質問にお答えします-第3回-

2014年10月22日 | By mori | Filed in: 心理学概説(2014年度).

(全文を読む場合はタイトルをクリック) 前回の授業内容に対する質問への回答です。

Q1. ナラティヴセラピーで、精神的に問題を抱えていて「悪い物語」を「よい物語」に改作していくために自分の今までの出来事の中に紛れている「よいこと」を発見することがなかなかできなくて逆にどんどん悪い方に考えて言ってしまう人がいたとしたらどのような方法をとるとその人の精神的な問題を取り除くヒントとなるのですか?

A1. 作用に言うは易し、であります。悪い方に考えてしまうのが、精神的問題を抱えた人の傾向でもありますからね。当人が、そちらへ行かないようにお膳立てをするのは、それはそれは難しいと思います。ナラティブセラピーが具体的にどのように行なわれているかは、「ナラティヴ・セラピー: 社会構成主義の実践」(金剛出版)などを参照してみて下さい。

それと、質問文ですが、一文が長すぎです。学術的なコミュニケーションでは、長く続ける文は誤解を避けるために、あまり使用されません。質問文も工夫してみて下さい。相手にもわかりやすいし、思考が整理されていいですよ。

 

Q2. 「悪い物語」と「良い物語」へと…とありますが、これはネガティブな思考とポジティブな思考に変換できると考えて良いのでしょうか。

私は今年教育実習を行ったので、ここから例えさせていただきます。子どもを相手に授業をした時に全然上手く授業ができるようにならないから、自分は教師に向いてないと思うのが「悪い物語」でも、良いところもあったし実習の段階で完璧にできる人なんていないんだから、これから努力して行こうと思うのが「良い物語」というような認識で当たっていますでしょうか。私は「物語」と言うよりかは「思考」なのではないかと思ってます。

しかし、講義の題名は「人生の物語」となっているので、あえて「物語」という表現をしているのでしょうか。また、心理学の中では「物語」と「思考」は別の物とされているのでしょうか。

A2. 「悪い物語」と「良い物語」を、ネガティブな思考とポジティブな思考に置き換えることはできますが、「物語」という概念を導入した利点が消えてしまいます。

「教師に向いてないと思う」こと自体が物語なのではなく、「教師に向いてないと思う」ことをゴールとするような物語を作ってしまうので、そういうネガティブな思考になると考えるのです。よって、そのネガティブな想いを変えるには物語を変えればよいという方策が立つ訳です。「これから努力して行こうと思う」ことは物語ではありません。その人の考えを切り出しただけです。どうしてそう思えるのかを説明するために、「物語」概念が導入されます。

なぜ「物語」概念が導入されたのか、そうすることでどういう利点があるのかを読み取ってもらうのが今回の授業の目的です。「思考」は概念としては広すぎて、汎用性がある反面、役に立たないことが多いと思います。「物語」概念を導入するから、ネガティブな思考にある人をポジティブにどう変えたらよいか、という方策が立つのですよね。

もう一度「物語」とは何だったかを振り返っておいて下さい。

 

Q3. 心理学概説レジュメの2ページ目にある、想起と体験と物語について質問です。

言葉と体験とは常にズレを孕んでいて、失われるものもあると習いました。では、逆はあるのでしょうか。言葉と体験がズレることにより、得るものはあるのでしょうか。

A3. 質問の意図が聞きたいところです。どうしてこういう質問をしたのか、と。それが書かれていれば、場合によってですが、よくここまで考えたなぁと感心させられると問いになったからです。単に「失うものがあるなら得るものもあるはずだ」と考えたのなら、もう少し考えた方が、となりますが。

結論から言うとあります。言葉にするとは、体験の一部を取り出し体験でない言葉に置き換えてしまいことですが、こういうことで得られるものは、体験の明確化や記憶に残りやすいということです。たとえば、日記をつけることは、体験を言葉で置き換えることですが、こうすることであなたは何を得ていますか。逆に、日記につけないと、どういう損失があるでしょうか。

 

Q4. 第3回の講義で、象徴的体験と言う言葉が出てきましたが、象徴的体験とは「暗黙の了解」のようなものなんでしょうか? また、象徴的体験はオペラント行動と関係する所があるのでしょうか?(良い経験をした時の元のプロセスを強化させるという点で)

A4. 「象徴的体験」がなぜ「暗黙の了解」という意味に取られるのかよくわかりませんが、そういう意味ではありません。「象徴的」は「物理的」との対で考えて下さい。もっと簡単にいうと、「意味的」ということです。このように考えると、オペラント行動との関係はどうなるでしょうか。あなたは、「良い経験をした時の元のプロセスを強化させるという点」で、両者が共通していると考えているように見えますが、どうしてそうなるのでしょうか。関連づけのプロセスが、私には見えてきません。

相当すごいことを考えているか、関連づけのプロセスが飛んでいるのか、どちらかの可能性がありますが、いずれにせよ回答することが難しい質問です。私はそれほど理解力があるほうではないので、あなたの思考のプロセスを順々に示してくれるととても助かります。よい質問も、相手にわからないともったいないですよ。

 

Q5. ナラティブセラピーのように「悪い物語」を「良い物語」へと変わるように導く方法はありますが、逆に「良い物語」が「悪い物語」に変わることはあるのでしょうか。

A5. あると思います。

ところで、「はい」か「いいえ」で回答できてしまう質問は避けた方がいいですよ。するにしても、問いの意図が分かるようにした方が。あなたはどうして、「良い物語」が「悪い物語」に変わることがあるのかと考えたのですか。そういう実例があったのですか。そこまで書いてくれると、話が弾みます。逆に、「はい」か「いいえ」で回答可能な問いは、意図が判然としないので、何を答えてよいかわかりません。「はい」もしくは「いいえ」という答えがほしい訳ではないと思うのですが。

 

今日の一句

[その壱]

物語 自分次第で 変えられる

[コメント壱]

物語の一特性ではありますが、それ以上を詠んだものではない。もう少し色々と盛り込んでみて下さい。たとえば「物語 自分次第で 変えられる それを利用し ナラティブセラピー」のようにすると、ナラティブセラピーが物語の可変性を利用した心理療法だというところまで入りますよ。

 

[その弐]

借り物の 物語をば 得ようとも 変わるか否かは 自分次第

(人が考案した物語をもらっても、そこから変わっていくか、変わらないままになるかは、結局自分次第なのではないだろうか)

[コメント弐]

「自分次第」とは、曖昧な物言いだと思います。具体的にどうすれば、借り物が機能するのかが詠まれていないからです。そもそも、そこまで授業で言ってましたっけ? 自分次第でどうにかなるとか。基本的に、借り物は駄目で、自発しないと、とは言った記憶があります。であるならば、自分次第でどうにかなるとはあなたが考えたことになりますが、本当にどうにかなる訳?

 

[その参]

テーマ 「人生の物語化」

過去を想起して、肯定し、これから先を明るくする物語を作る。よい物語のドミナントストーリー。

これからを 決めるのは 自分自身 過去を見つめて 未来をつくる

[コメント参]

ん? 語調がおかしくないか?

この句だと、よい物語も悪い物語も該当してしまう気がします。「人生の 明暗分ける 物語 良きものに変え 未来照らさん」とかどう?


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