人文学部創立30周年記念講演・シンポジウム

2008年11月8日、本学人文学部創立30周年を記念する行事が開催されました。前日から大荒れの天気で当日も心配されましたが、午前中の講演会には250人、午後のシンポジウムには150人の参加者があり、まずまずの状況でした。当日は、午前10時半から奥谷浩一人文学部長の開会挨拶があり、引き続いて東京農業大学教授(元東大大学院教授)の石弘之先生による「地球と人類の未来」と題する記念講演が行われました。

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石先生は、現在人類の未来を脅かしている問題のうち、新型インフルエンザウィルスの脅威と食料危機のふたつの問題を取り上げてお話されました。石先生は、まず最初の問題にかんして、最近は特にトリインフルエンザ、つまり、本来鳥にしか感染しないウィルスが豚のなかで組み替えられて人に感染力をもつようになった恐ろしいウィルスがこれから世界的に猛威をふるう可能性があり、その背景には鳥や豚などの畜産の拡大と地球環境の悪化があることを指摘されました。続いて、我が国が自国の農業をなおざりにし、食料の多くを外国からの輸入に頼っているために、地球温暖化や石油高騰などの影響をまともに受けやすく、また地球温暖化、世界人口爆発などによって今後10年以内に世界的な食糧危機がくる可能性があり、その備えをすることの必要性を力説されました。
午後のシンポジウムは、「家族・学校・地域の再生を考える」を共通テーマとして行われ、まず三人のパネラーからそれぞれ報告がありました。
最初に北翔大学大学院教授の村瀬嘉代子先生が「自らも生き、周囲をも生かす」と題して、現在は生産効率の重視や合理化によって家庭や地域社会のいろいろな場面で人間関係が希薄になったり崩壊したりする現象が見られるが、こういう問題の解決にあたっては、人間を二人称や三人称で見るのではなく、一人称、つまり相手と自分とを同化して、相手の立場や気持ちを自分に置き換えて考える視点が重要だとお話されました。
続いて、関西学院大学教授の才村純先生から、「子ども虐待防止の視点から」と題する報告があり、最近は子ども虐待の相談件数が増加しているが、その背景には核家族化の進行によって子育て経験のない親が増えていること、家庭が変貌していることがあり、これに対して子育てを社会全体がバックアップしていくことが必要だと強調されました。
最後に、札幌学院大学教授の安岡譽先生が「家族における人間の再生」と題して、精神科医の立場から報告されました。本来家庭は、人間が自我を形成するとともに愛憎のなかでさまざまな人間関係を学んでいく重要な場だが、最近は子どもの心のなかを見ようとしない親や子不幸な親がいたり、子どもに無意識のうちに自分の考えを押し付ける親が増えて、家族が解体現象を起こしているが、こういう問題に対処するには、心の温かみをもつこと、人間が矛盾する存在であることに気づくこと、そしてこうした気づきを誰もが共有し、人間の矛盾を暖かい眼差しで見守ることが必要だと話されました。

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講演とシンポジウムの終了後のアンケートでは、いいお話で感銘を受けた、いろいろと考えさせられた、視野が広がった、大変参考になったなどの感想が寄せられ、ふたつともきわめて好評をもって受け止められていることがわかりました。したがって、今回の催しは、人文学部創立30周年にふさわしい内容であったといって差し支えないと思います。