人文学部報

1997・10・1 No.7


人文学部20周年記念特集号

表紙


人文学部20周年を迎えて

人文学部長 中野徹三

 札幌学院大学人文学部が、本道最初の人文学部として1977年に開設されて以来、今年は20周年にあたる。
 私たちの学部は、ベトナム戦争後もなお果てしなく続く冷戦の緊張に加えて、地球規模の環境破壊や民族紛争、精神の荒廃と人間疎外の深化が次第に強く意識されはじめた1970年代に、「真に人間尊重の立場に立つ総合的な人間の科学とそれに基づく教育システムの創造」(学部設立趣意書より)を掲げて歩みを開始した。
 「英語英米文学科」は、戦後間もなく札幌市中島公園の池畔に外地から復員した元学徒兵たちが、素手と情熱で創設した「札幌文科専門学院」以来の長い伝統を受け継ぎ、英語学と英米文化を広くカバーする、清新な授業体系を生み出した。
 また、全国で3番目に生まれたユニークな「人間科学科」は、人間についての幅広く豊かな総合的認識と人間的感性の養成を目標に、その歩みを開始した。
 人間の思想と文化を専門的に考究する「思想文化と人間」コース、心理学と教育学の科目群を通じて人間に迫る「人間の形成と発達」コース、社会学と福祉科目群を系統的に学ぶ「社会生活と人間」コースの3つのコースを置き、学生諸君のための多様な卒業後の進路・資格の開拓という要求に応えるべく、努力を傾けた。
 本学部の趣意に賛同して集まられた専任教授陣は、本道考古学のパイオニアであり、初代学部長を勤められた大場利夫先生をはじめ、北海道教育大学元学長の船山謙次、名寄短期大学元学長の鈴木朝英の両大教育学者、本道心理学会の重鎮奥野明先生、労働科学の権威で二代目学部長になられた方波見雅夫先生など、まさに壮観ともいうべき陣容であり、気鋭の若手研究者集団とともに「人間科学とは何か」をめぐって、情熱的な討論を重ねた当時の教授会を回想するとき、改めて深い感慨を覚えずにはいられない。
 この場をお借りして、学部草創期をリードされた先輩諸碩学に衷心から感謝の念を表明させていただくと共に、ますますのご健勝を祈りたい。
 なお、本学部スタッフによる研究成果は、本学『人文学会紀要』(年2回刊)に掲載される諸論文はじめ、学部教員が年々に公刊する多数の著書論文等を通じて、わが国の人文科学系学会の共有財産となっている。本年3月に出た紀要第60号は、学部開設20周年を記念して、「人間科学の現状と課題」を特集した。海外の大学、学会等で積極的に活躍している同僚も少なくない。また、開学部以来私たちの学部は、「深い理解と愛情をもって地域社会の福祉と文化の向上に役立とうとする意欲とその学問的能力を育成すること」(学部設立趣意書より)を大きな目的として、北海道史など「北海道に関する科目群」を置き、とりわけ内外の講師陣による公開市民講座を兼ねた「北海道文化論」は、広く市民からも好評をもって迎えられ、毎年の講義内容は既に12冊の著書となり、北海道研究のためのわかりやすく、優れた学問的業績として、各方面から歓迎されている。本学部の今後を拓く力のひとつは、人間存在の謎とその危機に向かって大胆に挑戦する、学部スタッフの創造力とその協働のいっそうの豊かさにあることが、今こそ銘記されねばならない。
 併せて忘るべからざるものは、発足後間もない新学部の幾多の不備にもかかわらず、教職員と共に学部の未来の発展を信じ、献身と協力を惜しまれなかった学生諸君の烈々たる本学部への愛情である。先日開かれた人文学部20周年を祝う会、そして本学での米倉斉加年文化公演会の開催は、まさに1期生を中心とする、卒業生諸君のご努力による成果であった。全道、全国で活躍する3315名の本学部卒業生諸君、21世紀に向けて船出しようとしている1056名の在学生諸君は、私たちの誇りであり、希望である。
 私たちの学部は今、新しい世紀を前に、次の飛躍のための構想を練りつつある。英語英米文学科における語学教育と海外研修の飛躍的な強化、人間科学科の教育研究システムでの文化と心理と福祉の分野の一層の改善充実、卒業生諸君を含む社会人に大きく開かれた総合型大学院の早期開設等は、本学と本学部に課せられた、大きな社会的要請といってよい。
 20年の成長期を経て、いま学部の成年期は始まる。蝉脱の季節にあたり、私は原詩とは別の意味合いで、かの劉廷芝の詩の一節を想い出す……。

  年年歳歳花相似  歳歳年年人不同

二十年を迎えた人間科学科

人間科学科長  廣川和市

 人間科学科は、1977年4月、英語英米文学科とともに、札幌商科大学の2番目の学部を構成する学科として誕生した。当時、大阪大学人間科学部、文教大学人間科学部につづく、全国3番目の人間科学科として発足した本学科も、20年を迎えた。
 人文学部の設立趣意書にいう、「人間と人間生活の諸条件に関する新たな問題状況の発生にともない、人間と人間社会・文化に対するこれまでの細分化されたアプローチの限界性が強く意識されつつある現在、真に人間尊重の立場に立つ総合的な人間の科学とそれにもとづく教育システムの創造」は、その後、一貫して本学科の課題でありつづけている。
 1984年度の現行教育課程実施以後、今日まで3回にわたる改革の構想が示され、現在、新たな発展をめざして、その検討は大詰の局面を迎えているところである。その主要な課題群は、
(イ)コースの内容の明確化と関連科目の精選と更新という課題
 現在本学科は「社会生活と人間」、「人間の形成と発達」および「思想・文化と人間」の3つのコースを有するが、従来のコースの意義と限界を再検討し教育目標をより鮮明に表現することを検討すること、
(ロ)前記の課題から、現代社会の変動と新たな教育要求に対応したカリキュラムを整備する課題
 現代的な課題に適合した科目の再編成を行ない、今日的需要の高い、心理臨床関係、福祉関係の整備充実と、それらをも統合する人間科学関連科目の再編成を行うこと。
(ハ)資格課程をいっそう整備・充実する課題
 近年、本学科の学生における女性の占める比率が高まっているが(今年度、新入生、約60%)、ますます、専門的資格志向がつよまっている。本学科ではすでに教職課程を初め、学芸員課程、社会福祉主事課程、社会教育主事課程などが開設されているが、さらに、社会福祉士受験資格付与の条件を整備することで、資格課程のいっそうの充実をめざすこと、などである。
 本学科は、これまでの20年の研究、教育活動の実績をもとに、いま、新たな展開をめざしている。
 なかでも、社会と学問・教育の今後の基本的動向に十分留意して、また、地域社会の社会的需要、卒業生の社会的進路の長期的展望を現実的に踏まえることが求められている。
 その一環として、大学院開設も視野に入れなければならない。


英語英米文学科の二十年とその使命

英語英米文学科長  宮町誠一

 米国の文学や文化は、日米間の政治・経済と肩を並べるほど、現代の日本人の生活様式、価値観に鮮明にその足跡を残してきた。9月6日に全世界に伝えられた「英国民のプリンセス・ダイアナ妃」の葬儀は英国の歴史と伝統の再認識を世界に迫るものであった。「現代英語」で伝えられる葬儀の模様と解説に、世界の多くの人々が同時に耳目をそばだてた事実は、今更ながら、国際社会、情報社会における共通語としての「英語」を実感させる出来事であった。
 21世紀の世界を展望するに当たって、米国・英国の文学、歴史、文化を、つまり、英米の伝統を体系的に理解することは不可欠である。世界に生成する多様な英語のモデルである英米の言語を科学的に分析・理解し、かつ、その運用能力を習得することは国際社会に参加する基本条件でもある。本学の英語英米文学科は過去20年間にわたり、前述の知識と技能を備えた学生を育成するために、日々の研究・教育活動に邁進してきた。本学科の使命は、情報社会の出現など、新たな社会的な二ーズに対応したカリキュラムの変更はあっても、決して揺らぐことはない。
 現在の英語英米文学科は「札幌文科専門学院」に端を発し、1950年には本道では最初の英文科であった。札幌短期大学英文科に引継がれ、さらに、1977年には札幌商科大学人文学部英語英米文学科として新たな門出を飾ったのであった。それ以来、英米の言語、文学、歴史、文化に通じ、文化の向上に資するユニークな人材の育成に貢献してきた。1986年にはLL教室が設置され、また、1997年には北海道では最初のCALLシステムが導入され、英語力向上を目指す学生たちに積極的に利用されている。1984年度から始まったカリフォルニア大学デビーズ校での海外研修は現在も継続しており、さらに、1996年度からは米国パシフィック・ルースラン大学への半期留学制度も利用できるようになった。
 このような20年間の実績を踏まえ、本学科は、国際社会、情報社会での世界共通語である「英語」を基盤とし、英米の広範な領域を体系的に網羅する研究と教育活動を推進してゆかなければならない。

 地球社会におけるコミュニケーションの手段としての「英語」と近代社会を構築し、現代社会に強力な影響力を持つ「英語」文化を通して特にアジアを含めた国際社会の発展と平和に貢献する人材を育成することこそが、21世紀を拓く札幌学院大学人文学部英語英米文学科の使命である。


人文学部20周年特集

人文学部の入学試験と受け入れ学生の動向

 人文学部は20年を経る中で様々な教育課題に取り組んで来たが、その中で最大の問題の一つは、学部の教育志願者の受け入れの問題である。通常それは入学試験の問題といわれているが、人文学部もその在り方は大きく変ってきた。ここでは現在の入学試験制度とその近年の動向を紹介する。また、学部の教育希望者の受け入れは入学試験を経る者に限られない。人文学部がどのような形態で、どのくらいの教育希望者を受け入れて来たかについても紹介しよう。

定員・志願者・入学者

 人文学部は1977年に本学で2番目の学部として開設され、人間科学科100名、英語英米文学科50名の定員で出発した。学部開設以来、しばらくは志願者は定員の2倍〜3倍程度で推移していたが、全国的な大学進学者増も反映して、8O年代後半から人文学部でも志願者の増加が見られた。それを受けて92年には人間科学科50名、英語英米文学科20名の臨時定員増(1999年まで)を行い、募集枠を拡大した。それに対応するかのように、人文学部の志願者は90年代に入って急増し、定員に対する志願者数は人間科学科のピーク時では12.1倍(95年度の名目倍率)、英語英米文学科では14.O倍(93年度の名目倍率)にまで増加した。
 しかし、その後、18歳人口の減少に伴う大学志願者の減少を反映して、徐々に志願者の絶対数は減少しているが、その減少の中心は一般入学試験志願者であり、推薦入試の志願者数は依然としてピーク時の水準を維持している。

1年次入学者の特徴

 本学部の入学者の特徴をみると、まず年により入学者数にバラツキが見られることである。これは一般入試志願者の入学手続者の数に変動があるためで、必ずしも毎年一定数の入学者にならないことが、受け入れ側の悩みとなっている。現浪比では浪人比率は年々減少しており、推薦志願者の多さと共に現役生の志願者が多いのが特徴である。男女比率では90年代に入っての志願者増加の大部分は女子の増加によるもので、従って入学者の女子比率も増加している。ここ数年は英語英米文学科ではほぼ60%、人間科学科でも97年度には60%に達した。人文学部は本学在籍の女子学生のほぼ60%を占めている。今後もこの傾向は続くと思われる。また、出身地別の内訳は、本州出身は人間科学科で25%前後、英語英米文学科では20%前後と他大学や他学部に比べても比較的多い。反対に札幌出身者が相対的に少ないという結果になっている。社会人入学者の男女別、職業別推移をみると、ここでも女性の比率は高く、主として医療、福祉系の職業経験者が多い。外国人留学生はあまり多くはないが中国、韓国からの留学生がいる。

教育希望者の様々な受入れ

 ところで、人文学部では教育対象となる学生の受入れを、多様な形態で行っている。それは入学志願者(学部教育希望者)の多様性を尊重し、多様な方法で入学できる道を開くという学部の基本的方針によっている。1年次入学者に対しては、通常の一般入学試験(人間科学科は3科目、英語英米文学科は2科目試験)の他に、一般公募推薦(高校長推薦)=推薦A、スポーツ特別推薦=推薦B、指定校推薦、の3つの推薦がある他、社会人特別試験(面接と小論文)、外国人特別試験(面接と小論文)がある。このうち、社会人特別入試は近年は10名前後の志願者の中から4〜5名が入学しているが、人間科学科では最大20名の受け入れ枠を設定し、積極的な受験を希望している。また、英語英米文学科でも97年度より受け入れを始めた。3年次入学者に対しては、本学の他学部・学科に在籍していた者が、人文学部の学科に移籍を希望する場合の転学部・転学科試験(専門分野科目)、他大学、短大、(特定の)専門学校の卒業生又は在学生が、人文学部に入学を希望する場合の編入学試験(語学、専門分野科目)がある。他大学からの編入学希望者も増加傾向にあり、人文学部も積極的に受け入れている。さらに人文学部では、本学他学部学生の資格課程履修希望者、人文学部の専門科目で他学部が指定する科目の履修希望者の受講を認めており、履修者は年々増加している。
 その他に、特別の研究目的がある者に対しては、指導教員の個別指導をうける研究生(原則として1年間)、特定の科目の単位修得を目的とした科目等履修生、特定の科目の聴講を目的とした聴講生、公開講座の受講生などの諸制度を設け、一般市民にも多様な目的に合った教育機会の場を提供している。
 また、学部付設の特別研究施設として95年に開設された心理臨床センターでは、心理臨床の専門的研究研修を目的とした研修生を受け入れている他、毎年学校現場の教員を対象にした公開講座を開催し、教育現場での心理的問題の理解を深めるための様々な講義を組んでいる。
 このように本学人文学部は人間科学科、英語英米文学科の2学科とも、多様な学習目的と教育需要に対処すべく、多様な形態で学生・受講生を受け入れ、種々の教育システムを整えている。そのことは多種多様な学生・受講生の存在による、学生相互の豊かな交流を可能にし、学生の潜在的能力の拡大を促進にしていると思われる。
 人文学部はこの多様な構成によって、様々な可能性が生み出されているといえよう。


人文学部20周年特集

人文学部の卒業生と進路

卒業と卒業率

 人文学部は、1997年3月に、第17期の学位(人文学士)取得者(卒業生)264名を送り出した。これで、人文学部の第1期からの卒業生合計は、3311名となった。その内人間科学科は2304名、英語英米文学科は1007名である。
 また、本学では、学位記授与式(卒業式)は、通常学年度末の3月であるが、その後の卒業単位取得者には9月末に前期末卒業を認めている。本年度の前期末には人間科学科の4名が卒業し、人文学部の卒業生総数は3315名となった。さて、入学した学生の大部分は4年間で卒業するが、総てが4年間で卒業する訳ではない。退学、除籍、意に反して(または意図的に)留年するものもいる。人文学部でも、かってこの退学、除籍、留年が、入学者の40%台に達する時期があり、大きな問題になった。その後教育指導の徹底もあって、退学、除籍の割合は低下し、近年でも10%前後の留年があるが、入学者の卒業率は急速に上昇している。人間科学科の場合、留年の主な理由は最後の難関である卒業論文の未提出にある。

人文学部の就職

 卒業生は全国各地はもとより海外も含めて広がり、その活躍の分野と場所は多彩である。一般的に人文学部は就職と結び付かない、就職に不利といわれる。在学生も卒業後どんな職業、進路に就くのかとよく聞かれるという。例年の就職動向をみる限り、本学の他学部と比べても、企業規模、職種、地域等で大きな差異も遜色も見られない。それは一般企業の求人自体が殆どが学部学科を問わず、人物本位となっていることによる。近年の学科別業種別就職内定状況は、その一端を物語っている。
 しかし、他学部に比して卒業までの就職決定率では、若干の遅れは否定できない。それには理由がある。民間企業への就職希望が少ない、公務員、公共団体職員、非営利的職業、専門的職業への希望者が多い、教員、学芸員、福祉施設職員、病院・医療ケースワーカー)等資格を生かした職業を希望する、民間企業では特定分野(マス・コミ、出版、観光・ホテルなど)に集中する、人文学部の女子比率が高い、などである。これには専門性を生かした就職を、という学生のもっともな期待が現れており、人文学部の進路希望の多彩性を物語る。しかし、この分野は一部を除いて一般企業の求人に比べ、圧倒的に間口は狭く、卒業までの実現例は多くはない。更に根強い女子への差別的求人状況は、人文学部の就職決定率の低さに更に輪をかける。
 このように、卒業までの就職状況では、学生の期待に反して、学部の有利さが際立ってはいないが、卒業1〜2年後に目的を達成したとか、転職して本来の目的を果した例は少なくない。その一端は以下の資格取得と進路の項に示した。人文学部の就職、進路の評価は卒業時点では決まらない。人文学部の就職は、卒業後の回復を考慮すれば、他学部に遜色なく、むしろ多彩な就職結果を実現しているといえる。

資格取得と進路

 ところで、人文学部学生の資格志向は極めて高い。それは専門的資格を進路に生かそうとするためで、他の学部と際立った特徴がある。本学部では教育職員、学芸員、社会福祉主事任用、社会教育主事任用の課程がある。また、心理学科目の系統的履修を前提に、認定心理士の資格も取得可能である。近年の認定者の推移をみると、人間科学科では卒業生の30〜40%が一つ以上の資格を取得していたことが判る。英語英米文学料では教育職員の資格取得の比率が高い。最近英語英米文学料では、留学や語学研修、検定試験講座などの制度が整備され、英語検定の上級資格取得も盛んになった。その他、他学部の課外講座を利用して検定試験を受け、就職に生かすものもある。

1 教育職員

 本学部では高校・中学の社会科又は英語の教員免許を取得できる。1期生以来(97年3月現在)人間科学科では339名、英語英米文学科は228名が教員免許を取得している。その内公立学校の採用試験に合格したか、私立学校に採用され、現在も教壇に立っているのは人間科学科は52名、英語英米文学科は39名である。これには、高校・中学の社会科の他、特殊教育、養護、小学校教員も含まれている。採用枠の減少により教員採用試験は厳しくなり、卒業と同時の採用は人間科学科19名、英語英米文学科15名に過ぎず採用者の40%以下である。残りは、非常勤や臨時の講師をしたり、通信教育等で新免許を取得する等、若干の雌伏期間を経て目的を達成している。
 また、本学で中学・高校の教員免許を取得したが、種々の理由から幼稚園教諭、看護学校・専門学校の教員、予備校・塾教師、フリースクール教師、日本語教師、更に学校事務等となり、実質的に教育現場に携わる者もいる。彼らも教育への情熱の持主であることに変わりは無い。

2 学芸員

 学芸員課程は教職課程と同様、学部開設以来開設されている。現在まで、人間科学科で282名、英語英米文学科16名の資格取得者がいる。その内、学芸員の採用は人間科学科は40名(臨時も含む)いる。学芸員の場合は、かなりの専門的技能・経験を必要とするので、卒業後、臨時、アルバイト等で経験を重ねて、採用枠があった場合に正規職員となるケースが多い。本学部の場合、考古学分野の学芸員の輩出に定評がある。

3 社会福祉主事

 本学では1985年度卒業生から、社会福祉主事任用資格課程を開設、学生の福祉教育の需要に対応してきた。社会福祉主事資格とは市町村職員に採用され、福祉施設や福祉業務の担当者に必要だが、職員採用の条件ではない。社会教育主事任用資格も同様である。資格取得者は、人間科学科253名、英語英米文学科7名である。本学部を卒業して福祉施設職員、福祉関係機関職員になったのは、1985年度以降で75名を越す(大部分は社会福祉主事資格取得者)。それ以前の卒業生にも福祉関係職員が確認されおり、全体では100名に近い。
 今も社会福祉施設職員(一部を除き)に資格義務はないが、福祉需要の拡大と水準の向上、福祉教育の体制整備とあいまって、10年程前から福祉専門職として社会福祉士、介護福祉士が国家試験による資格取得が必要となった。現在本学ではこの受験資格付与はできないが、卒業生の中には独自に受験資格を取得(養成学校や通信教育、講習会など)して、合格する者が出てきた。現在、10名の合格者がいる。また介護福祉士も数名確認している。これも卒業生の卒業後の努力の結果である。

4 社会教育主事

 社会教育主事任用資格の取得者は95年度卒業以来、人間科学科164名、英語英米文学科4名である。この資格取得者が、実際にどの程度主事として任用されているかは把握出来てはない。本学部でも市町村職員の採用者は少なくないが、殆どは一般行政職員となっており、社会教育の実務担当者は極めて少ないと思われる。

5 臨床心理士・認定心理士

 認定心理士は学科のカリキュラムから、心理学科日を系統的に履修した場合、申請により日本心理学会より認定される。現在11名が認定を受けているが、これは何かの職業を保証するものではない。臨床心理士は、心理臨床家の需要の拡大とその水準向上を図る目的で、日本臨床心理士認定協会が認定している。関係学会では将来国家試験による専門資格を目指して検討中である。従来は、大学で心理学を修め、卒業後病院等で5年以上の心理臨床経験と臨床報告書を提出した者を審査して、認定協会で資格認定が行われていた。しかし、今年の学部入学生からは、大学院修士課程修了以上が最低条件となった。本学部卒業生からは、既に6名の臨床心理士が誕生している。これも卒業後の努力と研鑽に上る成果の一端である。
 臨床心理士は今後医療、福祉、教育などの分野で活躍が期待されている。文部省が今力を入れている学校カウンセラーも、臨床心理士の活躍の場である。本学部の心理学スタッフの内4名が臨床心理士資格を持ち、心理臨床の活動拠点の心理臨床センターも整備され、大学院教育の条件も充分に備えた、道内で最も臨床心理学教育の充実した大学として、専門家の間では期待されている。

6 大学院などの進学

 人文学部の卒業後の進路は、これらに限らない。学部教育を終えて、更に進学を目指すものもいる。大学院進学は今までに10数名を数えているが、決して多くはない。進学先は、北海道大学、北海道教育大学、千葉大学、上越教育人学などの国立大学の大学院ほか、桜美林大学、龍谷大学、日本福祉大学、札幌学院大学(法学研究科)などの私立の大学院に進学している。また、北海道教育大学、宮城教育大学、横浜国立大学、千葉大学などの専攻科や障害教育教員養成課程には20数名が進学し、卒業後はほとんどが、特殊教育教員や養護教員の資格を得て、教員や施設指誉貝になっている。以上は主に人間科学科の場合であるが、最近は英語英米文学科からも大学院の進学者が出て来た。中には留学を契機に、アメリカの大学院に進学を希望するものも出ている。


―学園創立50周年・人文学部開設20周年記念論文集―

人文学会紀要第60号を特集号に

 この程、本学人文学会では学園創立50周年・人文学部開設20周年を記念して特集号「人間科学の現状と課題」(紀要第60号)を発刊することができた。こうした直接「人間科学」と銘うった特集号としては1983年12月に「特集―人間科学研究(1)」(論集第34号)が公けにされており、その2年後の85年12月(本紀要第38号)に「特集―人間科学研究(2)」を発刊するにいたっている。それから11年後の本年3月にときあたかも人文学部開設20周年にあたって本特集号を公けにすることができたのは幸いであった。この人間科学の問題は全国3番目の人間科学科として発足した本学科にあっては教育・研究の両面にわたる重大問題であったから同学の学部・学科の研究交流なども鋭意続けられてきているのである。さて、今回の特集号には9本の特集論文が掲載されている。
 紙数の関係もあって内容を紹介することができないのは残念であるが「人間科学」についての原理的、包括的問題や人間科学と人間学、人間科学の系譜や方法の問題、個別専門的分野からの人間の探究など多彩な論文集にまとめることができたのは意義深いことであった。こうしたことができたのは学会員以外の方々、水島恵一(文教大学)、春木豊(早稲田大学)、田村一郎(鳴門教育大学)の諸氏から寄稿をいただいたことも大きかったのである。この場をかりて御礼を申しあげたい。
 さて、「人間科学」に関する研究と教育は相変らず我々にとっては困難な課題として存在している。さらに探究を深めるためにも御一読をすすめて紹介としたい。

(北爪真佐夫)


人文学部20周年を祝う会を開催

 8月23日、札幌グランドホテルで、人文学部20周年を祝う会が開催された。今回の集いは同窓生と教職員が共同して組織する「祝う会」が主催して行う、記念事業の中心的行事である。当日は1期卒業以来の同窓生80名余を始め、来賓、退職教職員、現職教職員など130名程の参会者が集い、予定の会場が狭く感じられる程であった。
 会は小泉「祝う会」代表(人間科学科1期生)の開会宣言、中野人文学部長の挨拶の後、伊坂理事長、杉本学長、横山文泉会会長が祝辞を述べられ、佐藤常務理事の音頭で乾杯して懇談に入った。
 その後、1977年の学部開設以来の人文学部の歩みがスライドで紹介され、参会者は学部開設間もない頃の、そして最近の学部の様子に、それぞれの感慨で見入っていた。続いて各分野で活躍している同窓生の近況報告、教職員の思いで話しなどが披露され、聴き入る人々も時の流れをかみ締めていた。
 そして、今年米寿の鈴木朝英先生、85歳の市原初男先生がそれぞれフランス語、ロシア語の歌を披露されるころには、会は佳境に入った。会も進んだところで、出席出来なかった同窓生や教職員からのメッセージが紹介された後、現在の校歌の作曲者青木氏(人間科学科2期生)のメッセージも紹介され、その校歌を全員で斉唱した。
 予定の時間は瞬く間に過ぎ、なごり惜しくも蔵田商学部長の発声で乾杯、宮本「祝う会」事務局長(英語英米文学科一期生)の閉会宣言で、初めての人文学部同窓会を閉じた。

(廣川和市)


人文学部20周年記念

第三回フォーラム「人間科学を考える」開催される


 さる9月13日(土)と14日(日)の二日間、本学において札幌学院大学人文学部創立20周年記念、第3回フォーラム「人間科学を考える」が開催された。このフォーラムは、人間科学部をもつ全国の8大学が呼びかけ人となって、一昨年から人間科学にかんする学問論的な議論を深めようという趣旨で始まったものである。
 第1日目は、北海道大学総長の丹保憲仁氏による「文明の転換点に立って−人間科学への私の提言」と題する記念講演があった。記念講演にふさわしい壮大なスケールの示唆に富むお話であった。続いてG館8階ラウンジで行われた懇親会では、石狩平野に沈む夕日と北海道料理とに感嘆の声があがった。
 第2日目は、まず個人研究発表が行われ、本学の奥谷浩一が「人間科学の系譜と方法」、細見和之氏(大阪府立大学総合科学部)が「哲学と人間学」、圓岡偉男氏(早稲田大学人間科学部)が「人間科学の行方」と題して報告を行った。人間科学の歩みと在り方にかんする知見が各々の立場から披瀝された。
 昼食をはさんで最後に「人間科学と大学教育」を共通テーマとするシンポジウムが行われ、まず早稲田大学人間科学部長の濱口晴彦氏が「早大人間科学部創立から人間科学部宣言まで」、次に常磐大学人間科学部長の安田健次郎氏が「人間科学の教育−現状と課題」、最後に本学人文学部長の中野徹三氏が「人間学概論Aの講義の経験から」と題して報告を行った。各大学による人間科学の具体的な教育実践とその経験が興味深く報告された。次回は文教大学で再会することを約束して散会した。
 同フォーラムはこれまで経験交流を主たる課題とし、半日だけの催しであったが、今回は研究発表も行われて規模も拡大し、多少とも学会に近い性格をもたせることができたのは大きな収穫であった。参加人数はのべ50数名であり、市民、それに高校生からも参加があった。

(奥谷浩一)


人文学部20周年記念

米倉斉加年公演の夕べ


 9月22日人文学部20周年記念事業の一つとして、劇団民芸・米倉斉加年の芝居が、新装なった本学50年館SGUホールで上演された。
 午後6時半、待ちかまえた会場にむかって米倉斉加年は一座とそのスタッフ紹介をしながら、「もう芝居は始まっております」と呼び掛けた。そうか、これは芝居『喜劇・娘の結婚』と朗読『おとなになれなかった弟たち………』へと続く今夜の舞台のプロローグなのだ。それぞれのプロローグを胸にこの夕べSGUホールを満たした観客を舞台へ引き寄せようと、今、彼は観客に魔法を掛けているのだ。こうして私達は、喜んで彼の魔法に身を委ね、彼等の演じる喜劇を楽しもうと手ぐすねを引いて待ち構えたのである。
 このような良質の笑いを誘う芝居を久し振りに観たような気がする。娘と息子の幸せをねがって懸命な人々の誤解が生む可笑しみ、『喜劇・娘の結婚』というハッピー・エンドに保証されて安心して笑っていられる快さを私達観客は満喫した。
 東京下町に住む頑固一徹、職人気質の摺師平助と青森から上京した考古学者森藤教授との取り合わせ、いわば善意に満ちた人々の異文化間コミニュケーションに生ずる相互理解のずれが、観客の共感を呼んで優しい笑いを引き出したのだ。これは役者・米倉斉加年の存在感と役者達の醸し出すハーモニー、観客心理を熟知した脚本・演出と米倉斉加年の腕の冴に帰する。とりわけこの快さは殆ど次の台詞までも予知し得る特権を観客に与え、観客をある種の優越感で満たしたことにあったようだ。確かに、待った甲斐のある一時であった。
 朗読『おとなになれなかった弟たちに………』はこの公演のエピローグと呼べるのだろうか。たった50年前には栄養失調でお乳の出ない母親とお乳を貰えない乳飲み子の話はありふれた日常に潜んでいたのだ。
 日本中にヒロユキが居て、おとなになれなかったヒロユキを心に抱いて生きた50年を米倉の朗読は眼前に蘇らせたのだ。願わくば、ヒロユキを知らない若者達に世界中のヒロユキが見えますように!
 学部20周年を記念したこの公演がいつかまた、彼等の心に蘇って魔法を掛けてくれますように!
 こうした願いが素直に思い浮かぶ公演であった。

(及川英子)


1997年度 新入学生の合宿オリエンテーション

 4月8日〜9日、新入生合宿オリエンテーションが開催された。人文学部ではまずD館201教室に新入生全員が集合、石狩支庁地方部社会福祉課主任の西村正樹さんの講演を聴いた。
 西村さんは本学商学部在学中の1979年、クラブ活動の合宿中の交通事故で車いすの生活を余儀なくされるにいたった方。事故後の心境、一念発起して車いす第一号の道職員となるまで、その後、車いすバスケット、車いすマラソンの体験を経て立ち直り、その過程で障害者の人権に目覚め、国際的な障害者運動に参加するにいたる心の軌跡と奇跡を気負うことなく話され、深い感銘をよんだ。
 その後バスに分乗して定山渓・鹿の湯ホテルヘ。着いて早速にクラス別企画、例年のことながら補助学生の先輩たちの八面六臂の活躍に助けられて自己紹介やゲームなど。そのあとホールでの食事。「思ったよりも豪華!」と喜びの声がささやかれる食卓で若い胃袋はフルに活動。夜は恒例の履修等の相談コーナー。今年は特に臨床心理士の資格取得についての質問が多かった。
 翌朝は学部別交流会。なんとも早や単純なゲームの連続で教員にはいささかキツイ時間であったが新入生たちは喜々としてゲームを楽しんでいた。このころには互いにうちとけて和気藷藷の雰囲気。終って記念撮影。
 その夜にクラス別のコンパを開いたところでは、かなりの盛り上がりがみられ、その歓声は、新入生の親睦を目的とした合宿オリエンテーションの成功を物語っているが如く聞こえた。

(布施晶子)


1997年度前期末
学位記授与式

 今年度の前期末学位記授与式が、9月29日に本学で行われた。今年の前期末卒業生は全学部合計では28名となり、それぞれの学部ごとに学部長から学士の学位が授与され、めでたく卒業となった。
 人文学部では、人間科学科が4名のみで、英語英米文学科は卒業生はいなかった。
 授与式の後に、G館の特別食堂で大学の心尽くしの祝賀パーティが開かれ、学長、学部長らからそれぞれ励ましの言葉が贈られた。新卒業生らは学位記を手に、心新たにしてキヤンパスを後にしていった。



人文学部20周年記念

事業資金の募金に御協力を

 人文学部20周年記念事業のための募金活動を行なっています。主として「20周年記念誌」発刊の費用にあてます。是非力下さい。御協力いただいた方には「記念誌」を寄贈させていただきます。

・金額1口 3,000円以上(二口以上をお願いします)
・募集期間 98年3月末
・送金先 郵便振替 人文学部20周年を祝う会
 0750-8-5546
・「祝う会」実行委員まで

(人文学部20周年を祝う会)


人文学部20周年記念

   CALL一般公開・講演会・シンポジュウム(予告)

主催 人文学部英語英米文学科

   日時 1997年10月18日(+)
      午前10時半より午後5時半まで
   会場 本学A館2階CALL教室、およびG館1階SGU記念ホール
      なお、昼食はG館食堂施設を利用できます。
   対象 英語教育関係者、英語教員志望者、英語学習に関心を持つ一般学生、および一般市民

   1)SGU‐CALL教室一般公開
     午前10時半より12時までA館2階
     講師:岡崎清(札幌学院大学)
    北海道で初の本格的なCALL(コンピュータを活用した英語学習システム)の実演とBBC英会話ソフトの紹介。

   2)講演会午後1時半より2時40分までG館1階
     演題:ボーダレス時代における世界語としての英語
     講師:ジョアン・マコーネル博士(スタンフォード大学)通訳つき

   3)シンポジュウム
     午後3時半より5時半までG館1階
     テーマ:変貌する英語学習環境とコミュニケーション
   −国際化とマルチ・メディア化をふまえて−
     司会:岩城 禮三・及川 英子(札幌学院大学)
     講師:飯塚 成彦(白鴎大学)  児童英語教育・早期英語教育の立場から
        羽鳥 博愛(聖徳大学)  マルチ・メディアを利用した外国語教育の立場から


人文学部夏期集中講義


●人間科学科
第17回公開講座
 北海道文化論「北海道と沖縄」

 例年公開講座として行われる夏期集中講義「北海道文化」論は、回を重ね今年で17回目を迎えた。共通テーマは「北海道と沖縄〜地域文化のアイデンティティを探る」で、8月25日から30日まで行われた。テーマと講師は以下の通りである。
・「近代化の中の北海道と沖縄〜差別と同化をめぐって」永井秀夫(北海学園大学教授)
・「生活文化にみる沖縄と北海道」宮良高弘(札幌大学教授)
・「住民意識と自治の形成〜北海道と沖縄のかたち」山畠正男(礼幌学院大学客員教授)
・「アイヌ ラックル カムイ エカシと北海道」加納 沖(トンコリ奏者)
・「沖縄にとって〈日本=ヤマト〉とはなにか」新川 明(ジャーナリスト・元沖縄タイムス社長)
・「周辺からみた日本社会〜国民文化の形成と地域文化の対抗・哀退・復権」波平勇夫(沖縄国際大学教授)
 この講座は、日本の北と南の端にあって、極めて特異な存在である北海道と沖縄の共通性と異質性を比較対照し、日本における北海道(沖縄)の独自の位置と性格を探り、日本社会の在り方を考える所に目的があった。
 講座では沖縄から新川氏と波平教授を迎え、沖縄出身の宮良教授も加わって沖縄の歴史と文化が熱っぽくかつ淡々と語られる中で、沖縄文化の独自性と今日の沖縄問題の根深さが浮き彫りになった。
 一方北海道については永井・宮良・山畠の各教授が、日本の近代史における北海道と沖縄の差別と同化の問題、北海道生活文化の形成過程、県民意識の特異性、北海道におけるアイヌの問題等を取り上げた。
 また加納氏は一人のアイヌとして、今年成立した「アイヌ新法」の曖昧さと歪みを国際的視点も交えて鋭く批判しつつ、アイヌ文化の可能性を熱っぽく語った。またG館SGUホールでアイヌ民族楽器トンコリの特別演奏をしていただいた。学生らは独特の音色と殆どが初めて聞く歌と演奏に、熱心に耳を傾けていた。
 北海道と沖縄の比較論は、日本社会を単一的支配的文化に還元せず、多面的かつ多様な視点から理解する手掛かりを与えてくれた。
 今年も市民の方々が熱心に聴講され、質疑にも積極的に加わっていただき、講義を盛り上げていただいたことを感謝したい。

(酒井恵真)



社会学特講 「イギリスの民族問題」

 8月25日から30日にかけて社会学特講の集中講義が開催された。講師は東京女子大学の佐久間孝正教授。佐久間教授は『ウェーバーとマルクス』『英国の生涯学習社会』『イギリスの多文化−多民族教育』をはじめ社会学史、イギリス社会研究の分野で著名な研究者である。
 集中講義のテーマは「イギリスの民族問題」。おりしもスコットランドでの独立議会の設置をめぐる投票結果が報道されたときでもあり、アップトウディトな問題提起となった。
 教授はイギリスの民族問題を「古い」民族問題と「新しい」民族問題に分け、前者ではスコットランド、アイルランドそしてウエールズとイングランドの関係を軸に、地方分権・ナショナリズム・宗教・教育等の領域をカバーされたダイナミックな講義を展開された。
 後者ではイギリス社会とアフロ・カリブ系・南アジア系そして中国系の移民の問題に焦点をあて、その歴史・文化・社会関係等をめぐる知見を話された。
 総じて、一国における外国人の排除と同化、ナショナル・アンデンティティ形成がかかえる基本的な課題等にせまる興味ぶかい講義の展開がなされ、聴講した学生たちからは「学問の醍醐味を味あわせていただいた」との声が聞かれた。

(布施晶子)

●英語英米文学科
 アメリカ特殊研究B
刺激に満ちた「米国の黒人問題の現状と課題」

 英語英米文学科の本年度の夏期集中講義は、西出敬一教授(徳島大学)によりアメリカ特殊研究B「米国の黒人問題の現状と課題」のテーマで8月25日から31日まで行われた。今年3月まで13年間本学に在職された西出教授は、本学英語英米文学科のアメリカ研究コースの礎を築いたベテラン教員、黒人史研究者である。
 講義は、現代米国社会の人種差別問題を様々な角度からとらえようとするものであった。白人と黒人の混血のアイデンティティの問題、バス通学措置による黒人・白人の居住分離化の進展、カリフォルニア州でのアファーマティブ・アクション廃止への動き、歴史の遺産としての黒人史、など主に人種問題の現状と今後の展望が、関西弁による氏独特の語り口でユーモアを交えながらわかりやすく説明された。
 合間に、教授が米国アトランタに留学で一年間滞在された時の数々の経験についても話され、受講生はますます深刻化する人種差別について知的関心を深めると同時に、海外留学に際して必要な心構えをも学び、実に刺激に満ちた有意義な講義であった。

(中川正紀)



人間科学概論A特別講演会

 毎年恒例として行われている「人間学概論A」の特別講演会(公開講演会)が、今年6月1日に開催された。講師は「国際先住民年」(1993年)にもアイヌ民族問題の講師としてお願いした北海道ウタリ協会札幌支部文化部長の小川早苗氏で、今回のテーマは「先住民族としてのアイヌ民族の現状について−アイヌ新法とその問題点−」であった。
 小川氏は80年代に当時の中曽根首相が「日本は単一民族国家である」と発言した時、首相に公開質問状を送り、この問題についての世論を大きく変える役割を果たされた方であり、私とはお互いの子供が通う保育園の父母の会以来の知り合いであった。(しかし、当時の私は小川氏がアイヌ民族の一員であることを知らなかった)
 前回の氏の講演は、アイヌ民族の一員として受けた差別の苦しみと、そこからの自覚と運動への道を、ご自分とお子さんの生活史を通して切々と説かれたものだった。今回は今春の国会で「アイヌ新法」が通過した情勢を踏まえ、この法律とアイヌ民族の今後について論じられた。「アイヌ民族は先住民」と認めることをどこまでも回避し、差別の根源に追ることなく、「アイヌ文化」の保護を上からうたうこの法律の立場を、時には語気鋭く批判された氏の講演は、人間科学科一年の学生諸君に、強い感銘を与えるものであった。
 「初めてアイヌ民族の方を見、お話しを聞き、私の故郷の部落問題と思い合わせて、改めて人間が人間を差別することの罪の深さをしみじみと感じました」という本州出身の学生の感想文は、「人間」を見る眼の深まりをよく物語っている。

(中野徹三)


北海道文化論第13集
『アイヌ文化の現在』が発刊される

 昨今は「自然との共生を自らのアンデンティティの重要な要素とする」などという偏ったアイヌ民族・文化観が力を得つつある。しかし、アイヌ文化の現在そして未来は、近現代の文明との調和を図りながら現在まで続けられてきた「アイヌ文化」とは何かを探るアイヌ民族自身の努力を抜きにして、語ることができない。
 共著者のうち秋辺日出男氏、大谷洋一氏そして計良智子氏は、それぞれが自らの民族文化の伝承に取り組むようになった経緯および自己のアイヌ文化観について述べた。とくに秋辺氏と大谷氏は、これからのアイヌ文化の核となるものは何かをめぐって突っ込んだ対談を行った。本田優子氏は、アイヌ語を学ぶ小中学生の姿を紹介し、彼らにとってのアイヌ文化の位置について考えを述べた。
 小川正人氏は伝統的なアイヌの儀式であるイオマンテ(熊送り)の近代以降のありようについて主に文献資料に基づいて論じた。中川裕氏は自身の調査に基づいて、サハリンの先住民族ニブヒの文化・言語復興運動をアイヌの場合と比較しながら紹介した。奥田はまとめとして、隣人である和人としてアイヌと和人の文化をどう捉えるべきかを論じた。本書のもととなっているのは3年前に開催された公開講座である。この間アイヌ文化を取りまく情勢は大きく変わった。しかし、本書の随所に指摘されている論点は今なおまったく色あせていない。

(奥田統己)


「北海道文化論」は第13集に
 人間科学科の専門科目「北海道文化論」は、夏期集中講義として回を重ね、今年で20回目、公開講座としては17回目になる。このシリーズは人文学部編、本学生活協同組合の発行で出版され、現在のところ13集まで発刊されている。
 《北海道文化論シリーズ》
第1集 北海道民衆の歩み
第2集 北海道の文学
第3集 北海道の民族と文化
第4集 北海道の農業と農民
第5集 北海道の少数民族
第6集 北海道のマスコミと人間
第7集 北海道・森と木の文化
第8集 北海道の現代芸術
第9集 アイヌ文化に学ぶ
第10集 北海道の村おこし町おこし
第11集 北海道とアメリカ
第12集 北海道の子供の生活・文化・教育
第13集 アイヌ文化の現在

 いずれも、本学生協や一般の書店でも、発売されている。
 (価格は¥1,500〜¥1,900)



大盛況のCALL研究会

−英語教育関係者の注目の的−

 本年4月、本学に導入された北海道初の本格的CALL(コンピュータ支援による英語学習システム)は、全学共通科目英語の授業で最大限に活用され、多くの学生が新たな意欲をもって英語学習に励んでいる。また、最先端のネット・ワークシステムとマルチ・メディア教材が結びついたこの学習システムは、道内外の英語教育関係者から熱い関心と期侍が寄せられている。
 7月5日に札幌圏の英語教育関係者を対象に本学のCALLシステムを紹介する研究会を開催した。北海道大学をはじめ、北海道教育大学、北星学園大学、北海学園大学、札幌大学等、また、江別、札幌市内の高等学校の英語教員およびLL担当者が集まり、CALL教室48席が満席となった。
 午後3時から始まった研究会では本学の中村敦志教員からSGU‐CALLシステムの目的とその構成がパワーポイントを利用して解説され、一瞬に48台の個機に映像情報を送るネットワーク・システムの高速機能を体験した。
 続いて、このCALLシステムの要とも言える英語学習ソフト、BBC制作「New English Course」の内容と様々な機能が紹介され、参加者も自分で操作してコンピュータを相手に英語学習を試みた。

 午後4時からG館の会議室に会場を移し、本学の岩城禮三教員による「LLからCALLへの展望」と題した講演、そして、宮町誠一教員によるCALL授業の実践報告があった。質疑応答では活発な議論がなされたが、コンピュータを活用した個別学習における時間投資と学習効果の相関関係が関心の中心となった。
 今後もこのシステムを広く一般に公開し、道内の英語教育実践者からのご意見を頂き、国際社会に通用する英語教育を実現するシステム作りに貢献してゆきたい。

(宮町誠一)


心理臨床センター

第3回「公開講座」を開催

 小学校から高等学校までの教員を対象とする公開講座『子どもの心の問題とその対応』が、7月26、27日の両日にわたって本学で開催された。本年は募集定員を70名に拡大したが、社会を驚かす深刻な子どもの事件が発生したことも影響して、7月に入ってから参加申込みが殺到した。結局、今年も相当数の申込みをお断りすることになった。
 初日には、子どもの心理的問題への理解を深めることを目的として、「学校現場でみられる精神医学的な問題」「家裁の現場からみた子どもの非行」「思春期登校拒否の理解と援助」などの講義が行われた。
 2日日には、子どもの心の問題に対する対応について、家族関係、仲間関係、教師との関わりという視点から論じられた。午前の部では「子どもの心の健康と家族関係」、さらに午後の最初のセッションでは「カウンセラーからみた学級の力」という講義が行われた。
 そして、最後に、日本女子大学の鵜養美昭助教授が「先生方が進めるこころ育て≠フチームワーク」という演題で、現場教師にとって非常に興味深い内容の講演をされた。
 今夏の公開講座も盛会のうちに終了したが、本年10月12日には、公開講座の第2部として「カウンセリング事例研究会」が開催される。これには夏季講座参加者の大部分が出席される予定である。

(清水信介)


 

資格取得者

 

《社会福祉士国家試験合格者》(97年5月発表)
白州依津子(80年度卒杉山ゼミ)北海道・高齢者保健福祉課勤務
杉本 賢治(87年度卒小山ゼミ)潟Wェネラルサービス勤務
菊地 一朗(90年度卒山田ゼミ)医療法人渓仁会・社会福祉法人南静会勤務
 本学卒業生の社会福祉士試験合格者は、10名(人間科学科9名、法学部1名)となった。

《認定心理士資格取得者》
海木外希子(95年度卒小山ゼミ)
 本学部卒業生で認定心理士の資格取得者は、11名となった。



社会調査室が研究雑誌『調査と社会分析』を創刊

 人文学部社会調査室は学部の開設3年目(1979年)に、人間科学科の専門科目である「社会調査実習」を行うための施設として設置された。しかし、社会調査室関係者の間では、社会調査室を学生の教育上の施設に止まらず、研究活動の拠点としての機能も整備していきたいという願いがあった。この度、その整備条件の一つとして、社会調査室が編集・発刊の責任主体となって定期刊行物としての研究雑誌『調査と社会分析(RESEARCH AND SOCIAL ANALYSIS)』を創刊することになった。
 この研究雑誌の創刊は、文部省の科学研究費助成を受けた社会調査室のスタッフを中心とする共同研究(地域社会史研究会)のスタートが直接のきっかけになっているが、今後は学部や大学の枠を越えて、社会調査を研究方法として重視する研究者の研究発表と交流の場となることを目指している。
 創刊号では地域社会史研究会のメソバーによる3つの論考と、同研究会が主催した特別研究会(第一回)での名古屋大学情報文化学部の貝沼洵教授による研究報告「『地域像』の転換・今日における『地域』研究に関する一試論」と、それをめぐる討議内容を収録している。



SGUボランティア連絡会誕生!

 昨年から経済学部、人文学部の学生が中心となって設立準備に当たっていたが、本年5月にSGUボランティア連絡会が本学に誕生した。
 阪神大震災以降、ボランティアに対する社会的な関心と要請が高まる中で、ボランティア活動に意欲を持つ一般学生も増えてきている。このような社会的ニーズを受け止め、学内のボランティア活動希望者に適切な情報と自己啓発の場を提供しつつ、自らもボランティア活動をするのがSGUボランティア連絡会である。
 本年5月に発足以来、毎週水曜日の昼体みに、A館2階にある国際交流室にて会合を重ね、主に周辺の福祉団体から入ってくるニーズに応えるべく活動を続けている。現在10数名の学生会員と若干の教員が顧問となって江別社会福祉協議会などからの要請に応える努力を重ねている。「あいらぶクリーン札幌」で薄野周辺の清掃活動に参加したり、「第8回厚別区民まつり」では模擬店を担当したりして、地域住民との出会い、そして、新しい自分の発見を体験している。また、7月には講師を招いて、ボランティアの精神とその社会的意義について認識を深める機会を持った。大学生にとってのボランティア活動はまさに、輝く自己の創造プロセスといえる。21世紀の高齢社会を担っていく若者は、社会的なニーズに応えて、人間としての共感に目覚め、自発的に有効な手段を模索し、そして、目前の課題に積極果敢に対処する人間なのである。
 発足以来の半年間に、多くの要請がSGUボランティア連絡会に寄せられている。公共施設の清掃活動や、地域社会の住民活動への参加に加えて、福祉施設での援助、自立生活者への介護、高齢独居生活者への24時問支援体制への協力など、実に多様な活動要請が学生のボランティア精神の高揚と実践を求めている。また、札幌市内の市民団体から会の育成を支援したいとの申し出も寄せられている。
 ボランティア活動という人々との触れ合いを通じて、新しい自分の可能性にチャレンジしたい学生は前述の会合に直接参加するか、随時掲示されるボランティア情報に関心を向けるか、あるいは、A館5階の宮町研究室のドアを叩いて欲しい。
(宮町誠一)



「英検」に挑戦を!

 実用英語検定試験(英検)に対する社会的評価が高まる中で、本学でも受験者が増えている。ここ2年間の受験者・合格者は別表にみる如くである。受験者は短大・大学レベルといわれる2級」に集中しているが、徐々に「準1級」受験者も増え、今年は2名の合格者を出している。難関の「1級」合格者の誕生も真近かと思われる。
 これをサポートしようと本学でも「英検」準備講座が開かれているが、利用者は多くない。今年から「準1級」講座も開かれている。
 また、昨年から留学希望者のためのTOEFL講座も開設された。活用を期侍したい。



97年度学部教員の人事、研究活動等(4/1〜10/1)

◎留学研修

在外研究員
松本伊智朗
 97年10月1日〜98年9月30日、イギリス、ロンドン大学「イギリスにおける貧困研究の現段階と児童問題」
国内研究員
生田 邦夫
 97年10月1日〜98年3月31日、在宅研究「宗教学的人間学の研究」

◎海外研究出張

坪井 主税
 97年7月24日、8月7日、スイス・オランダ・イギリス
 「ルーサン戦争と平和博物館に関する資科収集」
奥谷 浩一
 97年8月3日〜28日、韓国、韓国語研修

◎文部省科学研究費助成(新規採用)

奥田 統己(奨励研究A)
 「アイヌ語静内方言の文法・語彙の分析と文脈つき語彙集(CD-ROMつき)の作成」
 (97〜98年度)190万円
伊藤亜矢子(奨励研究A)
 「中学校の学級風土と生徒のメンタルヘルス」(97〜98年度)180万円

◎委嘱発令

船津  功
 朝鮮人強制連行実態調査報告書編集委員
 北海道
 97年4月〜99年3月

◎人文学部教員出版物

鈴木 秀一
 福田美喜子、加藤多一他3名と(共著)
 『北海道文化論/第12集/北海道の子供・生活・文化』札幌学院大学生活協同組合、97年3月、1,900円、362頁
奥田 統己
 秋辺日出男、大谷洋一他4名と(共著)
『北海道文化論/第13集/アイヌ文化の現在』札幌学院大学生活協同組合、97年3月、1,900円、335頁
船津  功
 強制連行実態調査委員会編(分担執筆)
『強制連行実態調査報告書』北海道 97年3月
杉山 吉弘
 吉谷啓次と(共訳)
 ジャン=フランソワ・リオタール著『リビドー経済』法政大学出版局、97年4月、4,700円、423頁
・小林 好和
 平山満義編著(分担執筆)
 『質的研究法による授業研究』北大路書房、97年9月、3,200円、318頁


編集後記

 人文学報も7号を数え、創刊以来4年目を迎えた。創刊の意図である「学部の実像と心意気」が伝わるものになっているかと、反省しきりである。
 人文学部は20年の歴史を重ねた。今回は人文学部20周年記念特集を組んだ。小さな歴史とはいっても、その内容は多種多様である。その一端を特集記事として掲載した。
 20年の歴史を振り返りつつ、学部の「設立趣意」を実現しつつあるかを反省する時にきている。そのためにも「人文学部20年史」の発刊が待たれる。
(酒井恵真)
 夏休みが明け、20周年の記念行事が目自押しである。20歳は成人の年齢である。一連の行事が、学部の成長過程と到達点を示し、今後の発展の方向性がアピールされることを期待したい。
(中川正紀)