1994・3・31 No.2


「子どもの権利条約」の時代
  鈴木秀一 Shuichi Suzuki

 1989年11月に国連で採択された「子どもの権利条約」が漸く国会の批准を経て昨年五月に公布され発効した。この条約の第3条第1項は、あらゆる機関の行う「子どもにかかわるすべての活動において・子どもの最善の利益が shall be a primary consideration」となっていて、英文の部分は政府訳では「主として考慮されるものとする」となっている。これに対して国際教育法研究会の訳は「第1次的に考慮される」である。愛知県立大の川口彰義氏、大阪経法大の丹羽徹氏は「明らかに最も重要な考慮事項という意味であり、第1次的と訳出されるべき」と指摘し、また、「子どもにかかわるすべての活動」というところはフランス語正文では decisions となっていて、したがって「あらゆる決定を行う上で、子どもの最善の利益が第1次的に考慮されなければならない」という意味が明瞭に表れるように訳すべきだと指摘している―雑誌「教育」1994.9、「子どもの権利条約と訳語問題」)。
 じつは、私は志を同じくする人たちと、いま、私立の「自由が丘中学・高校をつくる」という運動をやっていて、この新しい学園の「理念」を述べる文章の第1項に「子どもにかかわるすべての活動は、子どもにとって最善であるように考慮される」という文を掲げた。これはいうまでもなく「子どもの権利条約」の上記の条文に感銘し、この条約の精神をすべての教育の根幹としたいと考えたからであった。
 政府・文部省は国内法の改正も不必要であり、校則制定も国歌・国旗義務化も条約に抵触しないという立場であって、訳語問題も含めて、この条約の現実化、この条約の精神の普及に消極的であるように思われる。また、第12条から16条にいたる「自由権」規定を現実の学校教育で生かす道は、なお険しいというのがおおかたの識者の意見でもある。だが、乗り越えようという努力が進めば進むほど、困難も大きく見えてくるものである。その困難を子細に調べ、ひとつひとつ解決を求めることのなかに人間の知恵の進歩があるのだ。人間はまだまだ賢くなるだろうし、また、ならねばならぬ。


 人文学部の第15期生172人が晴れて卒業 
 3月17日に学位記授与式 
 1994年度の卒業生に学位記を授与する式典(卒業式)が、3月17日北海道厚生年金会館で挙行され、人文学部の172人(人間科学科28人、英語英米文学科54人)に酒井人文学部長より学位記(人文学都は人文学士)が授与された。人文学部はこの15期生を含めて、2,837人(人間科学科1,986人、英語英米文学科851人)の卒業生を送り出したことになる。
 本年度は新設の経済学部、社会情報学部の第1回卒業生も加わり全学では、1,145人が卒業した。ちなみに人文学部の卒業率は、4年次生のみでは人間科学科90.7%、英語英米文学科は92.7%を示した。
 また、4年間で卒業したものの比率は、人間科学科で85.7%、英語英米文学科で81.7%で、残りはすでに退学したか留年やむなしとなっている。いずれの場合も、人間科学科で過去最高、英語英米文学科は昨年に引き続いて高い比率を示し、学生諸君の履修状況が大幅に改善、上昇していることを示している。

 
人文学部付属
「心理臨床センター」がオープン
 

 このたび人文学部に心理臨床センターを設置することが承認され、いよいよ1995年4月より活動を開始する運びとなった。心理臨床センターは、当学部の心理学関係教員の心理臨床に関する研究業績を積極的に活かし、教育、研究活動を一層発展させていく拠点となることを目的としている。
 このセンターは3つの部門から構成される。1つは「教育部門」で、ここでは将来心理臨床家を目指す本学の在学生、研究生などに対して実習を中心とした教育を行う。2つ目は「研修部門」で、その主な活動としては学外の心理臨床家等を対象にした研修・教育の実施、および臨床心理士資格取得を目指す本学卒業生に対するスーパービジョン(実地指導)を含めたアフター・ケアを行う。3つ目は「相談部門」である。この部門では、実地の臨床に根ざした心理臨床研究を実現するために、学外来談者の心理・教育的な問題に対する相談活動を行う。なお、相談部門は一定の条件整備ができた段階で開設し、当分の間は教育部門、研修都門の活動のみを行う。
 1995年度のセンターの活動としては、心理臨床関係の研究会活動を行う他、心理臨床に関する公開講座の開催、心理臨床センター年報の発刊などを計画している。
 最近厚生省による心理職の国家資格化の論議が急展開し、札幌圏の他大学でも臨床心理学系の教育内容の充実を急ぐ動きが見られる。本学においても、センター発足を契機に心理臨床研究の特色をより明確に学外にアピールできると期待している。

(清水信介)

本学初の「大学白書」を発刊
―人文学部篇も別冊で―

 大学の開放化の一環として本学でも1993年7月に自己点検評価のための委員会が組織された。学部を中心に学内の諸機関が実施委員会を構成し、本学の研究・教育・運営などの「現状と課題」について点検と検討をおこなってきた。これは、単に本学の実態を把握するというだけでなく、今後の大学改革の課題と方向を明らかにすることを目標にしている。これら点検結果を集大成し、1995年2月に自己点検・評価報告書『札幌学院大学の現状と課題』として発刊された。
 人文学都では、この中から学部関係部分を抜き出して、若干の資料を付加して「人文学部篇」を発刊することにした。学部の実像を理解するための資料として活用されることが期待されている。


「生と死を考える懇談会」発足

 人文学部は2年後に開設20周年を迎えるが、学部内であらたに共同研究を進めようという機運が高まり、昨年7月世話人が集まって協議した結果、「生と死を考える懇談会」が発足した。共同研究の共通テーマは、人文学部開設の当初理念である人間現象の多面性を多角的視点で捉える総合的人間研究と人間理解という趣旨に副うものとして、近年社会的関心が高まっている「生と死」に関わる諸問題とすることにした。
 すでに成熟社会に達しているわが国では、生と性、結婚等に関わる社会的諸問題が多発していると共に、高齢化社会に固有な老いと病、死に関わる人間的諸問題が急速に生起するに至った。これらの諸問題はいずれも、激動する社会の中で、時代の趨勢と共に生じてきた根本的問題であり、特定の学問的成果のみでは問題の認識や理解のみならず、問題解決の方向性を呈示することは不可能である。まさに諸学問間の協力と共同による総合的な人間研究が俟たれる所以である。
 「生と死を考える懇談会」では、差し当たり他学部にも呼びかけてささやかな共同研究として出発し、医療、福祉、保健、心理、法律、教育、哲学、倫理、宗教などの諸分野に関心を持つ教職員や学生に参加していただき、「生と死」に関わる広範な問題について、共に研究し、共に学び合うことを目指している。この懇談会を通じて、全国および道内の他の関連組織との連携も考慮している。
 昨年7月以降、懇談会は2回開催され、第1回は7月27日法学部の渡部保夫教員から「生、死、性、福祉をめぐる新しい法律問題」、第2回は12月26日人文学部の宮内陽子教員から「脳死について」の報告があり、学生を含む参加者による質疑討論が行われた。
 尚、1995年度の土曜公開講座の総合講義「人間・その生と死」は、この「懇談会」の話し合いの中から実現したものである。

(生田邦夫)

本学学生にも阪神大震災の被災およぶ

 1月17日未明阪神地区を中心に起きた大震災は戦後最大の災害となり、多数の死傷者と被災者をもたらした。今なお復旧もままならぬ状況と聞くが、被災された方々に対して衷心よりお見舞い申し上げると同時に、一日も早い復旧を願わずにはいられない。
 本学にも阪神地区から多数の学生がきているが、在学生の家族で被災された方々もすくなくない。いまのところ家族の人身に及ぶ被害はないとのことで、「不幸中の幸い」であった。これまでに13人の学生から、自宅が全壊または半壊したと届けられている。
 大学ではまず被災学生への救援策を検討する一方、教職員による義援金を集めて日赤を通じて送った他、卒業祝賀会でも実行委員会の呼び掛けで募金活動をおこなった。
 また本学からは人間科学科の藤井望(4年・清水ゼミ)、谷口恵美子(3年・布施ゼミ)、木戸康博(3年・松本ゼミ)、川村省吾(3年・杉山ゼミ)、山村竜彦(1年・津田ゼミ)の5人と商学部から1人の6人が、それぞれのツテをたよって被災地の救援活動にボランティアで参加していることが報告されている。戻って来た一人からは「この貴重な体験を通じて実に多くの事を学んで頭が一杯になった。初めて本を読みたいという気になった」と感動を込めた感想がよせられている。


 人間科学科の卒業論文発表会 
―多様にしてユニークなテーマの数々―
 卒業論文が必修となっている人間科学科では今年も2月2日〜3日にわたってコース別に発表会が行われた。報告時間10分、質疑五分の持ち時間の中で熱のこもった発表がなされ、しばしば教員学生の質疑に時間オーバーも。今年の卒論の講評を各コースの教務委員にお願いしてみた。
 社会生活と人間コース 

 今年の卒論発表者は37名と例年より少ないが、2日間にわたる報告会には常時4〜50人の出席者がみられ、例年の如く熱のこもった発表会であった。
 社会生活コースの卒業論文の特徴は、そのテーマの多様性にある。今年度の発表会で見てみると、自己主張が鮮明であった論文に、「均質社会・日本の限界」(上田幸)と「商業ジャーナリズム ―中立性論をめぐって―」(紺井暢史)があった。卒論を通して自己探求を行ったものとして、「冬のワルツ」(吉村光史)、「メディアと人間、おたく論の考察」(佐藤征洋)がある。女子学生の手になる、「結婚と家族―家事労働を中心に―」(阿相友美)や「女性の社会的地位の変容」(木村知美)などの論文も、ある意味で、女性としての自己確認の論文といえる。さらに、「発祥の地・芽室町におけるゲート・ボールの発展」(川西隆裕)や「苫小牧におけるスピードスケート考察」(宮崎宏美)などは、郷土愛あふれた論文である。もちろん、ゼミの成果を発展させたテーマが多かったことはいうまでもない。船津ゼミの「明治20年代における江差商人の近代企業に関する一考察」(従二谷優)、高岡ゼミの「ゴルバチョフ時代の経済政策」(山村晃)、内田ゼミの「大衆消費社会の意識変容からみるゴミ問題」(神内忠幸)、布施ゼミの「高齢者の介護―スウェーデンと日本を中心に―」(水田典子)、酒井ゼミの「戦後日本人論の変遷」(稲田久美子)などがそれである。この点では、松本ゼミの四人(篠崎大・工藤真由美・根本市子・久保美由紀)が、共同で発表資料を作成し、あたかも四人の共同研究であるかのようなパフォーマンスは、印象深く残った。
 この多様性をどのように評価するか色々な意見があろう。私見では、自己の選択したテーマについて、例えば、章や節の有機的な体系化が求められるくらいの長さで、論理一貫した自説の展開が要求される卒論こそ、単なるバラバラな知識の集積をこえた大学教育の卒業生に相応しい力量表現の機会と考えている。この多様性への挑戦には大いに歓迎したい。

(内田司)

 
 
 人聞の形成と発達コース 

 今年度の人間の形成と発達コース卒論登録者61名中59名が提出し全員が合格した。対象者が多いため、発表は3つのグループにわけて2月2日、3日の2日間で行われた。以下はその概要である。
 各グループとも30名前後の参加者があった。とりわけ3年生の参加が目立ち、次年度の卒論執筆に対する意欲が窺えた。卒論テーマは広範囲にわたり、各ゼミの特徴を概ね反映しているように思われた。心理臨床のゼミでは「自己開示に及ぼす性役割の影響」(山沢美礼)、「孤独感に関する一研究」(金沢紀子)や「重症心身障害児の反応表出に関する心理臨床的研究」(岡田孝世)、「慢性腎不全患者の心理的変容過程〜悲哀のの仕事と透析受容」(佐藤恵子)など事例・調査をもとにした論文が目立った。病跡学中心のゼミでは「宮沢賢治と女性」(津留靖子)、「シャガールの病跡学的研究」(山口陽子)、生体情報をメインにすえたゼミでは「呼吸法調整法における心身の変化」(鈴木裕)、「昇圧エピソードの解析」(柴崎範介)、知覚および認知発達を中心としたゼミでは「子どもの物語理解過程について」(大川裕美子)、「文章理解に関する一考察」(滝村美香子)、「子どもの道徳性の理解」(上原美香)、「学習障害−特に読字障害について」(渡辺立子)、教育学中心のゼミでは「養護施設における学力問題」(小倉洋)、「方言教育の必要性」(久米川雅幸)、そしてマスコミ論中心のゼミでは「現代の妖怪」(平田優希子)、「エイズ・キャンペーンに何を求めるべきか」(海津めぐみ)などのテーマが取り上げられた。この幅広いテーマ選択が本コースの内容をよく反映しているように思われた。

(小山充道)

 
 
 思想・文化と人間コース 

 今年度の卒論発表者は例年に比べて少なく、25名であった。全体としては原稿用紙100枚を越える力作も多く、内容的には充実していた。文化系では、奥田教員指導の学生の多くはアイヌに関する諸々の問題を、鶴丸教員指導の学生の多くは土器についての問題をテーマにしている。思想系の学生たちのとりあげているテーマの特色は、各人の体験と関心にもとづくものが多く、その点今年は特に鮮明であった。たとえば、サルトルを論じた刀禰由美子さんの論文「サルトルの実存主義に関する一考察」は、サルトルの自由と責任の哲学を彼女自身の体験から自分の責任において論じた、小笠原智美さんの特異な「嗜癖」論は、登校拒否の問題を含む現代の精神医学的諸問題を自分自身の自己確証と蘇生への問いとして論じたものであった。卒論を書くことが同時に自分を見つめ直すことでもあり、今後社会に出ていくための跳躍台にもなっているが、この二人はその模範的な実例といえる。その他、哲学的人間学(中村英樹)、「史的イエス」の現在的論争(田村千尋)、ニーチェ論(一色亜矢子)を論じたものは力のこもったすぐれた卒論であった。
 卒論発表会では学生が緊張していることも見てわかるが、特に今年は自信に裏付けされたフレッシュな発表が多く、学生たちの今後の活躍が期待できるものであった。フレッシュであること、それこそ人間の生の最も貴重な在り方なのだから、卒業後も発表会での自分の姿を忘れずにいてもらいたい。

(杉山吉弘)

人文学部『卒業報告集』
第15集を発刊

 今年も卒業論文の要旨を収録した卒業報告集が発刊された。今年で15集を数えるこの報告集には人間科学科123名、英語英米文学科6名の卒業論文の抄録と英語英米文学科のゼミ報告、36名分が収録されている。
 報告集の中には人文学部の特性を示すかのように様々なテーマが取り上げられており、学生の関心の広がりと多様さがあらわれている。


第4回学芸員課程実習展示
「モンゴル〜大草原の人々とくらし〜」開催

 1994年11月8日から12月6日まで学芸員課程博物館実習の一環として学内の展示室を利用して実習展示が行われた。私達学生が学芸員に成りきって、企画し、運営するのである。テーマは昨年に引き続いて「モンゴル〜大草原の人々とくらし〜」であるが、指導教員の鶴丸先生が昨年あらたにモンゴル調査で収集されたものや、写真を加えて今回は自然・政治・経済・文化など多くの視点から眺められるように企画した。
 準備段階の約1ヶ月間は、連日夜10時まで作業が続けられ、開幕中は講義の合間を利用して実習生が交替で解説要員として詰め、開室の準備や入室者への応対を行った。新聞でも取り上げられ、テレビで生中継もされて沢山の学外の見学者を迎えることもできた。激励やお褒めの手紙を頂戴することもあった。
 この展示を通して実習生は実にたくさんのことを学んだ。同時に、学芸員の仕事の大変さや楽しみをさらに感じることができた。

(人間科学科3年中川有希)

94年度社会調査実習
「高齢者の社会関係」をテーマに

 社会調査実習という科目は不思議な科目である。フィールドに入るまでの準備期間は、学生たちの表現を借りると「ダルイ」。しかし、ひとたびフィールドに入り、3泊か4泊の合宿による現地調査を終える頃には「楽しかった。また参加したい。来年も来ていいですか。」と。
 毎年このくりかえしである。今年は人間科学科の3年生20人が参加した。1994年度の実習は空知郡北村と札幌市白石区を対象に「高齢者の社会関係」の調査に取り組んだ。このテーマは3年がかりで取り組んでいる。93年度は歌志内市に出かけ、95年度は漁村と札幌市内の追加調査を企画中。ひとくちに高齢者の社会関係といっても、日々の生活でとり結ぶ社会関係のネットワークは実に多様である。豊かな社会関係を結んで暮らしているものもいれば、「今日も誰にも会わなかった」と孤独を胸に秘めるものもいる。傍目には豊かな社会関係でも本人は不幸をかこう例もあれば、一見、孤独地獄にみえても日々を心楽しく過ごしている場合もある。
 学生たちが、丁度孫の世代にあたることもあり、大方の調査対象者は親切に答えて下さる。北村では、泥炭地を耕して3代、全道でも高い反収を誇る稲作の基盤を築いてきた農民から、貴重な体験の数々を聴かせていただいた。また農村の高齢者と都市部の高齢者の社会関係を比較することで、学生たちの分析の視角に奥行きがでたといえる。
 この成果の一端は社会調査室研究基礎資料報告書第16集『高齢者の社会関係に関する実証的研究』としてまとめられる予定である。

(布施晶子)

 ブロードウェイの女優による上演会 

 英語英米文学科では、12月1日、ブロードウェイの女優、ヴァイニー・バローズ氏による上演会(一人芝居「シスター!シスター」)を催した。アフロ・アメリカンのアイデンティティに、さらに、重くのしかかる性差の問題が、氏の芸術活動の原点である。氏の役者魂は、集まった三〇〇人余の学生達の心を動かした。「バローズ氏の女性に対する心の葛藤が情熱的に表現されており、見入ってしまいました。世界にはまだ僕たちの知らないような女性差別、人権問題があることを知り、これらの問題をアメリカを中心に、世界各国に訴えかけている彼女の役割は大変大きいものだと思いました」(英語英米文学科 宗形直樹)。「英語での上演ということで、つい言語の聞き分けばかり注意が向かってしまいましたが、豊かな演技力による演じ分けは、言葉の中にも表れていました。いわゆる方言や、年代による喋り方もきちんとされていて、それでいながら私達にも聞きとりやすく話されていました」(英語英米文学科 村西麗)。「改めて言葉を学ぶということは、文化を学ぶということなのだということを実感しました。芝居の一つひとつは、充分にその言葉を聴き取ることはできませんでした。しかし彼女が何を訴えたいのかはその表情や動作、強調される単語でおおよそ受け止めることができました」(人間科学科 藤長すが子)。さらに、商学部の小野朋也君は、質疑応答で「日本とアメリカがこれから互いに分かりあえるためにはどうしたらいいと思いますか」という質間に対して「互いに異なる性質を尊重しあい、視野を広げ、心を豊かにするように努めることで、理解しあえるのではないか」という氏のコメントに強く印象づけられたという。

(川瀬裕子)

教養ゼミナール合同講演会
 ―日本のエイズ問題― 

 人間科学科の1年生は教養ゼミが必修である。そのゼミ活動の一環として11月に講演会を行った。講演テーマは、昨年の夏横浜で国際エイズ会議が開催されていたことから、日本のエイズ問題をとりあげた。それは医療、人権と法、性、等々の複合的な契機を含むまさに人間科学的な問題である。今回は特にエイズ薬害訴訟の現実を知ることを目的にした。講師には、東京HIV訴訟弁護団事務局長の鈴木利広氏、北海道血友病友の会の会長青木一良氏、および同事務局長の佐々木秀利氏をお呼びした。司会等の進行は杉山が担当した。
 本薬害訴訟は、血友病の患者とその遺族が、国と製薬会社を相手にその責任を問う裁判で、現在進行中である。世界に類を見ない日本に固有なエイズ問題は、アメリカの汚染された血液を原料とする血液製剤によって生じたHIV感染者・エイズ発症者が、総感染者の圧倒的多数を占めていることにある。そのこと抜きに日本のエイズ問題は語れない。今世紀最大の薬害悲劇、いな国と製薬会社の薬害「犯罪」はいかに生じたのか、原告はなぜ匿名で番号によって意志表示しなければならないのか、数日で1人が死去していくという苛酷な試練の中で被害者たちはいかにその問題に立ち向かっているか等、3人の講師の話を通じて学生は痛烈に理解できたように思われる。アンケートには、「全身が震えた」と書いた学生をはじめ、憤りを表現するものも多く、再度このテーマをとりあげるように要望するものも数多くあった。人間科学科としては今後もこのような企画を継続していきたいと考えている。

(杉山吉弘)

1995年度
夏期集中講義の予定

人間科学科では沖縄国際大学文学部の石原昌家教授による『証言沖縄戦−戦争と人間』をテーマとした社会学特講を8月28日〜9月2日まで。また、北海道大学言語文化部の高橋宣勝教授により「口芸文芸−昔話の比較文化」をテーマとする文化論特講Bを8月28日〜9月2日まで予定している。

英語英米文学科では立教大学文学部の鵜月裕典助教授により「先住民とアメリカ合衆国史」をテーマとするアメリカ特殊研究Aを8月28日〜9月2日まで予定している。


1995年度の土曜公開講座は
「人間・その生と死」をテーマに

 土曜公開講座は、大麻公民館を会場に毎週土曜日に約2ヶ月間行われる連続講演である。「地域に開かれた大学」の理念を実現すべく1980年に開講されたこの講座は、すでに15年の歴史をもつ。本学の5学部が交代で担当しているが今年度は人文学部が担当する。1995年の共通テーマは「人間・その生と死」である。人間の死は、その生を性格づけるものとして、ともに人間の実存を規定する。この問題は、本学の人文学部が目標にする「人間研究」のまさに中心課題といえる。この課題の一層多彩な展開を図るために、他学部や学外の研究者にもご協力いただくことになった。
 講義日程と講師、個別テーマは次のとおりである。

5月6日 安栄 鉄男(保健理論)「よりよき生を考える―健康教育の視点から―」
5月13日 石垣 靖子(東札幌病院看護部長)「がんの痛みからの解放と緩和ケア」
5月20日 方波見康雄(藤女子大教授、開業医)「生老病死の医学」
5月27日 佐倉 朔 (人類学)「死の認識に関する人類学的考察」
6月3日 布施 晶子(家族社会学)「看護と看とりの社会学」
6月10日 清水 信介(臨床心理学)「心理療法における死と再生」
6月17日 奥田 統己(言語学・アイヌ語)「アイヌ口頭文芸にみる生と死」
6月24日 城下 裕二(法学部・刑法)「『脳死』問題の法的側面について」
7月1日 宮内 陽子(哲学)「ゆらぐ『死』の概念―脳死を考える―」
7月8日 杉山 吉弘(哲学)「死の人間学」7月15日生田邦夫(宗教学)「原始仏教の死生観」
(官内陽子)

1995年度の「北海道文化論」は
「北海道とロシア」をテーマに

 「北海道文化論」は学部開設以来、毎年夏期集中講義を公開講座として続けて、1995年度は17回目を迎える。今回は「北海道とロシア―民族と文化の交流」という総合テーマを取り上げて8月28日〜9月2日までの六日間に実施される。
 第13回(1991年)の北海道文化論では「北海道とアメリカ」を総合テーマに開拓期以降「120年にも及ぶ北海道・アメリカ関係」を「体系的に検討する試み」がなされた。今回のテーマはこれと連動して、「北海道・ロシア関係」の検討をという動機がないわけではない。しかし、北海道とロシア、とくに極東地域との関係にはアメリカと違って、共生する北方圏の一角できずかれた有史以来の長い交渉・交流の経過がある。今回の講座ではこのようなロシアとの交流史、とりわけその文化的交流の諸相に光をあて、その今日的な意味を間い直すことを目指している。
 今回の講師陣には、菊地俊明、秋月俊幸、谷本一之、中村健之介、原暉之、アンドレイ・ベロフの諸氏というようにわが国のロシア研究の第一線で活躍されている学外の研究者を予定。人文学部の高岡がコメンテーターをつとめることになっている。

(高岡健次郎)

 1995年度の教員採用試験に人文学部で7名が合格 
―人間科学科3名、英語英米文学科4名―

 児童・生徒の減少傾向が続き、北海道でも教員の登録者数が次第に低くなっている折り、1995年度は人文学部から7名が登録された(別表参照)。なお、本学全体では17名である。彼らの多くは、北海道各地の中学校、高校で臨時講師を経験したり、科目等履修生として学び続けて、教師の力量を高めてきた。
 人文学部では1981年に中学と高校の社会および英語の免許状取得者を出して以降、現在教壇に立つ卒業生は、人間科学科で46名、英語英米文学科では26名にのぼる。人文学部のひとつの特徴であるが、この中には特殊教育に携わる教師や本学での教職履修を基礎にして通信教育で免許を取得し、小学校の教師として活躍しているものもいる。現在、本学では教育実習に向けての事前指導の一貫として教科毎の模擬授業演習をはじめ、教職課程特別講座、教育研究会等独自の取り組みが行われている。そして目下、人間科学科27名、英語英米文学科19名の学生が、道内各地はもとより新潟、静岡、東京などでの教育実習に向けて準備を進めている。彼らの多くが、また次年度教壇に立てることを期待したい。

(小林好和)

第7代学長に杉本正教員が就任
−人文学部長には酒井恵真教員が再任−

 見澤俊明現学長の後任学長を選ぶ選挙が12月に行われ、次期学長として、元人文学部長で教授の杉本正教員が選出され、2月の理事会で正式に承認された。杉本教員は本学の前身である札幌文科専門学院を卒業後、慶応義塾大学文学部に入学、同大学卒業と同時に札幌短期大学に赴任。以来、札幌商科大学、札幌学院大学の教員として、また学園理事・評議員、後援会副会長などを歴任した本学の生え抜き教員である。
 任期は1995年4月1日〜1998年3月31日。
 人文学部長の任期満了に伴う学部長選挙が12月に行われ、現人文学部長である酒井恵真教員が再選された。
 任期は1995年4月1日〜1997年3月31日。


 94年度学部教員の人事、研究活動等 
 (10/1〜3/31) 

◎教員の異動

▼退職(3月31日付)

本間 徹夫(国語表現法)

O.S. Inglin (英語)

T.J.Thoman (英語)

▼採用(四月一日付)

教授 岩城 礼三(英語)
 小樽商科大学、日本大学卒

講師  S.W.Piercy (英語)
 アメリカ、マサチューセッツ大学卒

講師  J.D.Tario (英語)
 アメリカ、ユニオン大学卒

▼昇任(4月1日付)

教授 小林 好和

助教授 松本伊智朗

◎教員の海外研究出張

後藤 弘
 94年8月18日〜8月27日
 オーストラリア
 「オーストラリア英語の資料収集

安栄 鉄男笹岡 征雄
 94年12月8日〜12月15日
 アメリカ(ハワイ)
 「ホノルルマラソン参加者の疲労度調査」

坪井 主税 
 95年1月4〜1月15日
 イギリス
 「平和博物館関係資料収集」

◎人文学部教員出版物

笹岡 征雄著
 『北海道陸上競技記録事典』 勝木出版
 1994年2月(非売)

北爪真佐夫著
 『中世政治経済史の研究』 高科書店
 1995年3月、9,785円

中野 徹三著
 『社会主義像の転回』 三一書房
 1995年2月、3,500円

小山 充道編著
 『失語症・回復への菖道』 学苑社
 1995年2月、2,800円

澤田 幸展編 (Saito, K., Kohyama, A, Ohotomo, N. eds.)
 "Arecent aduance in spectal analysis" Hokkaido University Press
 1994.10. \15,000

安栄鉄男 (分担執筆)
 『青年の健康と運動』 宇土正彦・正木健雄監修 現代教育社
 1995年3月、2,500円

船津 功 (分担執筆)
 『富良野市史』第3巻
 富良野市編纂委員会
 1994年5月(非売)
 『北海道の歴史60話』 田端宏他編 三省堂
 1995年3月

奥田 統己 (分担執筆)
 『古代文学講座第四巻人生と恋』 勉誠社
 1994年6月、3,800円

◎委嘱発令(1994年度より)

戸田 昭治
 札幌市青少年育成委員(2年)
 札幌市南区民センター運営審議委員(2年)

中野 徹三
 社会思想史学会幹事(1年)

船津 功
 札幌市町名等整備審議会第八期委員(2年)

滝沢 広忠
 日本集団精神療法学会第12回大会運営委員(1年)

酒井 恵真
 日本労働社会学会幹事(2年)
 アジア社会研究会運営委員(2年)

清水 信介
 北海道臨床心理士会副会長(3年)