活動を行なうことに原因があるのではないかと思われます。たとえば、CSに対してCRを起こしつつ、かつそのCSを弁別刺激として「恐い、恐い」といった言語活動(発声の有無は問わない)を起こしたとします(これは知覚した環境の描写となる、専門的に言えば、「タクト」という言語行動です)。「恐い、恐い」という言語行動はオペラント行動なのですが、「恐い」の意味がすでにレスポンデント条件づけによって獲得されています。不安反応を引き起こすUSの効力を持ったCSとなっているということです。不安誘発療法は、外面的なCSの消去は行なっていますが、言語行動によって発生するCSの方はそのままです。かくして、言語行動を放置する不安誘発療法は、片手落ちとなり、効果が望めない場合もあるでしょう。

二番目の問いに行く前に、文章上の注意です。「身体とこころに染み付いた、CS→CRとなったものを消去することは」のところですが、記号の使用は避け、日本語にしてほしいと思います(これをテストでやったら0点です)。また行動主義的に言うと、「こころに染み付いた」は反則です。この文は「消去抵抗が強いCSを消去することは」とすればよいと思います。さらに言うと「難解」ではなく「困難」ですね。「難解」とは「理解が難しい」という意味ですから、この文には相応しくないと思います。

さて二番目の問いですが、行動主義的にはこう表現すべきなのです。「消去抵抗が高いCSを消去することは、個人差もあると思いますが困難なことではないのでしょうか」と。何が言いたいかというと、「消去抵抗が高い」という専門的表現を、俗っぽいものに置き換えたのが「心に染み付いた」という表現に過ぎないということです。このように言い換えた上で、あなたの問いに回答すれば、「確かに、消去がしにくい行動もあります。」となります。

 

Q2. 不安誘発療法で、動物が苦手で克服するために動画のようなことをして克服したとしても、何年か動物と触れあっていなかったらまた苦手になってしまうことはないのですか?

A2. この疑問がどこからやってきたか、知りたいと思いました。なぜならこの疑問は、レスポンデント条件づけで指摘されている、「自発的回復」という有名な現象を念頭においてなされているように思えるからです。知ってましたか、自発的回復? あるいは、そういう経験があったか、聞いたことがありましたか。

CSを消去して、中性刺激に戻ったように見えても、時間が経つとCSの効力が戻ることがあります。これを自発的回復と言います。このことから、消去とはCSの効力が減衰することによってではなく、CSの効力を積極的に抑制する試行であるとの考えが出てきました。要するに、一生懸命抑え込んで、一時現れないようになったが、重石が取れたらまた現れるようになったということです。したがって完全な治療を目すのであれば、拮抗条件づけを行なう方がよいでしょう。

 

Q3. 今回の授業で、心の病を不適切行動として考えるとありました。うつ病やパーソナリティー障害などの精神疾患も不適切行動になりますか?また、不適切行動であった場合、レスポンデント条件づけとオペラント条件づけのどちらになるのでしょうか?

A3. 行動主義者からすれば、精神疾患などありません。うつ病やパーソナリティー障害などの精神疾患も、学習された不適切行動です。さて、どちらの行動だと思いますか。もともとUSに対するURとして存在するのであればレスポンデント行動、もともと(生起頻度はともかく)自発的に発生するたぐいの行動ならオペラント行動です。

そのまえに、どういう行動が出ているとき「うつ病」とか「パーソナリティ障害」と言うのか、考えないといけませんね。すなわち、行動の言葉に翻訳しておくということです。翻訳して考えてみて、あらためてこの場で発表してみてもらえますか(情報提供扱いになります)。なお、これは誰がやっても構いませんので、投稿者以外が考えて発表しても構いません。早い者勝ちです。

参考までに、「学習性無力感」というのを調べてみることもお勧めします。

 

Q4. 先週の授業の強化スケジュールの中で、①比率スケジュール・②変率スケジュールというのが出てきました。私は①を「自分の結果次第で褒美の量などが変わるため、その褒美の実現に対して真っ直ぐに進もうとする。そして自分の理想の褒美にありつけた時、それまでその褒美に対して自分が頑張った分、褒美のために頑張っていた時よりも気が抜けやすいこと」、②を「自分が特に意識もせずに行った1つの行為が、思わぬ結果をもたらしたため、その行為をすればいつも結果が返ってくるのではないか、と考える。そのため、いつの間にかその行為を繰り返すようになってしまう。いわば、柳の下のどじょうのようなもの」ではないかと考えたのですが、そのようなことでしょうか?

A4. 行動主義者の主張を理解しようとするとき肝要なのは、「意識」とか「心」とかを連想する言葉を使って解釈しないということです。なぜなら、彼らはそれらを専門用語として使用することは禁じていて、代わりにそれらを行動の語彙に翻訳して理解します。

あなたの解釈は、行動主義にとっては禁じ手の言葉が並んでいますので、彼らからすると「違うよ」ということになりそうです。やるのであれば「実現に対して真っ直ぐに進もうとする」、「理想」、「自分が頑張った」、「意識もせずに」、「と考える」などをすべて行動の語彙に置き換えて、解釈しないといけません。

また、前回の質問への回答のなかにありましたが、スキナーは理論を作りません。ただ「そういう場合はそうなる」としか言いませんので、比率スケジュールだとどうしてそうなるかと考えるのは、スキナー的ではありません。

 

Q5. シェイピングでは即時報酬を与えるとあるが、これは定率効果であるからすぐに忘れてしまいませんか?

A5. 「定率効果」なんて言葉あったっけか? 行動1回に対して、報酬を1回を与えること、すなわち行動をすべて強化することは「連続強化」と言います。部分的にしか強化しないのを「部分強化」と言います。あなたは多分、「連続強化」と言いたかったのだと思います。

理屈から言えば、部分強化の方が消去抵抗が強いので(「忘れる」と言うのは行動主義的にはアウトです)、こちらの方がよいかも知れませんが、シェイピングの目的は、最終的に獲得させるべき「目標行動」ですから、これが発現するようになってから部分強化に切り替えた方がよいと思います。途中の行動の消去抵抗を高めてもどうかと思います。訓練者からすれば、途中の行動の消去への気配りより、目標行動への迅速な到達が優先されるんじゃないですかね。

 

Q6. 大多数の人は暗闇を恐れると思いますが、これは学習しているのでしょうか?暗闇は安全でも好きになれません。

A6. 暗闇って、USなんじゃないですか。安全じゃないですよ。だって、何も見えないでしょ。危険じゃないですか。

 

Q7. 自分を嫌う人間にずっと密着していれば、相手の嫌悪は解消されますか?

A7. どう思います? その人にとって「あなた」は不快反応を引き起こすCSです。強化せず、提示を繰り返せば、消去が起るはずですよね。先の質問でも言いましたが、人間の場合、不快刺激に遭遇したとき、不快なCSとして機能する発話行動をよく起こします。こっちの方も消去しないと、多分あなたは嫌われっぱなしだと思います。

あなたが密着する。すると相手が「こいつ、ウゼ」「キモ」等の発話を起こす(発声の有無を問いません)。この発話の消去もしない限り、あなたは嫌われっぱなしでしょうね、多分。なおこの発話の消去については、自発するオペラント行動として消去する方法と、不快反応を引き起こすCSとして消去する方法があります。さて、どうやったらよいかな。みんな、彼を助けるんだ。(笑) あ、これは考えてくれたら情報提供になります。よく考えて、よい案を提供してね。

 

Q8. 不安誘発療法で、条件刺激に長時間さらされたことによってトラウマになってしまったとしたら再度、不安誘発療法で取り除くのは可能なのでしょうか。また取り除くのが不可能な場合はどうするのでしょうか。

A8. 不安誘発療法によって、かえってトラウマになったり、治療が功を奏しないのは、別の質問で触れた通りではないかと思います。CSに伴って自発する言語活動の消去をしないといけないと思います。

 

Q9. 強化スケジュールについて、比率スケジュールの中で強化直後一時的な反応休止が生じるとありましたが、これは、例として 『皆勤賞のため学校に休まず来ていた人が皆勤賞をもらった後、やる気が削がれて学校に来なくなる』ということでしょうか。

A9. 「報酬をもらうまでに苦労したのち、ちょっとダレる」ということですが、これがやる気がそがれたからなのか、疲れたのかは、どうでもいいことです。行動主義的に言うなら、「強化直後一時的な反応休止が生じる。ただそうなるのだと言えばよく、理由を述べる必要はない。」となるでしょうか。皆勤賞を取った人が学校に来なくなったとして、その理由を言えといわれたら、行動主義者は「強化直後の反応休止である」と言うだけでしょう。

 

今日の一句

[その壱] 段階で 細かく強化 シェイピング

[コメント壱] シェイピングという英語が何を意味しているのかを確認するには、ちょうどよい句だと思います。どういうものか、憶えられたかな?


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