質問にお答えします-第5回-

2015年6月3日 | By mori | Filed in: 心理学(2015年度).

(全文を読む場合はタイトルをクリック) 前回の授業内容に対する質問への回答です。

Q1. 今日の講義の、目撃者証言の話についてです。

「あなたが見たのは緑色の車でしたか?」という聞き方は適さないということでしたが、もしそのように聞いてしまったとします。質問したひとが自分の質問の仕方が悪かったと気づき、訂正したとしても、もう証言者の記憶は歪んでしまったので、正しい証言を引き出すことは難しいと考えたほうがいいのでしょうか?それとも何か一言加えれば、適さない質問をチャラにできるようなことが出来るのでしょうか?

A1. 余計な情報を与えたからと言って、必ず歪む訳ではありません。実験結果をよく見るとわかると思いますが、間違った情報を与えた条件でも正しく思い出せた人もいましたね。確率的に、より間違いを引き起こすことが危惧される、というのが実際です。

歪んでしまった記憶を復元できるかどうかの研究を見たことがありません。体験後に余計な情報にさらされないという保証はありませんから、本当はこちらが必要なのですがね。

 

Q2. 講義で聞いたイングラム事件では、誤導捜査による記憶の植え付けが行われてたことを学び、高校時代の友人を思い出しました。彼女は、虐待されていたという虚言癖があったのですが、記憶が植えつけられていたのでしょうか。嘘をついている人と記憶が植えつけられている人を見分けることはできるのですか?

A2. 「虚言癖」というのは、「人より多く嘘をつく傾向がある」ということです。簡単に言うと、嘘つきということです。記憶が植え付けられた人は、嘘をついているわけではないので、虚言癖ではありません。「本当のことを知っているにもかかわらず、意図的にそれとは違うことを言う」のが嘘です。言葉は、定義を明確に使うことが大切です。特に、学問的な議論の場では。彼女が「嘘つき」でなければ、彼女の語っていたことは体験ではないことになります。ではその原因が何かですが、植え付けられた可能性もありますし、自分でそう思い込んでいるのかもしれないし、伝聞が体験に化けているのかもしれない。

事実との識別ではなく、嘘つきと植え付けられた人の差異ですか。矛盾があった場合、嘘をついている人は繕おうとするでしょうね。一方、植え付けられた人は「だってそうだもん」と言うのではないでしょうか。

 

Q3. 私は子どもの頃の記憶が一つあります。その記憶は『祖父に抱っこされてる』夢です。

親達が子どもの頃の話はします。しかし、このことは誰にも聞いたことがないです。

これはただの夢ということで良いのでしょうか?

A3. ただの夢かも知れません。想像の一種ということですね。あるいは、誰にも聞いていないと思っているだけで、実は聞いていて、それが夢の中で構成されたのかもしれない。

『祖父に抱っこされてる』夢だけでは情報に乏しいので、何とも言えません。内容が詳らかにされないと。

 

今日の一句

[その壱]

元からか 伝聞なのか この思い OQでみえる 本当の記憶

説明(自分の記憶であるのか、人からCQにより植え付けられた記憶なのか、そうならないためにもOQで質問をすることによって新たな記憶を作らせるのではなく、相手の本当の記憶を聞くことができる。)

[評壱]

OQは万能というわけではありませんが、CQに比べるとずっとましです。ところで、上の句で語られた「記憶」の起源を問題にしていながら、下の句で発問方法の留意を述べているという構造は、ねじれていると思います。二つのことを詠み込もうとして、繋がらなくなっているからです。主題をどちらかにした方が、統一性が出たと思います。


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