質問にお答えします-第12回-

2014年7月9日 | By mori | Filed in: 心理学(2014年度).

(全文を読む場合はタイトルをクリック) 前回は、条件づけを応用した行動療法の実際を知ってもらうため、ビデオを見ました。続いて、言葉が話せない乳児や動物の認知を知る方法として、条件づけが利用されている例を紹介しました。すなわち見本合わせ課題、遅延見本合わせ課題です。前者は知覚について、後者は記憶について調べる方法と言ってよいでしょう。続いて、次のプリントに移りました。ピアジェによる知能の発達段階論をとりあげるプリントですが、まず「発達」には様々な考え方(発達観)があることを述べました。そしてピアジェの発達理論に少し入ったところで終了となりました。

それでは以下、前回の授業に関する質問に対する回答です。

Q1. 罰を与えるとその行動は辞めますが、逆に褒めすぎるとどうなるのでしょうか?

A1. 日本語が少しおかしいような気が。「辞める」ではなく「止める」ですか。それと、「行動はやめますが」ではなく、「行動はやみますが」でしょうかね。

ほめることは強化なので、ほめれば強化がおこるのが普通です。あなたは「ほめすぎること」を問題視しているようですが、どうしてそう思いましたか。それを書いてほしかったですね。あなたは何かに気づいているのだと思いますが、それを知らせないのはもったいないですよ。

 

Q2. 鳩以外の動物も訓練したら本物の絵と偽物の絵を見分けることはできるのでしょうか。

A2. よく知りません。動物によって、得手不得手があると思います。少なくとも、人間には鳩のまねはできそうもない気がします。

 

Q3. 罰を与えると泣いたり、だだをこねるといった行動が強化されることが考えられると習いました。しかし、人間には個人差があると考えたため必ずしも泣いたりだだをこねたりしないのではないかと考えました。罰を与えても泣いたりだだをこねたりしないで素直に聞く場合もあるのでしょうか?

A3. 「罰を与えると・・・強化される」ではありません。罰ならば、オペラント水準以下に出現頻度は減るはずです。正確には、「罰を与えたときに自発した、別の行動が強化される」です。この「別の行動」が「泣く」「だだをこねる」なのですね。細かいようですが、表現を短絡させると間違って記憶してしまうことがあるので、理解できるまではできるだけ表現を省略しないことが肝心です。

自発する行動のオペラント水準は、行動によって、そして人によって異なりますから、「泣く」「だだをこねる」以外の行動が出現することはあります。これを「個人差がある」と表現されたのですね。「素直に聞く」とは、行動を自発しない、あるいは「何もしない」という行動を行なうことです。そういうこともあります。個人差がありますからね。

 

Q4. 『犬のキモチ』とかの本は「見本合わせ課題」や「遅延見合わせ課題」をもとにしているのですか?

A4. 『犬のキモチ』という本を知らないので、回答できないです。有名な本なのですね。知識を共有していないため、議論にならなくてすみません。

この質疑応答では、私と皆さんの間だけでなく、皆さん同士が読み合ってためになる機会を提供したいと考えています。よって、受講生のほとんどが知っていること以外は、説明をお願いします。「『犬のキモチ』という本にはこういうことが書いてあって・・・」としてくれると、皆さんに喜ばれると思います。

 

Q5. 私は小・中学校と場面緘黙症の友人がいました。その人は結局言葉を話すことはなかったのですが、「はい」と「いいえ」の選択肢をつくり、私の手を出してどちらかに反応したら笑いかけるようにしていました。その結果、少しずつコミュニケーションがとれるようになりました。これは、条件づけとして、まず見本刺激S+を、その後S+、S-の二つの比較刺激を提示し、反応がなされたら強化していく、という内容になりますか。

A5. あなたが挙げる事例が、見本合わせ課題と同じかという質問だと思います。まず、あなたの事例によくわからないところがあります。『「はい」と「いいえ」の選択肢をつくって、私の手を出した』とは、どういう事態なのでしょうか。手に書いて提示したのですか、「はい」と「いいえ」を。右手に「はい」、左手に「いいえ」みたいに。そういう意味に取って、以下続けます。

あなたの事例で、見本刺激は何になりますか。見本合わせ課題なら、その次にその見本刺激と違う刺激を二つ提示するのですが、これは何にあたりますか。「はい」と「いいえ」の選択肢とあるので、これが「違う二つの刺激」なのだとあなたは考えたのだと思えましたが、では見本刺激は何になりますか。

あなたの事例は、『「はい」と「いいえ」の選択肢』を弁別刺激として示し、「それに対する選択」という行動をとったことを、「笑み」によって強化する事例で、見本合わせ課題ではないと思います。どう違うのか、わかってもらえたでしょうか。

 

Q6. 発達には到達すべきゴールがあり、そこに近い人ほど望ましい発達を成し遂げた人でそうでない人は劣っている人と、ゴールから離れていく人は退歩している人となっていますが、それは人間の進化の過程でチンパンジーと人間に別れたというのと同じことですか?

A6. 発達とはゴールに向かう「進歩」であり、そこから離れて行くことは「退歩」である。すなわち発達の方向には、価値ある方向と価値のない方向がある。あなたが冒頭に示しているのは、授業でもやりましたが、進歩的発達観とでも呼ぶべきものですね。

この発達観を、あなたは「進化の過程でチンパンジーと人間に別れた」ことと同じであるかと尋ねていますが、これはヒトとチンパンジーの種の分化を、特定の価値ある方向(あるいは逆に、価値ない方向)への変化ととらえるか、単なる変化ととらえるかによります。

そもそもこの質問は、冒頭で、ある変化を進歩的発達観として提示しながら、後者については発達(進化)観ではなく、現象を提示し、両者を比較しようとしている点で、意味ある問いになっていません。知りたかったのは、何だったのでしょう。

推測するに、あなたは、ヒトはチンパンジーより優れていると思っている。その前提で尋ねているのではありませんか。そうなると、個体発生と系統発生という、発達のレベルは異なりますが、変化に価値ある方向と価値ない方向をつける点で、同じ進歩的発達観となります。

なお、発達のレベルとして、ジェームズ・ワーチ(James Wertsch)という人が、四つのレベルを区別しています。変化が生じる単位の違いによって、これら四つは区別されます。種の分化が生じる系統発生(種を単位として生じます)、人間の社会や文化のレベルで起きる変化(国家や民族を単位として生じます)、人間(動物)の一生である個体発生(個体を単位として生じます)、そして個人の認識や技能の変化である微視発生(個体が行なう個々の行動や認識を単位として生じます)、の四つです。参考までに示しておきます。

 

Q7. シェムとシェマでレパートリーによって理解することということになっていますが、子どもが鉛筆をかじることもシェムとシェマの1つなのでしょうか?僕にはそれが本能に思えるのですが…。

A7. 冒頭の文の意味がよく分からないのですが…..。「シェムとシェマでレパートリーによって理解する」ってどういう意味でしょうか。なおシェムについては、行為をレパートリーごとに構造化したもの」のような説明をしたおぼえはありますが、シェマについては、レパートリーと言わなかったと思います。対象(環境)についての知識とか概念とか言ったような気がします。

「鉛筆をかじる」のは、対象をシェマによって「鉛筆」と特定し、「かじる」というシェムを適用するということをしているのです。なお、これが本能的なことかどうかと、シェマやシェムの使用とは、同一次元で考えることではありません。生得的にある対象のシェマを持っているとか、生得的に○○というシェムを持っていると言っても構わないのですから。あなたは、シェマとシェムは後天的だと思ったのですね、多分。このへんは授業で明確に言わなかったのですが、人間は白紙で始まる訳ではないので、生得的なシェマやシェムがあると言っても構わないと思っています。ピアジェがそう言っているという確認はとっていませんが。前回の授業で紹介した本に書いてあることが、ピアジェの考えたことととって構わないので、その本に違うことが書いてあったら教えて下さい。

 

Q8. 森先生は、発達段階の捉え方は、段解説と連続説、どちらが優勢だと考えますか? そして、先生はどちらかと言えばどの立場ですか?

A8. 私の立場を知ると、どんな情報価値があるのでしょうか…..。誰が言っているかではなく、何を言っているかが大切です。そして、あなたが自身の経験と調査(勉強)によって確立した知識(ピアジェ流に言うと、シェマですね)からして、言われていることが妥当だと思えるのかを考えることが大切です。

ピアジェが行なった諸々の実験を見ると、段階説が妥当なように思います。

 

Q9. 先生は、人間は、幼児の頃に見えるものが全てで、見えないものは自分にとって関係ないと言っていましたが、人間以外の動物にも子どものころは見えるものが全てということがあるのでしょうか。

A9. 動物の幼少期における知覚世界に関する研究を知らないので、何とも言えません。見本合わせ課題を使って調べることになりそうですね。調べてみたら面白そう。

 

今日の一句

[その壱]  誤った   こうどうすれば  罰あたる

[コメント壱] その通りなのですが、この句は条件づけの理解にどう使えるのだろう? 誤った行動をしても、罰が来ないことが現実にあります。母国語の獲得で触れたかもしれないけど、文法的な間違った文を子供が発しても、罰せられるとは限りません。むしろ、報酬を与えています(「返答を返す」等をして)。ということは、現実を詠んだ句ではない。

では理論的なことを詠んだ句なのでしょうか。「罰あたる 行動こそは 誤りと言い」というように、「罰を受ける行動を「誤り」と定義しますよ、行動主義では」というならなんとなくわかりますが。

 

[その弐] オペラント 有効なのは 罰?強化?

[コメント弐] 「オペラント」は正確には「オペラント条件づけ」のことと、補って受け取って下さい。スキナーが投げかけている、罰の有効性を詠んでくれたものですね。

 

[その参] 大発見 ハトでもできる 見本合わせ

[コメント参] 見本合わせ課題ができることが、そんなに珍しいだろうか、と思いました。いや、まあ何に驚くかは、当人次第なのですがね。

むしろあなたは、見本合わせ課題を使った研究によって発見されたことに驚いているのではないかと思いました。鳩が絵画の作風や、真贋を見分けられるとは驚きですよね。ん? でもそうすると「ハトでもできる」ではなく「ハトにはできる」となるはずか。「大発見 見本合わせは ハトさんが 真贋見抜く 目を持つという」(見本合わせ課題でわかったことなんだけど、鳩は絵画の真贋を識別できるんだって。大発見だよね)。こんなんでどうですか。


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