1999・4・1 No.10


国際高齢者年に寄せて
津田光輝 Mituteru Tuda

10-1.jpg 最近ある集会で、脳溢血で半身不随の妻を10年間介護してきた70歳台の夫が、近頃体力が衰えて食事・排泄・清拭等の身辺介護が大変きつくなったと自らの健康不安を訴え、次のように話していた。
 倒れた当初はすべて一人で介護にあたっていたが、現在は週2回のデイサービスと週2回のホームヘルプ、そして訪問看護と訪問医療を週1回利用でき、介護する者にとって大きな支えとなっている。しかも、年金ぐらしで負担も少ない。
 来年4月に介護保健法が実施されると、これらの介護サービスが受けられたとしても、保険料を含めると月3万円以上の負担となり、生活に大きな影響をうける。
 わが国は、高齢化がきわめて速いスピードですすみ、2025年には4人に1人が65歳以上といわれるなかで、国の福祉政策は家族依存を前提としてきたためきわめて遅れ、介護地獄という言葉さえ生まれた。介護をめぐる無理心中や殺人事件も数多くマスコミに登場している。
 80年代末から、国もようやくゴールドプランや新ゴールドプランの策定に着手したものの、その基盤整備は不十分なまま、介護の財源負担を新たに国民にもとめようというのが、介護保険のねらいといえる。しかも、国は、介護保険法を「社会保障構造改革の第一歩」であるとし、年金・医療・福祉の制度改悪をあいついで行おうとしている。これは、高齢者をめぐり現在すすめられている国際的な動向とは全く逆行するものである。
 今年1999年は、国連が定めた「国際高齢者年」である。
 1982年に「高齢化に関する世界会議」がひらかれ、「高齢化に関する国際行動計画」が策定された。さらに91年「高齢者の国連原則」が採択され、92年には1999を「国際高齢者年」とすることが決定した。高齢化問題の国際的な活動がはじまってすでに十数年を経ている。国際高齢者年のめざすところは、高齢者が安心して尊厳ある生活を送れるよう人権保障を基底とした社会を築くことにある。
 「国連原則」では、独立・参加・ケア・自己実現・尊厳の5つの人権保障原則と18項目の具体的提起を行い、しかも高齢者を受益者としてのみでなく、社会発展の主体者としてとらえることをもとめている。また、国際高齢者年のテーマは「すべての世代のための社会をめざして」とされている。
 これらのことは、高齢者が自ら要求し、行動することの重要さと自ら参加参加して豊かなくらしをきずく努力は、後代の世代の人々の幸せにもつながるものであることを意味し、世代間の連帯をきずき、人権保障確立の流れを発展させることを期待するものである。
 介護保険をはじめ社会保障の転換点にある現在、国際高齢者年の意義について広く国民に理解をもとめ、大きな世論を盛り上げるとともに「国連原則」の遵守を国・自治体にもとめていくことが重要であり、草の根の運動がもとめられている。


1998年度  学位記授与式
人文学部第19期生の264人に学士(人文学)が授与される
 1998年度の卒業生に対する学位記授与式が、3月19日北海道厚生年金会館で行われ、学部卒業生1171名に対して学士号が、大学院修士課程修了者が6名に修士号がおくられた。人文学部からは人間科学科178名、英語英米文学科86名の学士(人文学)が誕生した。
 今年は人間科学科の田村永子さんが全卒業生を代表して答辞を述べた。田村さんは長女も入学していた人間科学科に社会人学生として入学し、母娘が机を並べて大学生活を送ったこともある。答辞では学生時代の思い出と卒業後の抱負を述べ、新たな出発への決意がうかがわれた。
 これにより、人文学部の卒業生総数は3820名(人間科学科2659名、英語英米文学科1161名)となった。
 九八年度の卒業率(卒業対象者に対する卒業者の割合)は、人間科学科87.6%(前年度は85.7%)、英語英米文学科88.7%(前年度84.0%)であった。
1999年度
 入学試験結果 

 99年度の本学の入学試験は11月26日〜27日に推薦入学試験、1月16日〜17日にセンター入学試験、2月7日〜11日に一般入学試験、3月5日に編入学試験、3月8日に商学部U部の二期入学試験がそれぞれ実施された。
 99年度の入試は、近年の18歳人口の減少に加え、今年は経済不況が一層深刻になるという悪条件も加わり、特に私立大学の受験者が大幅に減少しており、大学にとって厳しい年となった。これにたいして本学では九九年度からはセンター試験を全学部で導入し、志願者増を図ったが、大学全体では昨年度の85.8%の志願者にとどまり、ここ数年続いている減少化傾向から脱することは出来なかった。
 その中で、人文学部はセンター試験による志願者を加えると、全体として昨年度に比べて98.8%と若干の志願者減にとどまった。しかし、センター試験の合格者に対する入学者の割合は人間科学科は35%、英語英米文学科は26%に過ぎない。このようにセンター試験による志願者の本学への志向性が不安定であることを考慮するならば、人文学部でも入学者の確保が不安定になったとみることも出来る。
 また、外国人留学生や、社会人学生の特別試験では、人間科学科では外国人留学生2名、社会人2名の志願者にとどまり、入学者はそれぞれ2名、1名に過ぎなかった。英語英米文学科は社会人志願者が1名入学した。また、本年度から始まった海外帰国生は、両学科とも志願者がいなかった。
 さらに3年次への転入学、編入学試験では人間科学科では7名の志願に対し、入学者は4名で、英語英米文学科は志願者8名に対し、入学者は3名であった。


1998年度 人間科学科
卒業論文発表会講評

 人間科学科は卒業論文が必修となっており、大学4年間の集大成として最も重視されている。
 その成果を発表する卒業論文発表会が今年も2月1日と2日の両日、各コースごとに開かれた。発表10分、質疑5分の短い時間ではあるが、卒業論文の要旨を報告し質疑を受ける学生達は緊張しながらも、真剣なまなざしで、発表会に臨んでいた。
 なお人間科学科と英語英米文学科の卒業論文の要旨は『人文学部・卒業報告集』(第19号 1999・3 人文学部)に収録されている。
 今年の卒業論文の講評を、各学科・コースの教務委員にお願いした。


 社会生活と人間 

 今年は62名の卒論発表者があった。
 今年の特徴の一つには、個人的趣味領域やファッションをテーマとしたものが数点みられた。小山哲平「浅井健一及びブランキージェットシティについての一考察」の独自の歌詞分析や小野寺暁子「スキンコンシャス・ファッションと若者の自己表現」の身体装飾についての見解に現代若者のユニークさを感じた。
 もう一つは、時代状況を反映してか、エネルギー・環境問題を扱ったものが多かったことである。田村文人「原発と文明そしてこれからの社会」、境井健志「資源リサイクル社会の構築と課題」に独自の主張がみられすぐれている。消費生活と産業・労働をテーマとしたものでは、山田孝「地域的生産の意義と可能性」渡部由美「労働時間短縮問題に関する一考察」などが評価できる。
 社会福祉分野では、高野英昭「コープくらしの助け合いの現状と課題」がたんねんに調べてまとめている。阿部百合香「動きはじめた二十四時間ホームヘルプサービス」は実践的論文でよい。
 歴史の分野は範囲が広いが、伊東貴子「ホロコーストー実行者の心理」や中村日奈子「沖縄における旧慣温存政策の展開及びその廃止運動」に努力のあとがみられる。吉村昌晃「進化論を証明する諸議論に関する一考察」はダーウィン進化論批判として説得力があった。
 中世史の分野を扱ったものは、いずれも手堅くまとめているが、福原恒「赤穂事件―事件の真相と背景」笠原美帆「中世の女性史―相続と財産所有を中心に」が印象にのこった。
 社会人入学生の坂口美穂「ベルマークの運動にみる援助の一考察」は明解でよく資料を調べていた。
 全体としていえることは、資料・文献を綿密に分析検証したものやたんねんな実地調査やヒアリングなどをふまえた論文は、時間をかけた成果がみられ、短期間でまとめたと思えるものは、内容に深みがみられない。
 卒業論文は、学生の最後のしめくくりだけに手抜きをせず、時間をかけて熟成した論文にしあげてほしいものである。

(津田光輝)

 人間の形成と発達 

 今年の卒論提出者は80名と多かった。テーマは多彩でり、それを眺めているだけで現代の若者の関心領域が見えてくる。心理学関係では毎年のように、対人不安(恐怖)、性役割、自己開示をキーワードとする研究が見られるが、今年は「キレる」という現象を取り上げるなど、世相を反映する内容の論文もあった。
 ユニークな論文をいくつか紹介すると、伊藤ゼミでは「青年期の友人関係と仲間から離れることの恐さについての考察」(柳沢隆介)、「バンドマンと一般人には、音楽の繰り返し聴取が快感情に及ぼす影響の差があるのか」(齋藤大)など、小林ゼミでは「幼児における因果関係の理解・産出に関する一考察」(赤坂知香)、「社会的相互干渉場面における知識獲得に関する一考察」(三浦由美)など発達や授業に関する研究、小山ゼミでは「脳障害者に対するカウンセリング研究」(吉田実佐)、「発達障害を持つ子どもへの援助とその態度についての考察」(片桐正敏)など、実践に基づく事例研究が目立った。また清水ゼミでは「大学生におけるソーシャル・サポートと精神的健康についての一研究」(伊藤亜矢)、「セルフ・コントロールに関する研究」(渡邊佳穂利)など実証的なもの、滝沢ゼミでは「聴覚障害者の進路をめぐる諸問題」(笹友子)、「画家ジョージア・オキーフの病跡学的研究」(佐藤有記)など、さらに鈴木秀一先生の後を引き継いだ千田ゼミでは「民俗舞踊に関する研究」(山田貴代)、「『ゆとり』ある教育についての一考察」(能地佐有子)、などがあげられる。
 発表会は3グループに分かれて行われ、多いところでは4、50名の学生が参加して活発な質疑応答が行われた。

(滝沢広忠)

 思想文化と人間 

 卒論提出者40名のうち、A評価を受けたものは14論文で全般に高い水準であった。
 まず奥谷ゼミでは、「生きるための哲学」(安福展子)が、ストア派の哲学者の教説を素材に、個の確立、死、生と幸福など身近なテーマを取り上げて論じた点と「人間とは何か―植物状態患者の存在を通して考える」(中田陽子)が社会人学生の論文に相応しく、看護の仕事を通して接した植物状態にある患者の人間の尊厳について論じた点が高く評価された。
 中野ゼミでは、提出者八名中六名がA評価で、平均して高い水準を示した。その中で「北一輝考察」(野口勝弘)は、二・二六事件に連座して処刑されたこの思想家の生涯と思想を原資料に当たり深く追求したした点、又「戦時下キリスト教の抵抗と戦争責任」(前田美芳)は、「日本基督教団」が戦争協力の道を歩んだのに対し、キリスト者としての良心を守り通して抵抗した灯台社と無教会主義キリスト者の思想と活動を詳細に解明した点が高く評価された。「福沢諭吉の一生と思想」(楊剣)は、中国からの留学生の論文で、近代日本の啓蒙思想家福沢の開明的思想が、やがて対アジア侵略を正当化する脱亜論に転化していくプロセスを正面から追求した点、又「埴谷雄高論」(柴山太一)は、この難解な思想家の未完の大作『死霊』と取り組んで縦横の分析を試み、111枚の労作に仕上げた点が主査の中野先生から高い評価を受けた。
 次に、鶴丸ゼミでは、「岩手県の年中行事の考察」(種市静佳)が郷里の行事の存続と減少・消滅の原因を聞き取り調査によるデータを用いて考察した点で、近年にない論文と評価された。又「擦文文化住居内の間取り」(中川健二)は、緻密な資料分析によって先行研究の問題点を克服し、新しい発見に至った完成度の高い論文と評価された。さらに「オホーツク文化における動物意匠遺物について」(山家智史)も、実証的姿勢に貫かれた内容が評価された。その他、「オホーツク文化における海獣の考察」(高橋淳一)、「配石遺構―特に環状列石について」(小林千春)、「北筒式土器―その発生について」(楪智恵理)も高水準の論文であった。

(生田邦夫)

人文学部合同講演会
―北海道薬害エイズと原告の現在―

 人文学部には1年次にクラス機能をもった科目がおかれているが、毎年それらの学生を対象に合同の講演会が行われている。1998年度は9月25日に、北海道の薬害エイズをテーマに開催され、講演者の一人は本学の卒業生であった。この合同講演会が始まったのは1994年であるが、実はその第1回目のテーマが「日本のエイズ問題」であり、「人文学部報」第2号で報告されている。この間、人文学部の何人かの学生は「北海道HIV訴訟を支援する会」の活動に参加し、北海道の原告たちを応援してきた。学生たちは北海道難病センターで夜に開かれる会議に出席し、集会を組織し、裁判を傍聴し、あるときはマイク片手に街頭署名にくりだした。そして今日、これまで提訴していた北海道の原告はすべて和解に達した。北海道の支援する会は一応解散し、今後は原告たちが自らつくった「はばたき福祉事業団」を賛助会員として支援していくことになっている。
 今回の講演会では、現在「北海道血友病友の会」の会長を務め「はばたき福祉事業団」の事務局で働いている青年原告と、北海道弁護団の代表として活動を推進してきた佐藤太勝弁護士に、原告がかかえている現在の問題と、多くの未提訴者がいまだいることなど、なお未解決の多くの問題について講演していただいた。原告は数年前に本学を卒業した学生である。講演の会場は彼がかつて学生として講義を受けていた教室でもある。人文学部には福祉やカウンセラーに関心をもっている学生も数多いが、自分たちと同年代の若い感染被害者が身近にもいて、HIVの治療を受けながらなお根強い社会的偏見のなかで勉強や仕事に懸命に生きていることを、学生たちは真剣に受けとめてくれたものと思う。なお、本学に隣接している北海道女子大学福祉学科に所属し支援する会にも顔を出したことのある学生たちが、原告の支援のため本講演にもかけつけていたことを、付言しておく。

(杉山吉弘)

本学で第45回
北海道心理学会大会開催される。

 11月8日本学を会場に、第45回北海道心理学会が開催された。北海道心理学会は会員約300名を擁しているが、今大会は80数名の参加者があった。
 札幌圏での学会ということもあって、研究発表は40本を超えるほどの盛会で、基礎系研究と応用系研究の二部会に分かれて行われた。
 研究発表では、元人文学部教授で現札幌医科大学の澤田幸展教授の「基準化脈波容積(T)理論」や人間科学科の卒業生(90年度)の田澤安弘さんの「複雑性PYSDとロールシャッハ・テスト」などの報告もみられた。
 田澤さんのように卒業後に病院臨床等に携わる心理臨床家が本学出身者にも増えつつあるが、このような学会の場にも積極的に参加して、研鑚を重ねていくことを期待したい。


1999年度
教員採用結果・人文学部から5名が採用

 児童・生徒の減少が顕著となり、大幅な学級減が見込まれるなか、次年度の教員採用試験は過去最高の競争率となった。このような厳しい状況を反映し、本学では7名(さらに私立学校1名)が登録されるに止まった。人文学部では、人間科学科から中学・社会、高等学校・地歴、特殊教育諸学校・中学部・社会各1名、英語英米文学科からは高等学校・英語1名の計4名である。同学科からはさらに1名が私立高等学校・英語に内定している。
 教職課程委員会では、昨年の教職員免許法改正に伴う教職課程再申請の準備を進めている。本学では、このなかでこれまで実績のある特殊教育にも重点を置きながら、実践的な力量重視の要請に応えるようなカリキュラムを充実させていきたいと考えている。その上で、専修免許、スクール・カウンセラー等の資格取得をも視野に入れながら教職を目指す学生の育成に力を注いでいきたい。

(小林好和)
1999年度
 公立学校職員採用選考検査登録者・私立学校採用者 

北海道

●中学・社会
山田 貴代(人間科学科1998年度卒 千田ゼミ)
●高等学校・地理
石澤 正幸(人間科学科1997年度卒 高岡ゼミ)
●特殊教育諸学校・中学部・社会
渡辺 佳穂理(人間科学科1998年度卒 清水ゼミ)
●高等学校・英語
研谷 利幸(英語英米文学科1998年度卒 坪井ゼミ)


私立学校

●札幌山の手高等学校・英語
段坂 俊介(英語英米文学科1998年度卒 坪井ゼミ)


高校教育の現場から

根室高校教諭 村山暢樹
(1993年度人間科学科卒 生田ゼミ)

 大学を卒業して5年目。現在根室高等学校に勤務し、主に「倫理」を担当しています。
 元来、社会科がすきで、中学校以来社会科の教員を目指して来ました。高校3年生の時何気なく選択した倫理に心奪われ、倫理を専門とする社会科の教員をめざして、札幌学院大学人文学部人間科学科に入学しました。
 私が高校で倫理を学習した頃は、全国の高等学校での倫理の開講率が15%程度と言われ、まさに「倫理冬の時代」でした。平成六年に学習指導要領が改訂となり倫理は選択必修科目となり、倫理と政治・経済、もしくは現代社会を履修しなければならなくなりました。けれども現実には、倫理を専門とする教員は少なく、まだまだ倫理はマイナーな科目としてのイメージを払拭できていません。また、大学の入試科目としてセンター試験では導入されていますが、私大や短大ではごくわずかです。このことも倫理がマイナーな科目として見られる一つの原因となっています。
 しかし、現代のような混迷な時代において「人間の在り方生き方教育」が声高に叫ばれています。倫理や現代社会は、在り方生き方について考える力を養い、理解と思索を深め科目として期待されています。それだけに倫理を専門とする教員が多く求められています。
 私は倫理の教員になるべく、思想・文化と人間コースで学びました。このコースの哲学・思想関連科目で学ぶことで高校生に倫理を講じるための知識を得るにとどまらず、倫理の教員としての精神的基盤を形成するのに大きな影響を与えていただきました。
 倫理は一見、とっつきにくいところもありますが、われわれが人間として生きていくうえで必要不可欠な科目です。そのようなことを少しでも理解してくれたら、と思いながら毎日、教壇に上がっています。幸い、毎年何人かの生徒は「倫理がすき、倫理って面白くてためになる」と言ってくれています。
 私はこれからも人間科学科出身の倫理の教員であることを誇りに思い、先哲の思想を現在に伝える伝道者として努めていきたいと考えています。そして人間科学科出身の倫理の教員が一人でも多く出てくれたら……と願っています。
―イギリス・エセックスの留学から帰って―
異国生活

岡田 亜美(英語英米文学科4年)

 英国留学。カントリー・サイドの美しい風景とクイーンズ・イングリッシュ。アメリカとは別の魅力を湛えた憧れの国イギリスへの留学は、私の最大の関心事であった。留学を前に定めた私の目標は、英語そのもの、クイーンズ・イングリッシュを学ぶことであったが、イギリスの暮らしで分かったことは、英語が日常生活からシェイクスピアに至るまで、世の中のあらゆる現象を伝える言語の一つに過ぎないのだという当然の事実だった。生きた英語を耳にして暮らした五ヵ月が、知識として頭では分かっていたこの事実を私に実感させてくれたのである。
 イギリスには時がゆったりと流れていた。曇り空で憂鬱な日々もあったが、高層の建物がないせいか高く感じられる空の下に小さな家々と手入れの行き届いた庭の並ぶエセックスの町並みは私が想像していた通りの美しさだった。この美しい風景とともに、もう一つ私の心を捉えたのは、イギリスの人々の人目を気に掛けない自然な生き方であった。歌いたいときには歌い、怒りたいときには怒る人々の生き方に、私は自然の「生命力」を感じ、様々な生き方の見本を目の前に並べて見せて貰っているのだと思った。文化の違いの引き起こす葛藤もあって、家族や友達の大切さ、日本の良さを痛感する機会も多かったが、イギリスの人々のさり気ない思いやりや誰とでも挨拶を交わす習慣などを、より良く暮らすための知恵として、私は心に深く刻んだ。
 この留学生活を通して、私は、2つの国の長所と短所を見る眼とクイーンズ・イングリッシュへの手掛かりを掴むことができたのだと思う。
海外で学ぶ

 近年、「語学研修」を理由とする休学(半年または1年)が目立つ。しかし、単に語学だけでなく、「海外生活」を体験したというのが本当の理由であるようだ。本学が行っている語学研修や海外留学の制度も年々整備され、特に英語・英米文学科の学生を中心に参加者も多くなっている。
 国際化が叫ばれて久しいが、本学でも「海外で学ぶ」学生が着実に増えていることが伺える。


定年退職教員プロフィル

 中野徹三教授(社会思想史)北海道大学大学院文学研究科博士課程修了後、1963年札幌短期大学に赴任。68年には開学した札幌商科大学商学部に移り、77年には新設の人文学部の教授となる。この間、ドイツ語、社会思想史、人間学概論などの講義を担当する一方、長年に亙って、学園(明和学園、現学校法人札幌学院大学)の理事、常務理事として、札幌商科大学の創設、人文学部・法学部の開設の中心的役割を担った。また97年4月から99年3月まで人文学部長を勤めた。
 専門の研究分野では、早くから社会主義思想の研究として著名であったが、近年は社会主義の問題をめぐる研究活動を国際的に展開している。『社会主義像の転回』(1995)を始め多数の著書がある。


人文学部のホームページに『学部報』の全号を掲載

 今日、情報公開が様々なところで求められているが、情報発信の手段として重要性を増しているWWWサービス(ホームページ)を人文学部でも九七年九月から開始している。(http://www.sgu.ac.jp/から学部・学科の人文学部を検索)
 すでにアクセス数は三月末現在延べ15000件に達している。このホームページには『人文学部報』の第1号から9号までのすべてを掲載している。


人文学部長に杉山吉弘教員を選出

 人文学部教授会は、中野人文学部長の任期満了に伴って、次期学部長の選挙を行った。 今回の人文学部長の選挙では、学部長選挙で初めて、奥谷浩一教員と杉山吉弘教員の複数の立候補者があった。第1回の投票では両候補とも同一得票数のため、再選挙をした結果、杉山教員が当選した。 杉山教員は1977年に人文学部開設とともに赴任、1984年に教授となる。主にフランス語を担当する一方、思想論特講、人間学概論などを担当。学部の教務委員長や人間科学科長、また95年から97年にかけては教務部長を勤め、一般教育改革を手掛けた。 フランス哲学が専門で、最近ではJ・F・リオタールの『リビドー経済』(97年法政大学出版局)の翻訳書などがある。 任期は1999年4月1日〜2001年3月31日まで。


 98年度学部教員の人事、研究活動等 
 (10/1〜4/1) 

◎教員の異動

▼退職(3月31日付)
中野 徹三(社会思想史)
C.L.Cowell(英語)

▼採用(4月1日付)
教授 小片 基(精神医学) 札幌医科大学医学部卒業 札幌医科大学教授医学博士

講師 C.WILLIAMS(英語) 西オンタリオ大学卒業

▼昇任(4月1日付)
助教授 伊藤亜矢子
 

◎海外研究出張

小山 充道
98年8月13日〜8月20日
アメリカ 「アメリカ心理学会第106大会」

滝沢 広忠
98年10月19日〜10月26日
アメリカ 「精神保険とろうに関する第1回世界会議」
笹岡 征雄
98年12月11日〜12月16日
アメリカ 「ホノルルマラソン大会出場と情報交換」
小山 充道
98年12月8日〜12月12日
中国 「上海師範大学心理相談室オープン記念講演」
鶴丸 俊明
99年2月24日〜2月27日
韓国 「朝鮮半島出土の旧石器時代遺物の観察」
松本 伊智朗
99年2月27日〜3月14日
イギリス 「福祉政策関連資料収集と調査」
川合 増太郎
99年3月2日〜3月30日
ドイツ、オーストリア、チェコ、ハンガリー 「カフカ、東欧ユダヤ人、イディッシュ文学、演劇関係の資料収集」

◎人文学部教員出版物

津田 光輝(分担執筆)
杉村宏・池末亨・岡部卓編『公的扶助論』 へるす出版 98年12月 2400円

奥田 統己(分担執筆)
北海道・東北史研究会編『札幌シンポジウム「北からの日本史」場所請負制とアイヌ―近世蝦夷地史の構築をめざして―』 北海道出版企画センター 98年12月 2940円

松本 伊智朗(分担執筆)
『これからの社会福祉 第3巻 家族・児童福祉』 有斐閣 98年11月 2400円

ティモシィ・P・P・グローズ(分担執筆)
SHIRO&YUKO!&IKEDA編『Touring California』 北星堂 98年10月 1700円

清水 信介(分担執筆)
大塚義孝・滝口俊子編『臨床心理士のスクールカウンセリングAその沿革とコーディネーター』 誠信書房 98年9月 2000円

◎委嘱発令

津田 光輝
介護保険事業計画策定委員(江別市)(99年1月〜2000年3月)

松本伊智朗
北海道子どもの虐待防止(協)事務局長

坪井 主税
北海道地方自治研究所理事 (97〜98年度)
平和・協同ジャーナリスト基金賞選考委員(98年度)

富田 充保
北海道民間教育団体連絡協議会研究委員(99年1月〜99年12月)
北星学園新札幌高校共同研究員(98年4月〜99年3月)


編集後記

 学部で営まれる様々な教育活動を報告する「人文学部報」も、本号で10号を数えました。学部の情報をきめ細かに伝え、学生、父母、教職員に共通の理解の場を提供できるよう、努力を重ねる所存です。
 具体的に動きだした学部の新構想は新世紀への胎動を耳にする思いがします。
 大学では、「臨床心理学専攻」の大学院の6月申請を目指して準備中です。大学院設置に伴う人間科学科再編問題は、残された緊急の課題です。
 英語英米文学科は、いよいよ本年度入学生から、2年生後期海外留学を含む新しいカリキュラムを実施しました。
 新しい酒は新しい器に、新たな構想が新世紀を生きる学生達を育むに相応しい器となりますように!(及川 英子)