1999・10・1 No.11


「日の丸」「君が代」の法制化に思う
北爪 真佐夫 Masao Kitazume

 過日の通常国会では審議不充分なまま「日の丸」「君が代」法案を通過させてしまった。この法案の説明にあたった野中官房長官は「日の丸・君が代は一時期、誤った方向に使われた時代も経験した」といった趣旨のことを述べているが、簡単に「一時期」の誤りといってすませられる問題ではないのである。さて、かつて「君が代」の「君」って誰のことか問題となり、そのときの政府首脳は「天皇」を指すものではないとして「君」とか「僕」といった意味の「君」だと解釈して失笑をかったことがあった。今回は明治憲法下では「君」は天皇を指したが、現憲法下では「国と国民統合の象徴である天皇」を指すとの見解を表明した。つまり、「天皇」を指すことは否定しなかったのである。ところで「君」は天皇を指すといいながら「君が代」の「代」は本来は「時」を意味するものであるが、この場合は「国」を意味するものだ、として以上のように説明しているのである。だが、「代」を「国」と解するのは問題であろう。試みに国語辞典などでみると「代・世」となっていてその意味は、1「人が生まれてから死ぬまでの期間、一代、一期」2「ある特定の者、また系統によって支配・統治が続く期間」3「仏説にいう過去(前世)、現在(現世)、未来(来世)の各々」4「時節・季節・機会」などを意味する。もっとも、「世」の場合は「人間を構成する社会、またその中での人間関係、よのなか」の意味に使われたとある(日本国語大辞典、第20巻、小学館)。実際、戦前では「君が代」は天皇の時代=(天皇)「御代」といったし、たとえば昭和15年は皇紀2600年と教えていたのである。それ故に「君」は象徴天皇を指すといっても「代」の説明を「国」とするのは問題である。ということは戦後の「国民主権」のもとでは「君が代」なる表現は不適当なのである。以上は紙数の関係から「君が代」「日の丸」の問題性の一端についてふれたにすぎないので、是非手近な事典などで理解を深めていただきたい。
 次に、戦後「君が代」や「日の丸」が問題となったのは1950年、ときの文相天野貞祐氏が「国民の祝日には学校や家庭で日の丸掲揚、君が代を斉唱する」ことがのぞましい、といった発言を契機に、以降、学習指導要領など教育の場面で問題とされ、戦前の反省も不充分なままに今度の法制化の強硬となったのである。
 なお、誤解されては困るのだが、私は「国旗」や「国家」が必要ないといっているのではないのである。それどころか、今日のわが国にふさわしい「国旗」や「国家」はどのようなものがよいか、主権者の総意によって議論し決めていくのがよいと思っているのである。なお、「日の丸」「君が代」問題は日本によって侵略されたり植民地化されたアジア諸国の人たちにとっても、大いにかかわりのあったことを無視すべきではないということを指摘しておきたい。


  大学院臨床心理学研究科の新設計画について
- 2000年4月開設をめざして -
 

人文学部長 杉山 吉弘

 人文学部は現在、人間科学科心理学分野のこれまでの実績にもとづき、大学院臨床心理学研究科(臨床心理学専攻)の新設を計画中であり、設置が認可された場合には、2000年4月から本学の新しい大学院としてスタートする。その場合、臨床心理学研究科という名称を掲げた大学としては全国でも最初となる。
 定員は修士課程の10名である。相対的に小規模な形態で出発するとはいえ、確固たる教育理念の下に、臨床心理学系大学院としては、教員スタッフとカリキュラムにおいて道内随一の充実した内実を備えることになる。

臨床心理学研究科の目指す教育の理念・目的

 本大学研究科の教育理念は、その特徴のみを簡潔にのべるならば、次のようになる。
 すなわち本研究科は、臨床心理学の学術的研究の促進に社会的に寄与することをめざすと同時に、その研究と実践を踏まえて高度の専門的な教育を行い、その分野において優れた学識と実践力を有する高度専門商業人である臨床心理士の養成を図り、また今日社会的にも深刻な問題を抱えている学校教育領域に対応しうるスクールカウンセラーの育成をめざす。
 したがって、臨床心理学という学問的な研鑽はもちろんのことであるが、何よりも社会的に通用する高度に専門的な実践力を有する人材を育成することが本研究科の基本的な目標であり、その目標の実現のために必要な優れた教員スタッフと充実したカリキュラムを備えている。
 なお、日本臨床心理士資格認定協会で認定する資格取得のためには、修士課程終了が最低条件となっており、同協会の第一種指定大学院をめざす本研究科を修了すれば受験資格の条件を満たすことができる。また現在公立学校に派遣されているスクールカウンセラーの多くは、資格認定された臨床心理士である。

社会的要請とそれに応える教員スタッフ・カリキュラム

 今日の社会では「こころ」の問題が山積し、特に子どもにおける心の問題の増加と複雑化は深刻の度を増している。そうした状況に対応するために、心の専門家としての臨床心理士およびスクールカウンセラーの養成が急務になっている。
 本大学研究科は、臨床心理学にかかわる高度の専門的職業人の養成というそのような社会的な要請に積極的に応えるものである。
 教員スタッフの多くは臨床心理士の資格を持ち、北海道の臨床心理学の分野で中心的な役割を担って活動しており、社会的実践の経験も豊富である。その教員スタッフによって、豊かな学識にもとづく実践的な教育と専門家養成を体系的に行うことが可能になっている。
 本研究科のカリキュラムはその教育理念に照らして、事例研究を中心にした実践的な学習を基本的な柱として編成されており、体験学習を重視している。実習施設も整備されており、実践成果を理論化していく力量の育成に努めると同時に、適切な専門的援助ができるような経験的知恵の成熟を期する。

再教育による生涯学習的役割と地域社会への貢献

 本研究科は再教育による生涯学習的役割を担う機関でもあり、その意義を重視している。本研究科では、臨床心理資格取得を希望する現任臨床心理担当者や、医療分野など近接領域にある者にたいして心理臨床的能力獲得のための再教育を行う。
 また、スクールカウンセラーが制度化されようとしているにもかかわらず、道内にはその養成機関がひとつもないのが実状であり、本研究科修了者はその要望に応えることが可能になる。
 さらにその資格と専門を活かして医療の諸分野、障害・福祉施設、司法関連施設など、社会の関連諸領域に専門職業人として進出する道が拓かれている。
 人文学部としては、本大学院の設置によって、人間が真に尊重される社会の実現に貢献していきたいと考えている。


人文学部新構想検討委員会の発足

 昨年7月、全学的な審議機関として「人文学部再編構想検討委員会」が発足した。その課題の一つである大学院臨床心理学研究科の来年度4月開設が、現在申請中である。また同時に、ほかの残された課題を遂行するために、人文学部のなかに改めて新構想検討委員会が設置され、すでに活動を始めている。
 主な検討課題を重点的に要約すると、これまで学部で積み重ねられてきた成果にもとづき、まず第一に、新しい大学院の母体となるべき臨床心理学研究学科新設の具体化を計画することであり、第二に、その場合現行の人間科学科をいかに再編成すべきかを検討することである。また新たな福祉系大学院の可能性を探求しなければならない。
 いずれの課題も、これまでの実績を見つめ直すと同時に、社会的な要請に的確に応えるために学部の将来を展望する長期的な視点が要求されている。
鶴丸 俊明



本年も沖縄国際大学から国内留学生

 1998年度から始まった沖縄国際大学文学部と人文学部の単位互換制度によって、昨年は沖縄から6人の学生が本学人文学部で学び、いろいろな思い出を残して3月には沖縄に戻って行った。
 今年は浦添佳代子(4年)さん、當間美智子(4年)さんの2人が人間科学科で、瑞慶山みどり(3年)さんが英語英米文学科で学んでいる。人文学部からは人間科学科の新宮礼子(3年)さんが訪沖している。本学にはこの他にも、法学部には3人、今年から始まった経済学部にも4人、商学部にも3人が留学にきており、計13人の沖縄の学生が本学で学んでいる。


1999年度前期末 学位記授与式

新たに13人が卒業

 本年度前期末学位記授与式(卒業式)が9月29日、本学で挙行された。全学部で49人に学位記が授与され、めでたく卒業となった。
 人文学部では人間科学科9名、英語英米文学科4名の計13人と例年になく多い数となった。式では、各学部長より一人一人に学位記(卒業証書)が授与された。式後の祝賀会では学長や教職員からの励ましを受けて、思い出深いキャンパスをあとにした。これで学士の学位を授与された人文学部の卒業生は、3,833人(人間科学科 2,668人、英語英米文学科 1,865人)となった。


臨時定員の廃止と人文学部の新定員

 1992年度から1999年度までの期限を付した入学定員(臨時定員)が、2000年度には廃止されることに伴い、人文学部は新たな「入学定員・収容定員の増加」を文部省に申請していたが、7月28日付で認可が下りた。
 これにより、2000年4月以降の人文学部人間科学科の1年次の入学定員は130人(収容定員は520人)、英語英米文学科は70人(収容定員は280人)となった。



1999年度
人文学部夏季集中講義
  公開講座・北海道文化論  

〜 人間科学科 〜

公開講座・北海道文化論

『北海道の宗教文化』

 本年度の北海道文化論は、今回初めて北海道の精神文化をテーマに取り上げることになり、北海道各地の人々の生活と密接に関わって営まれてきた諸宗教の歴史や文化的取り組みに焦点を当てることにした。
 統一テーマは、「北海道の宗教文化」とし、アイヌの信仰の様相を始め、神社神道、仏教、キリスト教の各宗派の立場から講義が展開された。
 第一回目は、「アイヌの信仰文化について」と題して、北海学園大学の藤村久和教授が、アイヌのアニミズム的世界観、霊魂の輪廻転生の信仰について民話を題材として興味深く語られた。
 第二回目は、「暮らしの中の神社と祭り」という題で、士別神社の佐藤公聰宮司が、士別神社の起源と現代の祭りの模様をスライドやビデオを使って分かりやすく講義して戴いた。
 第三回目は、「地域活動と布教活動」という題で、江差正覚院の松村俊昭住職が、正覚院の創建の時代背景から、「江差地域大学」の地域起こし街づくり運動の実践の模様を、熱意を込めて語られた。(写真)
 第四回目は、「北海道真宗史の原風景」という題で、新十津川円満寺の金龍静住職が真宗寺院創設の実態と歴史的背景を詳細なレジメに基づき語られた。
 第五回目は、「キリスト教(カトリック)の受容と弾圧」という題で、仁多見巌北海道キリスト教史研究会会長が450年にわたるカトリック伝道の歴史を四つの時代に分けて、歴史年表を用いて詳しく説明された。
 第六回目は、「北海道開拓期におけるキリスト教徒のバイオニア性とその変遷」という題で、北星学園女子短期大学の寺岡宏名誉教授が、明治期のキリスト教徒達が理想に燃え移住してきた苦難と栄光の道程を具体的人物像を通して感銘深く語られた。
 本講座は、学生の感想文や一般の聴講者のアンケートに見られるように、北海道内の諸宗教の歴史や文化的取り組みを新しい視点で学習する良い機会であったといえよう。
(生田邦夫)


『心理学特殊講義 -犯罪心理学-』

 今年の心理学特殊講義Bは、8月25日から28日の四日間、花園大学浜田寿美男教授をお迎えし、行なわれた。
 本講義は、学生のかねてからの要望である、犯罪心理学の開講に応えての開催であった。通俗的な犯罪心理学は犯罪者特有のパーソナリティ傾向や生育歴などの指摘にとどまり、ある種の人間は犯罪者になりやすいといった、時に差別的な見解を助長する恐れがある。
 また真犯人の同定とは基本的に独立な営みである。浜田教授は、特別弁護人、鑑定人として裁判に関与された経験を通し、通俗的犯罪心理学の、そして心理学概念の誤った適用がいかに深刻な事態を招来するかを体感されている。
 講義では数々の冤罪事件を例示しながら、ある人物が犯人と誤認されるに至った制度的、心理学的理由が考察された。そして従来の心理学の裁判への関わり方が批判的に検討され、個々の事件において真実をどのようにして明らかにしていくのか、その方法が提示された。
 報道などを通して、学生が身近に感じていた事件が議論の俎上に上ることもあり、300名に達する学生は大きな関心を持って、そして真剣に講義に参加できたことと思われる。他学部の教員が聴講する姿も散見され、浜田教授の影響力の大きさがうかがえた。
 抽象論に陥りがちな心理学にあって、浜田教授のような実務場面に応え得る心理学を展開されている方の講義を受講できたことは、多くの学生にとって貴重な体験になったことと思われる。
 なお、浜田教授が特別弁護人として関与された中山事件の被告人裁判がこの9月終結し、25年に渡る超長期裁判に終止符が打たれた。原一審、差し戻し一審、告訴審と三たび無罪判決が下り、検察側も上告を断念した。原一審において浜田教授が行った目撃証言の心理学的鑑定は、後続の裁判においても大きな影響力を持ち、判決においてしばしば言及された。この鑑定書は「証言台の子どもたち」(日本評論社)として公刊されている。
(森直久)

〜 英語英米文学科 〜

『アメリカ特殊研究D』

 矢口祐人先生の講義は、「出欠席の確認はしないが、遅刻は減点の対象になります」というユニークな宣言で始まった。「遅刻は先生や学生達から講義への集中力を奪うから」というのがその理由である。お蔭で私達は、集中して、「アメリカらしい」アメリカ・ハワイに焦点を当てた先生の講義を聴くことができたし、「複雑で多面的な」アメリカ社会・文化を理解し、これを「見る目」を得ることができた。
 ハメハメハ大王がハワイ全土を独立国家として統一した18世紀は、人々がタロイモの栽培や漁業に従事する階級社会であった。19世紀になると、キャプテン・クックや宣教師等が渡来し、貿易や燃料補給の目的で貿易船や捕鯨船が北米大陸とアジアとの中間点にあるこの島を訪れる。そして始まった砂糖黍栽培はプランテーションで働く多くの労働力を必要とした。労働力不足は、日本、中国、ポルトガル、プエルトリコ、フィリピン、韓国等からの移民によって補われた。人種差別・男女差別の中での移民等の苦しい暮らしを映画『ピクチャー・フライド』に見ることができた。1941年12月7日(アメリカ時間)の真珠湾攻撃では、3時間で2400人が死亡し、戦時中、日系の人々への規制は厳しいものになった。1959年、ハワイはアメリカの領土からハワイ州となり、国会議員の選出や自治権獲得によって、アメリカ合衆国内で現在の位置を得たのである。戦後、砂糖黍栽培は廃れ、観光と軍事が産業の中心を占める今日のハワイが出現した。
 年間300万人の日本人が観光目的で訪れるハワイの島々を、私は『南の島のハメハメハ大王』に歌われる楽園のイメージで捉えていた。しかし、ハワイの歴史とそれぞれの時代の社会や文化を知り、この楽園を見る「新たな目」を得た私に、ハワイは美しい景観とともに様々な顔を見せ、社会・文化の深さを教えてくれる。このような文化研究の窓口へ導いて下さった矢口先生に心から感謝いたします。
(英語英米文学科 三年 橋本舞)



 
英語英米文学科
新カリキュラム スタート!
 

 今年度4月より英語英米文学科の新カリキュラムが立ち上がり、多くの学生が来年の半期留学制度に高い関心を示している。この新カリキュラムは21世紀の英文科の在り方を2年間かけて検討した結果であり、次の三つの特徴を持っている。

1 コース制の導入

 英語・コミュニケーションコースと英米文化コースを開講し、それぞれの特徴を明示している。英語・コミュニケーションコースでは英語学、コミュニケーション学の学問体系に裏打ちされた講義科目、実習科目が用意されている。インターネット時代の世界共通語となっている英語を歴史的に、科学的に分析する英語学特殊講義、そして、異文化コミュニケーション論等が学生たちを待っている。
 一方、英米文化コースでは伝統的な英米の文学作品鑑賞に加えて、思想、歴史、文化の面から英米社会を分析し、現代文明を築いて来たアングロ・サクソン文化に多面的にアプローチすることが出来る。英米の詩、小説、演劇作品に触れ、英米地域研究の最新の成果を学ぶ事によって、英米文化に対する重層的な理解が可能となる。

2 半期留学制度の導入

 2年次の後期に五ヶ月間にわたる半期留学制度が組み込まれている。選択ではあるが、本学の提携している米英の三つの大学のキャンパスで、英語運用能力の一層の向上に努めると同時に、スピーチやプリゼンテーションの理論と実践を学ぶ事が出来る。五ヶ月間のホームステイも思い出深いものとなろう。9月の時点では約半数の40名の学生が来年の留学に意欲を示している。

3 多様な小人数ゼミの導入

 3年次からはいよいよゼミが始まる。学生一人一人の関心を尊重し、多様なメニューを用意して、十人以下のゼミ仲間と教員の真剣な議論を通して専門を深めることが出来る。このカリキュラム通じて、実践的な英語運用能力と、英米に関わる高い見識を備え、21世紀の国際社会の構築に貢献できる人材の育成を目指している。


一段と充実した臨床心理学関係の施設など

 人文学部では大学院臨床心理学研究科の来年度開設の準備を進めているが、その一つとして行われていた、臨床心理学関係の施設の拡充工事がこのほど終了した。
 その内容は、既にA館1Fに設置されていた心理臨床センター施設と心理学実験・実習室、プレイルームを再配置して、新たにプレイルームI(90u)を増設し、既設のプレイルームはIIとする他、面接室を一つ増設して四室にした。また、二つある心理学実験・実習室の一つを心理臨床センター事務室・待合室に転用する等である。
 これで心理学関係の施設は、心理臨床センター事務室・待合室一、面接室四、プレイルーム二、実験・実習室一を設け、面積も238uから360uと1.5倍に拡大された。
 施設の機能も一段と向上することで、北海道は勿論、全国的に見ても最も充実した臨床心理学関係施設が整備されたことになる。また、大学院の開設にともなって、更に院生用の研究室の配備も予定されている。


人文学部心理臨床センター第五回公開講座
「こどもの成長・発達〜こころの援助のさまざま」を開催

 小学校から高等学校までの教員を対象とする公開講座『こどもの成長・発達〜こころの援助のさまざま』が、7月30、31日の両日にわたって本学で開催された。
 募集定員は70名だが7月初旬に定員に達し、例年通り相当数の申し込みをお断りすることになった。最終参加者は79名であった。参加者は北は美深、東は根室、南は函館、西は岩内と全道にわたった。
 初日には、「青年期のひきこもり・無気力問題」(清水信介教授)、社会福祉の視点から「児童虐待のいま〜どうなっているのか・どうすればいいのか」(松本伊智朗助教授)、「こどもの心と身体症状〜養護教諭との連携から」(永田法子:市立小樽第二病院臨床心理士)の三つの講義が行われた。
 本講座での社会福祉からの心のアプローチに関する講義はこれが初めてで、アンケート結果からも好評であった。
 2日目は「人との関わりが長続きしないこども達〜不登校の事例から」(徳田仁子:札幌国際大学短期大学部助教授)、「いじめ・不登校・学級崩壊〜家族療法を活用した学校・家族問題の解決」(亀口憲治・東京大学大学院教授)の二つの講義が行われた。
 亀口教授はご自身の臨床体験をスライドで提示され、家族療法の概略をOHPで示された。現場教員にとっては非常に興味深い内容の講演だった。
 講座終了直後に実施したアンケート結果は、そのほとんどが好意的なものであった(例:「私個人の学習と思って参加したのですが、もったいなくどう広げようかと考えているところです。大変実のある濃い内容でした」等)。講師自身の事例をもとに、対応を学びたいという声が圧倒的だった。
 以上、今夏の公開講座も盛会のうちに終了したが、本年10月31日(日曜日)には、公開講座の第二部として、本学で「カウンセリング事例研究会」が開催される。講師は倉光修大阪大学大学院教授を予定している。今回参加された方のうち44名がすでに参加予約をされた。
(小山充道)



人文学部合同講演会

国境を越えて自分を見つめ直す
一方通行の援助ではなく、共に生きるための協力を…

 今年度の人文学部合同講演会は、新一年次生が入学して間もない5月14日(金)の3講時、G館ホールにおいて開催された。講師は、日本国際ボランティアセンター(JVC)東京本部総務兼ラオス事業担当の清水俊弘氏で、JVCの実践活動の模様をリアルな視点で話していただいた。
 JVCは、1980年タイ・バンコクでインドシナ難民救済支援活動を行うために誕生したNGO、市民国際協力団体である。その活動目的は、国際社会の中で、社会的、精神的、物理的に困難な立場を強いられているアジア、アフリカ、中東、中南米の人々に協力すると同時に、地球環境を守る新しい生き方と人間関係を作り出そうとすることにある。
 発足してから二十年、JVCは当初の緊急難民救援活動から、飢餓被災民救援開発協力、地球環境保全へと年々活動を変化させて現在に至っている。活動は、各地域固有の環境と文化に根ざす人々の自立の支援とネットワーク作り、地域の自助・自立に役立つ人材育成、職業訓練、子供達の教育支援、農村開発活動、森林保護、海外NGOとの連携など、多様な協力支援である。
 講演は、テーマに沿って、1ボランティアという言葉の考え方、2JVC設立の経緯と現在、3主体としての自分に戻る、4JVCが求める人材、という項目に関連して、実践活動の模様をスライドを用いて話された。
 講演後、学生から提出された感想文には、講演を主体的に受け止め、ボランティア活動を再認識する機会になったと評価する内容のものが多かったことからも、今回の講演は、アジア・アフリカの人々との国際協力のあり方や地球環境保全といったグローバルな問題意識を開発する良い機会になり得たように思う。
(生田邦夫)



本学でもインターンシップ(体験講座)を開始

 インターンシップは「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行う」もので、就職に際して企業と学生が相互理解を深める機会として、近年日本でも盛んになってきた。道内の大学でも試行的な取組が始っており、参加する学生も増えている。
 今年のインターンシップには主に商学部や社会情報学部の学生が参加しているが、人間科学科からは川合貴子さん(4年)が初参加した。川合さんは労働省と学生職業センターが主催するプロジェクトに参加し、JTB北海道営業部で夏休みを利用して一ヵ月間の研修を受けた。
 就職環境が大きく変わり、厳しさが増す中でインターンシップによる研修は、学生が職業と職場を肌で感ずることで、就職への動機付をより鮮明にする体験として、今後はますます重視されていくと思われる。


人文学部20周年記念誌の発刊近し

 人文学部20周年の記念誌の発刊が計画されて3年目を迎えているが、大幅に遅れていた編集作業もようやく最終段階に入り、後は印刷に入れるところまで進んできた。
 人文学部は1977年に開設され、1998年には20周年を迎えた。その98年には足跡を振り返り、未来を展望するための記念行事が様々にもたれたが、記念誌の発刊だけが残されていた。
 卒業生を主体とした「人文学部20周年を祝う会」では編集委員会を設けて、その作成に当たってきたが、記念誌の原稿作成や資料の収集に手間取り、発刊の予定を大幅に遅れるものとなっていた。しかし、編集委員会の努力もあって、ようやくその全体の構成がほぼ固まってきた。
 夏休み中に開かれた編集委員会では、次のような目次構成が基本的に承認された。

発刊に寄せて

・二十周年を祝う会代表
・人文学部長の挨拶

第一部・人文学部のあゆみを語る

・設立の構想と課題
・人間科学科小史
・英語英米文学科のあゆみ
・卒業生座談会
・在学生座談会
・卒業生からのメッセージ
・人文学部二十年のあゆみ(年表)

第二部 人文学部のあゆみと現況

・人文学部学生の受け入れと在籍学生
・人文学部のカリキュラムと教育内容(人間科学科のカリキュラム、英語英米文学科のカリキュラム)
・人文学部における諸資格課程
・人文学部学生の卒業と進路

第三部 人文学部の組織と活動

・人文学部教授会と教員組織
・人文学部関係特別施設
・人文学部による公開講座
・人文学部関係出版物と北海道文化論
・在籍教員のプロフィール

第四部 人文学部関係資料

 全体では200頁をかなり越える予定で、印刷の予算が間に合うかどうかが心配されている。現在は、原稿の浄書や割り付け、資料や写真の整理・収集などの最終段階に入っており、年内発刊を目指して作業中である。





フレッシュな地域リーダーの誕生
人間科学科の卒業生 市議と町議に初当選

 今春の地方統一選挙で、人間科学科の卒業生が江別市議会議員と奈井江町議会議員に初当選した。
 江別市議には高橋(旧姓丸山)典子さん(1986年度卒、滝沢ゼミ)と清水直幸さん(1989年度卒、酒井ゼミ)の二人で、それぞれ初めての立候補で初当選した。二人とも江別市議会では最年少の議員ながら、新しい地域リーダーとして、今後の活躍が期待されている。
 奈井江町議には太田裕司さん(1981年度卒、大場ゼミ)が当選している。
 この選挙では本学卒業生が北海道の地方自治体の議員に全部で9人が当選しているが、人文学部の卒業生としては初めてである。



合格おめでとうございます

大学院合格

○ボルドウィン・ヲレス・カレッジ・経営学修士課程(米国)
 滝澤 代一(人間科学科1998年度卒、湯本ゼミ)

○第11回社会福祉国家試験合格
 高島 胤(人間科学科1981年度卒、布施ゼミ)社福法人木の実会(札幌)勤務


1999年度学部教員の人事、研究活動等(4/1〜9/30)

◎教員の異動

▼退職(六月三十日付)
●伊藤 亜矢子(臨床心理学)お茶の水女子大学生活科学部へ転出

◎海外研究出張

●小片 基 99年4月26日〜5月11日 ドイツ「第49回ドイツ精神療法研修会」「第二回ヨーロッパ全国パストラルケア大会」
●坪井 主税 99年5月9日〜5月16日 オランダ「国際平和史学会」
●滝沢 広忠 99年7月24日〜8月6日 オーストラリア「第13回世界ろう者会議および資料収集」
●富田 充保 99年8月10日〜8月24日 カナダ「グローバル教育サマー・セミナinカナダ」
●小山 充道 99年8月19日〜8月26日アメリカ「第107回アメリカ心理学会」
●松本 伊智朗 99年9月18日〜9月23日フィリピン「フィリピンにおける障害児・者福祉の視察・調査」

◎人文学部教員出版物

●滝沢 広忠
(分担執筆)村瀬嘉代子編『聴覚障害者の心理臨床』日本評論社
99年9月188頁1,900円

●奥田 統己
(分担執筆)北の生活文庫編集会議編『北海道のことば』(北の生活文庫第8巻)北海道・北海道新聞社
99年3月248頁1,553円

(単著)『アイヌ語静内方言文脈つき語彙集(CD―ROMつき)』札幌学院大学
99年3月185頁非売品

(分担執筆)石井米雄・千野栄一(共編著)『世界のことば100語辞典 アジア編』三省堂
99年6月295頁1,600円

●富田 充保
(分担執筆)片岡洋子・佐藤洋作編『中学生の世界2中学生をわかりたい』大月書店
99年5月188頁1,500円

(分担執筆)村山十郎・久冨善之編『いじめ自殺6つの事件と子ども・学校のいま』国土社
99年8月206頁2,200円

◎委嘱発令

●小片基
メンタルヘルス担当相談員(99年4月〜00年3月)
産業医、保健婦、衛生管理者等産業保健関係者の産業保健活動判例等研究会(仮称)設立世話人会メンバー(99年4月〜00年3月)
労働福祉事業団北海道産業保健推進センター後援、北海道労働基準局労働衛生課

●松本 伊智朗
北海道男女共同参画懇談会委員、北海道(99年4月〜01年3月)

●鶴丸 俊明
北海道考古学会委員長、北海道考古学会(99年4月〜01年3月)
札幌学生野球連盟理事長、札幌学生野球連盟(99年4月〜01年3月)
北海道博物館協会理事、北海道博物館協会(99年7月〜01年7月)

◎研究助成

●奥田 統己
文部省科学研究費補助金奨励研究A「アイヌ語静内方言の語彙調査資料の整理・分析と公開準備」(190万円)(99年度〜00年度)


編集後記

 かねてより、人文学部を中心に大学院臨床心理学研究科の設置が検討されていたが、その開設が現実のものとなった。文部省が進めている大学院拡大計画は器作りが先行して、教育内容の充実策は手薄のまま。我々の新しい大学院が、器作りで終わらぬようにしたい。人文学部二十周年記念誌の発刊にメドがついたという。新しい発展の礎を改めて確認しておきたい。
(酒井恵真)