杉山吉弘:教員紹介

専門は哲学です。特に現代フランス哲学。私にとっての哲学とは、一つの学問というよりは、生と死とか友愛、性、病気、共生、倫理といった人生にとってとても大切な具体的な問題を問題として胸の中に深く抱き続け、考え続けることです。
ところではるか遠い昔、私の大学生時代は読書とサッカー部の活動で眠る時間も惜しむ毎日でした、と一応言っておきましょう。大学1年生ではりきっていたときの最初の夏休みに、フランスの詩を原文で読みたくて、ほんの少し文法だけフランス語を自分で勉強しました。読書による思索癖が昂じて、理系の学部に入ってから文学部の哲学科に転部したとき、思い切ってフランス語テキストを用いていたゼミに出席したのが、その後フランス哲学を専門の仕事にすることになる最初のきっかけになりました。もし1年生の夏にフランス語を上っ面だけでも齧っていなかったら、今の私はいません。思えば人生は不思議な偶然の出合いで織り合わされ、目的や利益を計算して成り立つわけではありません。その時そのときに何かに打ち込むことが、振り返れば一つの道になっているかのようです。
主な講義は「フランス語」と「人間科学と倫理」で、「専門ゼミナール」と「卒論指導」も担当しています。私の最近の関心は、大きく言うと、人間にとっての自然と広い意味での技術(人間の技、工夫)との関係、もう少し詳しく言うと、自然のなかで生きる人間のいのちの在り方と技術、倫理との関係を考えることです。
「人間科学と倫理」の講義では、生命科学や人間諸科学における技術と倫理の問題を、ギリシャ神話のエディプスやプロメテウス、そしてフランケンシュタインなどを題材にして考察しています。生命倫理、エイズ問題、セクシュアリティ、異常と正常なども私にとって大切なテーマです。要するに、多様な技術によって創造された人間世界のなかで各人が自分のいのちをどのように受けとめるかが問題なのですが、自明な解答などありません。
3年生の「専門ゼミナール」も〈生命—技術—倫理〉の人間的関係を考えることが主なテーマです。ゼミでは学生同士の対話を通してのコミュニケーション能力や問題設定能力の向上を重視して、私自身はなるべくおしゃべりしないように努めています。就職の際にもっとも求められるのがコミュニケーション能力であることを知っていますか。毎年夏休みには合宿を行ないますが、私自身が愉しみにしています。ゼミの学生とは4年生になっても卒論指導で付き合いが続きます。
最後に一言。学ぶことが何の役に立つかは学ぶ最初からはっきりとは分かりません。その後の生き方が、学んだことの意義を確定するのだと思います。ですから私にとって学生との出会いとは、一人ひとりの学生の豊かな未来への備えを支援することなのです