1997・4・1 No.6


科学と倫理

―サンフランシスコのある秋の日に

宮内 陽子 Yoko Miyauchi

 十一月のサンフランシスコは初秋の太陽が燦々と輝き、あそこの寒さは侮れませんよ、という知人の忠告にひるんで身構えたコートや襟巻、防寒靴の重装備が何とも鬱陶しいほどのうららかな暖かさであった。
 そのサンフランシスコで、九六年十一月二十二日から数日、第三回生命倫理学世界大会が開かれた。国際生命倫理学会の主催する、世界各国から五百人ほどの医学、医療、進学、哲学にたずさわる学者や研究者を集めた大きな大会であった。
 大会初日、幕開けの演壇に立った一人の小柄な女性がいた。ユアン・ファン・チェンさんという北京大学医学部の病院に勤務する若いドクターである。彼女の英語のスピーチは、タイトルからして「中国における日本の死の工場とアメリカの隠蔽」という、アメリカ人はもちろん日本人も数多く参加するこの国際大会向けのものとしては、いっそ小気味よい鋭さを孕んでいた。しかし演者の語り口はどこまでも静で、数字に語らせようとする分析態度の奥には、客観的な事実を見据える冷徹な目が会った。けれども、語るほどに彼女の心情は数字を超えた。内容はあの関東軍七三一部隊の人体実験である。彼女の祖国でくり広げられた凄惨な地獄絵。人々は生きながらに解剖され、冷凍され、細菌培養の器にされ、巷に放たれて伝染病拡散のエージェントにされた。絶望的なのは、こうした悪魔たちの飽食の営みが、科学の名において行われたことである。隊長石井四郎はその「功績」のゆえに軍医としての最高の地位を得、実験に手を染めた「科学者」たちは、戦後日本のアカデミーに復帰した。アメリカもまたこの「科学的」実験の成果を尊んで、のちの朝鮮戦争に応用した。科学は倫理の視界を逸れるとき、人間の手を離れて悪魔に身売りする。この若い医学者の訴えも、戦争という特異な状況のもとで起こりうる例外的な異常現象、という言い訳では少しも免罪されない、倫理の歯止めを失った科学の底知れぬおぞましさの告発と響いた。けれども彼女は言う。自分は誰かを貶め、どこかの国を槍玉にあげるためにここに立ったのではない、私たち人類が犯した過ちを正視し、科学は人類の幸せのためにこそあるのだという認識に向けて、自分と手をつないでほしいのだと。その思いを私たち聴衆もまた共有しえたことを、会場を揺るがせて鳴り止まぬ万雷の拍手が語っていた。学会という学問的な議論の場で、このような大波のうねりにも似た拍手のなかに身を置いたのは、私にも初めての経験であった。
 サンフランシスコはその日も穏やかな秋空であった。


1996年度学位記授与式
 ―人文学部第17期生264名が卒業― 

 1996年度の卒業生に学位記を授与する式典(卒業式)が、3月14日北海道厚生年金会館で挙行された。本年度は2年前に開設された大学院法学研究科の修了者8名に初の法学修士の学位が授与された他、全学で1,222人の学士に学位記が授与された。
 人文学部では人間科学科で184人、英語英米文学科80人、計264人の人文学士が新たに誕生した。これにより卒業生は、人間科学科が2,304人、英語英米学科が1,007人で、人文学部合計では3,311人となった。96年度の卒業率(4年次在籍者に対する卒業生の割合)は人間科学科は86.0%(前年度は79.4%)、英語英米文学科は87.9%(前年度は89.0%)となっており、昨年度と比べて、英語英米文学科は若干低下し、人間科学科は上昇した。


 人文学部20周年記念事業 
大綱かたまる

 人文学部は、1997年4月に開設されて、今年、20周年を迎える。学部では、記念事業実施委員会(委員長酒井人文学部長)のもとで、その一部事業の実施を含め記念事業の計画に、取り組んできた。
 今年、まさにその年にあたり、この2月21日に教授会で「人文学部20周年記念事業(案)」の大綱が了承された。
これにもとづき、今年、中心的な諸事業が展開される運びとなった。これらの主なものを摘記するならば、

・I人文学部同窓生と学部との共同組織(祝う会)が主催する事業

 記念事業は、学部卒業生、教員相互の、さらには、在学生との交流を深め、今後の展望を切り開く一助とするためのものであるという、性質上、人文学部同窓生と学部の共同作業として、取り組まれるべきものが多い。現在、一期生をはじめ、文泉会各期の人文学部幹事と実施委員会による実行組織(人文学部20周年を祝う会)が結成され、事業を財政的に支えるための募金活動も検討している。
同窓生と学部との共同による祝う会が主催するものとして、
(イ)人文学部20周年記念誌の発行=学部20年のあゆみをもとに、記念誌を発行する計画がすすんでいる。
(ロ)人文学部20周年を祝う会(仮称)=すでに、本年8月23日(土)に、学園50周年祝賀会「文泉会員の集い」が札幌グランドホテルで開催されることになっているが、同日同ホテルで午後7時から、同窓生、関係者による人文学部独自の祝賀会が開催される。
(ハ)芸術公演の夕べ=人文学部にふさわしい、芸術的な催しを、新館G館多目的ホール(SGUホール)を会場に、本格的に開催する予定である。

・II学部が実施する事業

(ニ)学部20周年、学園創立50周年記念論文集の発行=これは『人文学部紀要』の特集号として、2冊=1冊目は、第60号が「人間科学特集」として、本年3月に刊行され、2冊目は、第62号が「英語英米文学特集」として、98年3月刊行の予定である。なお、大学の事業に属するが、『札幌学院評論』第20号で「人文学部の特別編集記事」が組まれ、本年3月に発行された。
(ホ)記念出版『人間科学の創造(仮題)』の刊行=人文学部のこれまでの研究成果を問うべく、集団的著作の公刊が企画され、98年3月を目標に、昨年8月に再開した人間科学研究会を中心に準備がすすめられている。
(ヘ)シンポジュウムの開催=全国の人間科学・人間学関係学部、科学を対象とする「第3回フォーラム人間科学を考える」(本年9月予定)を開催する。また、英語英米文学科を中心に英語教育をめぐるシンポジュウムの開催も予定されている。



沖縄国際大学との単位互換協定、いよいよ実現へ

 沖縄国際大学の文学部と本学人文学部の間で単位互換制度がかねてより検討されてきたが、昨年秋の同大のカリキュラム改革によって単位互換の障害がほぼ解消し、同制度発足の環境が整った。そこで、英語英米文学科も加えて同大との単位互換制度を推進するとの教務委員会案が昨秋の教授会で承認を得て、同大の意向を打診したところ、今年1月に同大より基本的に同意するとの教授会意思が伝えられた。この2月末には、沖縄国際大学の波平文学部長と小熊教学部長が来学され、具体的な協議を行った。
 今年度中に単位互換制度に関する基本的な合意を前提とした、単位認定のための技術的な詰めを行い、正式に協定を結び、1998年4月から学生の交換をスタートする予定。
 毎年数名ずつ派遣される学生が、日本列島の南と北の端の文化に触れることで、新鮮な刺激を受け、互いの学部学生に好影響を与えるだけではなく、北と南の両大学間での学術交流が行われることが期待される。
 人文学部ではこれを皮切りに、今後更に、単位互換協定校を増やしたいと考えている。

(川合増太郎)



新人文学部長に 中野徹三教員が就任

 酒井恵真人文学部長の任期満了に伴う学部長選挙で、人文学部は中野徹三教員を選出した。これにもとづき4月1日付で人文学部長が発令された。
 中野教員は、1963年に、本学の前身である札幌短期大学に赴任以来、30年以上にわたって、札幌商科大学、札幌学院大学の教授として、研究・教育に従事すると共に、長年にわたって学園(当時、学校法人明和学園、現学校法人札幌学院大学)の理事・常務理事として、札幌商科大学の創建に尽力しながら、その後の困難な学園運営を担った。また1977年の人文学部開設にあたっては、設立準備委員会の中心メンバーとして、本道初の人文学部の開設に導いた。いわば人文学部の生みの親の一人である。
 任期は1997年4月1日から1999年3月31日。


『フォーラム人文』第2号
特集・英語教育

 12月に「フォーラム人文」第2号が発刊された。2号では札幌学院大学が目指す英語教育とは何かの特集を組んだ。英語英米文学科の教員が、自らに問いかけながら、示唆に富む提言を行っている。特集号の内容を、簡単に紹介すると、次のようになっている。
1. 「これからの英語教育―カリキュラム改革の理念と方向」(岩城礼三)
 英語教育の歴史的変遷を踏まえ、国際語としての英語、英語における個性化教育、新しい英語指導の理論と方法を提言。そして、日本的な英語教育の創造を唱えている。
2. 「〈新たな〉英語カリキュラム―ヒューマン・ネットワークの創造」(宮町誠一)
 昨年四月に、全学共通の「英語・新カリキュラム」が発足した。その特色と課題が、二十一世紀の展望を交えて示してある。
3.「教室における英語コミュニケーション」(英文)(ティモシィ・グローズ)
英語のみを使って、いかにして多人数の学生の会話力を、同時に養成できるか。その実践例。
4. 「実践報告―発音指導を中心とした英語英米文学科一年生への授業」(坪井主税)
 昨年の前期に、実際に行った授業の紹介。添削記録を付記。
5. 「英語新カリキュラム」の紹介(中村敦志)
「新カリキュラム」の特徴が、項日毎にまとめてある。
6. 「SGU基本活用語彙」(宮町誠一)
 全2,671語のリストを収録。
 興味のある方は、教務課窓口(人文)にお申し出ください。

(中村敦志)



96年度

 人文学部卒業論文 

 

人間科学科


〈社会生活と人間コース〉

 今年度は62名の卒業論文の提出があった。例年の様にテーマの領域は多様な広がりを見せた。歴史研究として大沼拓也「公家の研究」横山武志「北条早雲の出自について」などが、日本文化の問題を取り上げたものとして井実勝「戦後日本の消費文化と生活意識」長谷宣明「現代日本人の異文化コミュニケーション」などがある。また金木渉「新・新宗教の形成とその背景」福士千佳「ヒッピー文化および現代日本の若者との比較研究」は、今日の社会や若者に対する筆者の観点が明確である。駒沢寛之「沖縄における基地問題」村上利貴「天安門事件と中華人民共和国」は今日の社会問題、祉会的事件を丁寧に取り上げた。子どもの問題を対象としたものに、若林賢次「子どもたちの中のいじめ問題について」大関久美子「遊びに見る子どもの仲間関係」がある。中尾まき子「在宅介護支援センターにおけるケアマネジメント」保住美智代「ポランティアの時間預託制について」は社会福祉の今日的課題を取り上げた。
 日景美穂子「現代日本における結婚と家族」菊田一秀「障害者雇用の現状と課題」は、丁寧な文献の整理がうかがえる。高村理「視覚障害者の地域生活における盲導犬の役割」長谷川真理「IDDMの子供たち」は当事者の立場から聞き取りを整理した。増子亜由美「重い障害を持つ人達の地域生活援助」は手堅くまとめた社会調査研究として秀逸である。字数の関係からこれ以上紹介出来ないことが残念である。

(松本伊智朗)

 

〈人間の形成と発達コース〉

 今年度の卒論提出者は82名と多く、発表会も2日間、2つのグループに分かれて同時並行で行われた。北島ゼミの学生は、担当教員ご逝去により急遽他の教員の指導を受ける形になったが、結局1名の未提出者を出してしまった。
 テーマにはコースの特徴がよく表われていた。なかでも、いじめ、不登校、自殺、児童虐待といった現代的な問題を扱ったものが目立った。清水ゼミ「いじめ自殺に関する心理学的考察」(津川洋海)、滝沢ゼミ「児童虐待についての一考察」(成田綾)がその代表である。また青年期心性に関する研究として、清水ゼミ「青年期における自我同一性の研究―同一性地位と解放性の関連を中心に」(廣田寿美)、廣川ゼミ「大学生における『社会と個人の意識調査』」(蓬田美穂)などがある。指導教員の専門を反映した研究としては、北島ゼミ「注意に関する一研究―図形知覚と音に関連する実験から」(飯森玲子)、小林ゼミ「子どもの素朴な生物理論にもとづく『因果的説明』と『予測』の性質」(吉永タ香)、鈴木ゼミ「教師教育に関する一考察―教育実習報告書を分析して」(後藤智信)、武石ゼミ「『教科書問題』への一考察―高校新聞による報告と共に」(石黒晴義)、滝沢ゼミ「織田信長の病跡学的研究」(桐越則匡)、澤田ゼミ「生理反応・心理評定によるパーソナル・スペースの検討(II)」(米田未央)など、優れた論文があった。
 発表会には30名前後の学生が参加していたが、3年生が真剣に聞いていたのが印象に残った。

(滝沢広忠)

 

〈思想・文化と人間コース〉

 今年の際立った特徴は、豊富な文献に当たり、緻密に分析した卒論が多く、全体に卒論の枚数、内容の点で大作が多かったことである。また、例年同様、考古学、アイヌ文化、芸術、思想・哲学から、生命倫理、エイズ、教育問題といった極めて現代的でトピカルな問題を扱ったものまで、多彩なテーマが取り上げられたのも目立った。
 例えば、鶴丸ゼミ「北海道における石皿の分布とその形状」(高橋由里)、「骨塚に見るオホーツク文化の動物観」(佐々木聡子)、奥田ゼミ「アイヌの移住について」(小山田博)、「アイヌの説話資料からみた疱瘡神について」(川向由希子)が、膨大な文献を緻密に分析・考察し、独自の結論を手堅く導き出している。
 また、奥谷ゼミ「古代日本人の他界観」(松田典子)、「日本と西欧の『死』を描いた図像を読む」(嘉尾民子)、「伝統的な日本人の死のとらえ方と現代」(藪下詩乃)も自分の主体的な問題意識に基づき、幅広く文献を渉猟し、緻密に考察を加えた独創的な論文である。
 現代的でトピカルな問題を取り扱っているものとして、奥谷ゼミ「現代の教育問題と大人たち」(後藤公子)、「生命倫理と優性学 eQOL(生命の平等性)を求めて」(藤原秀明)、杉山ゼミ「エイズ・アクティヴィズムとゲイ・リブにおける運動論の考察と提言」(川村省悟)が提出され、特に前2者は好論文であった。
 川合ゼミ「ガムランについての一考察」(窪田倫子)、杉山ゼミ「フォービズムと表現主義の絵画」(齋藤邦彦)といった音楽・絵画をテーマにしたもの、川合ゼミ「22の夜明け」(宮下香)の小説も、今年の特徴の1つであった。

(川合増太郎)

 

英語英米文学科 (95・96年度)

 95年度の卒論提出者は16名に対して、今年度は4名となり、数字のうえでは大幅な減少を示している。しかし、提出率(登録者に対する提出者の割合)は昨年並みであるから、今年度は初めから登録者が少なかったのである。本学科では卒論が選択単位なので、当該年度におけるゼミの方針や学生の動向などで、提出者の数字が大きく変動する。全般的傾向としては、文化系のゼミが多い年度は卒論の提出者も増加するようである。
 今年度提出の4本は、前野香織(中川ゼミ)「アメリカのシオニズム」、江川幸子(宮町ゼミ)「アメリカの食生活に見られる家族間コミュニケーション」、中島葉月(宮町ゼミ)「W.Blakeの"London"について」、藤王純子(宮町ゼミ)「W.Blake研究」であった。数は少ないが、文化系1本、コミュニケーション1本、文学2本とバランスの取れた構成であり、力作が揃った。
 昨年度は文学3本に対して文化系13本となり、アメリカ研究の青木・西出ゼミ、イギリス研究の菅原ゼミからの卒論提出者が多かった。まず文学ではダニエル・キイス(中村ゼミ)、エドガー・アラン・ポー(岡崎ゼミ)、J.D.サリンジャー(岡崎ゼミ)が扱われた。どれも当該ゼミ選りすぐりの論文である。
 アメリカ研究では、「アメリカ黒人差別問題」、「アメリカ映画に見る日本人」、「アメリカ独立革命の起源」「アメリカ銃社会における諸問題」、「アメリカの中等教育」、「日米に見る報道の裏側」の6本が提出された。
 それに対しイギリス研究では、「イギリスにおいて宗教と戦争はなぜ結びついたのか」、「イギリスの魔女」、「騎士と武士」、「サッカーの歴史とこれから」、「バース・コントロールとイギリスの女たち」、「アーサー王伝説」、「イギリスと日本の教育制度」の7本が提出された。
 文化系の論文では多様なテーマが扱われ、特に英米と日本の比較を念頭においた論文が多かった。その意味で、学生の問題意識が先鋭に現れて読みごたえがあったと言うことができる。次年度は多くの学生が卒論にチャレンジし、教員を唸らせる論文を提出して欲しいものである。

(菅原秀二)


「人間学概諭A」の特別講演
「アウシュヴィッツと人間」

 「人間学概論A」の今年度の特別講演は、「アウシュヴィッツと人間」という題で、青木進々氏のお話を聞いた。青木氏はグラフィックデザイナーで、七八年からフランスの総合アート誌『グナー・インタナショナル』の東洋ゾーンを担当して日本とパリを往復されていたが、氏が私に話されたところでは、83年たまたま第2次大戦中のポーランドの子どもたちが描いた戦争の絵に接して強いショックを受け、以後ポ−ランドを訪れること50回以上、84年私財を投じてグリーンピース出版会を設立し、『子どもの目に映った戦争』など貴重な記録を次々と出版された。さらにアウシュヴィッツ強制収容所の管理機関から大切な遺品の一部を借用して日本各地で「心に刻むアウシュヴィッツ展」を組織されてきたが、この展覧会が12月5日から札幌で北大生などボランティアの皆さんの協力で開催されることになり、特にお願いして、その最初の日に特別講演をお引き受け頂いた次第である。氏は、ソ連軍の「ベルリン解放」直後におこったベルリン女性に対するソ連兵士の強姦(最低11万人、ベルリン以外のドイツ女性190万人)というおぞましい事実が、戦争というものの真実の一部であることから説きおこして、ヒトラーらのめざした戦争が、ユダヤ人やスラヴ人、ロマ・シンティ(いわゆるジプシー)など彼らのいう「下等人間」に対する「絶滅戦争」であったこと、ここにアウシュヴィッツに代表される「絶滅収容所」が生まれる理由があったことを解明された。さらに、ビデオを用いて氏が提示された、ここでの160万人の虐殺の恐るべき事実の数々が、どれほど圧倒的な印象を聴衆に遺したかは、会員の感想文が印象的に伝えている。その一部を紹介する。
 「…アウシュヴィッツで行われたことは、人間が人間に対してできる悪の全てだと思います。そういう人間の内部の弱さに真すぐに向きあい考えること、これこそが講演の最後で言われた、歴史上で最も暗い事実が未来の警告である、ということの意味だと考えました。…」

(中野徹三)


おめでとうございます

◎大学院合格者
 日本福祉大学大学院社会福祉学研究科修士課程


◎臨床心理士資格取得者
 次の2人は人間科学科の卒業生であるが、この度臨床心理士資格の認定を受けた。

 これで人間科学科の卒業生で臨床心理士の認定をうけた者は6名となった。


 「女・男」で創る世界 
マコーネル教授講演会

 昨年11月11日、スタンフォード大学教授ジョアン・マコーネル博士を本学にお迎えして、全学公開の講演会が開催された。英語英米文学科の学生を中心に、若干の教員を含め100名以上の聴衆がB館の会場に集まった。
 若い頃はバレリーナとしての舞台経験を持つマコーネル教授は、当時を偲ばせる艶やかな姿で登場し、聴衆の関心を一身に集めた。先生は明快な英語で表情豊かに講演を始め、リスニングに集中しつつも学生達の目は先生の一挙手一投足に注がれた。
 講演はギリシャ神話や西欧の故事、そしてアメリカン・インディアンの昔話に現れる男女の関係を紹介し、それが全て「権力のピラミッド」という男性優位社会の原型を示していることを例証した。続いて、先生自身がコロンビア大学大学院で女性であるが故に受けた差別の問題を指摘しつつ、現代社会における教育、結婚生活、社会生活上の女性差別の問題をユーモアを交えて取り上げていった。
 最後に男性と女性にとって幸福な社会のモデルとして相互に敬意を抱く社会のモデルを提案して講演を終えた。
 講演後、聴衆との質疑応答があり、特に英語学習に関しては積極性が英語コミュニケーション能力の向上に有益であることが強調された。

(SGU英語教育研究会)


留学生達の横顔
〜海外体験者の素顔〜

 英語英米文学科では95年度、3名の学生が1年間休学をして語学研修等の目的で海外に出かけた。ロンドンに語学留学をした博田久美子さん(菅原ゼミ・4年)は、語学学校で毎日3時間の授業と大量の宿題をこなしていたらしい。反省点として、語彙や連語の基礎力をもっとつけるべきであったこと、1年間では満足の行く結果が得られなかったこと、を挙げている。また、「外国にいくチャンスかできても自分次第で吉とでるか凶とでるかが決まります」という教訓を述べていた。
 他の2名は、オーストラリア留学である。ブリスベーンに約八ヵ月滞在した石田真希子さん(宮町ゼミ・96年度卒)は、学院大生としては珍しいワーキング・ホリデー制度を利用して現地で働いて生活費・学費を稼ぎながら語学学校に通った。ホームステイやバス旅行などを通して日本文化とは異なる文化を体験し、8ヵ月の滞在を終えてそれまでとは違った自分を発見したという。人の性格は、国民性によって共通しているのてはなく、個性によってそれぞれ違っている、というのが本人の感想である。シドニーを中心に約10ヵ月滞在した庄司めぐみさん(中川ゼミ・96年度卒)は、免税店などでアルバイトをしながら資金をため周辺地への小旅行を体験して来た。多民族国家オーストラリアという視点から現地の衣食住の文化を眺めると同時に、「第三者」の立場から日本文化が見られ、視野が拡大したという長所を挙げている。

(中川正紀)


CALL導入決まる
今春から利用開始!

 リスニング能力の向上を目指した「新英語カリキュラム」の導入以来、熱い期侍が寄せられてきたコンピュータを利用した英語学習システム(CALL)の97年度導入が決定された。本学において情報化社会、インターネット、そしてマルチ・メディアの時代に対応した英語学習が実現することになった。
 このシステムは48台のコンピュータと英語学習ソフトとLL装置が一体化したもので、学生はコンピュータ上で対話しながら、自分の理解に応じたぺースで個別学習を進めることができる画期的なものである。学習ソフトの中心はBBC(英国放送協会)が製作した「ニュー・イングリッシュ・コース」で、全コースがサーバーに蓄積されている。学生は自分の到達レベルに応じて適切な教材を選択し、音声、文字、映像情報を活用しながら、リスニング能力を飛躍的に向上させることか可能となる。学生は自分の音声を録音し、モデルの発音と波形を見ながら視覚的に比較・矯正することもできる。このソフトには軽快な会話、歌詞を見ながら歌える歌、使用頻度の高い慣用表現、ゲーム感覚で楽しめる練習間題等が用意され、学習者が楽しみながら英語技能を習得できるように工夫されている。
 「SGU・CALL・システム」と呼んでいるこの学習システムのもう一つの特徴は学習履歴の存在である。学生がこのシステム上で学習した内容、時間、練習問題の成績等がコンピュータ上で記録され、学習者自身も自分の進捗状況を把握し、その学習結果を基に教員もより効率的な指導が可能となる。
 また、このシステムはCD−R0M教材を活用することで、フランス語、ドイツ語等の外国語学習にも利用できる。
 さらにインターネット上で様々なホームページにアクセスし、自分の関心分野の情報をリアルタイムで入手することもできる。授業で利用していない時間帯は学生に開放される予定なので、積極的に利用し、楽しみながらコンピューターリタラシーとラングェッジ・リタラシーの向上に活用してもらいたい。

(SGU英語教育研究会)


1997年度入学試験結果

 97年度本学の全入学志願者は、9,287人で前年度より2,426人減と大巾に減少した。人文学部人間科学科は全体で1,513人と、前年度より減少したが、推薦入試は4.6倍と昨年と同様の競争率であった。
 英語英米文学科は全体で590人と前年度より減少した。


教員採用試験結果
―教員採用枠少なく苦戦―
英語英米文学科は健闘す

 児童・生徒の減少傾向が強まり、教員の採用枠が急激に少なくなって、本学学生も今年の採用試験では苦戦を強いられた。昨年は全学で27名(人文学部は14人)が採用登録になり、善戦したが本年はわずかに7名にとどまった。人文学部では、英語英米文学科の高等学校英語3名(北海道)、中学校英語1名(青森県)計4名が登録されただけであった(別表参照)。この度は、特に高等学校・地理歴史(受験者数417名に対して19名登録)、公民(同じく243名に対して6名登録)の採用枠が少なくなった。今後、本学では採用試験における実践的な力量重視の取り組みを進める一方、専修免許や複数の免許取得、さらに特殊教育等でも力を入れるなど多様な選択が可能となるよう指導を強化していきたい。

(小林好和)



本学学生と中国人留学生が
中国・西安で交流駅伝

 2月16日、中国・西安で礼幌学院大学生と中国人留学生の「交流駅伝」を行なった。シルクロードの出発点として紀元前から、泰・漢・隋・唐など3,000年に亘って栄華を誇ってきた都「西安」である。コースは西の城門から、南門の城壁上の遊歩道を周回する、6区間30キロを走る。当日、朝8時全員で、バスに乗り西の城門に向かう。城門に入ると、四方の高さが12メートルの城壁に囲まれ、延々と続く様はまさに気宇壮大というか、迫力あふれる景観に誰もが圧倒され、その素晴らしさに遠い歴史に思いを馳せていた。9時30分、留学生の馬麗麗がスタート、最終ランナーの谷口正憲がゴールする100メートル手前で全員が合流してテーブを切った。走者全員の顔には、日本ではない異国でのゴールに、感動と満足感が現われていた。参加学生は一応に最高の思い出、人生のハイライト、中国の歴史、文化を肌で感じたと、この企画が有意義だったことを嬉しそうに述べていた。

(笹岡征雄)



北海道文化論−第12集
『北海道の子どもの生活・文化・教育』
が発刊された

 1992年の夏に実施された公開講座北海道文化論の第12集『北海道の子どもの生活・文化・教育』(札幌学院大学生協、1,900円)がようやく発刊された。その内容は以下のような構成となっている。
 最初に、イントロダグションとして、「子どもをどう問題にするのか、どうとらえるべきか」といったことにかかわって教育研究、心理学や文化人類学などの成果を紹介することを、コーディネーター役の鈴木秀一が行った。次いで、当時、札幌少年鑑別所首席専門官であった福田美喜子氏に、「北海道の少年非行」の実情を話して頂いた。次いで、北海道のすぐれた児童文学者加藤多一氏とNHKの名ドラマ・ディレグターの洋口浩之氏に、それぞれ御自分の作品(加藤氏には「草原―ぼくと子っこ牛の大地」など。江口氏はテレビドラマ「新十津川物語」など)を取り上げて頂き、その中に画かれた「北海道に生きる子どもたち」を紹介して頂いた。長い間、作文と詩の教育実践をやってこられた三上敏夫氏(講座の時は名寄女子短期大学教授)に、子どもたちが詩や作文を通して、どのように北海道や北海道で暮らす人びとをとらえているかを明らかにして頂いた。最後に、北海道教育大学旭川校教授の内島貞雄氏に、教育研究者として、北海道の子どもの発達をどうとらえるか、教青実践はどうあればよいかについて御検討頂いた。
 この構成と人選は、自画自賛めくが、かなりユニークで、内容も面白いものができたと思う。ただ、本にするという制約から、残念なことが一つある。それは、江口氏の講座はTVドラマ「新十津川物語」のデモ版ビデオを観ることを中心としたものだったのだが、本にはそれを再現できないのである。読者がビデオも併せ観られることを切に希望して、紹介を終わりたい。

(鈴木秀一)



96年度学部教員の人事、
研究活動等
(10/1−4/1)

◎ 教員の異動

▼退職
(11月18日付)
・北島象司(教育心理学)
(3月31日付)
・西出敬一(アメリカ史)
  徳島大学総合科学部へ転出
 
▼採用(4月1日付)
・講師  伊藤亜矢子(臨床心理学)
  東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得
  北海道大学教育学部助手

▼昇任(4月1日付)
・教授  坪井主税(平和学)
・助教授 管原秀二(イギリス史)
・助教授 奥田統己(アイヌ語・アイヌ文化)

◎ 人文学部教員出版物

・小林好和
(分担執筆)若き認知心理学者の会著『認知心理学者教育評価を語る』北大路書房、96年10月、2,575円
(小島康次と共監訳)アネット・カミローフースミス著、『人問発達の認知科学―精神のモジュール性を超えて―』ミネルヴァ書房、97年3月、3,914円
・岩城礼三
著書『英語教育の研究―授業システムのダイナミズム―』光明社、97年1月、2,500円
・津田光輝
(分担執筆)『発達障害白書一九九七年度版』日本文化科学社、96年11月、3,800円
・松本伊智朗
(分担執筆)大嶋恭二編『児童福祉二−ズの把握・充足の視点』、多賀出版、97年2月、7,210円
・奥田統己
(分担執筆)岩波講座日本文学史第17巻『ロ承文学2・アイヌ文学』、岩波書店、96年1月、3,000円

◎ 海外出張

・宮内陽子
96年11月20日〜29日 アメリカ 「第3回生命倫理学世界大会出席」
・安栄鉄男・笹岡征雄
96年12月5日〜12日 アメリカ 「ホノルルマラソン参加者疲労度調査」
・松本伊智朗
97年1月5日〜24日 オランダ・イギリス 「オランダ障害者福祉調査と研修打ち合わせ」
・笹岡征雄
97年2月14日〜20日 中国 「北京・西安の体育施設視察と情報交換」
・川瀬裕子
97年2月15日〜3月12日 イギリス 「現代英米演劇研究」

◎委嘱

・松本伊智朗
子供の権利条約普及啓発パンフ編集委員会委員、北海道(97年2月〜97年3月)

―訃報―

 人文学部教授北島象司先生が、11月18日に逝去されました。68歳。北島教員は、北海道大学教育学部を卒業後、北海道教育研究所研究員、北海道大学教育学部教授、同大学教育学部長などを経て1993年に本学人文学部教授として赴任され、主に教有心理学を担当の他、教職課程の充実発展に尽くされました。謹んでご冥福をお祈り致します。


新校舎の竣工と施設再配置計画
A館に心理臨床センターの専用施設オープン

 一昨年末から始まったキャンパス第2期整備計画に基づく新校舎の建設工事が、12月に終わった。この工事で、新たに教室棟のE館、サークル棟のF館、厚生施設のG館が建設された。
 それに伴って、在来施設の利用方法の見直しが行われ、施設再配置計画に基づく改修工事が2月〜3月にかけて行われた。
 人文学部に直接関係するA館では、(1)5階の和室と談話室が移動して、その跡を人文学部長室と研究室に転用、(2)2階のL・L教室の一つに、新しくコンピューターを利用した英語学習システム(CALL)が導入され機能アップが図られる、(3)1階の保健センターのE館への移動と研究室移転跡に、C館のワープロ教室が移設される他、心理臨床センターの専用施設が心理学実験室に隣接して設置される、(4)2階の小教室、外国人教師研究室、国際交流センタ−、語学教育センターなどの配置がえによる施設機能の高度化を図るなどの再配置があった。
 特に心理臨床センターは95年4月に設置されたが、今まで専用施設がなかった。これにより、ようやく活動拠点か得られ、センター本来の活動が可能となった。


編集後記
 人文学部は今年264名が卒業し、その総数は3,3OO名を越えた。4月には225名の新入生を迎える。彼等は4年後に21世紀最初の卒業生となる。その時卒業生総数は4,000名を確実に越える。
 今年は人文学部20周年にあたる。記念事業もほぼ固まった。
 新たな歴史を開くにふさわしい年にしたい。

(酒井 恵真)