2000・10・1 No.13



人間重視の文化研究をめざして
奥田 統己 Osami Okuda

 近年、アイヌ民族とその文化に対する社会の関心は高まりつつある。しかしそのなかで力を得ている立場は、「自然とともに生きる絢爛たる文化」とか「すばらしい知恵を持った人々」などといった一見好意的な表現を用いながら、アイヌ文化の具体的な像として、近代以前から営まれていたとされる狩猟・採集生活を中心とした側面のみに着目している。そして現代のアイヌ民族とその文化については「わが国の他の構成員とほとんど変わらない」あるいは「様々な生活の道を選択している」と消極的にしか表現することができていない。
 こうした見方が生じるのには、一応理由がないわけではない。とくに近代以降のアイヌ文化は和人(いわゆるヤマト民族をアイヌ民族に対置する呼称)からの強い同化圧力にさらされてきたからである。
 しかし実は、右に示したようなアイヌ文化観のなかには、見逃すことの出来ない「人間軽視」の態度が潜んでいる。
 まず、これまで流布されてきた近代以前のアイヌ文化の像は、過去の研究者によっていったんまとめられたものが、後続の研究によって再検証されないままに引用されてきたものである。それらは必ずしも批判に耐えうる資料や調査に立脚していなかったということが、最近明らかになりつつある。
 また明治時代以降も、現代にいたるまで、アイヌの人たちは近代と伝統とを調和させた自分たちの文化を築くべく努力を続けてきた。そして現在も、周囲の和人と同じく日常の生活を営みながら「アイヌである」ことの意味あるいは「アイヌ文化」とは何かについての模索を重ねているのである。
 アイヌ文化についての過去の学説を無批判に参照すること、その歴史的な変遷を軽視すること、そして何よりも、一見理解者であるかのような態度を取りながら結局は簡単なラベルを貼って安心してしまうこと、はいずれも、和人にとって、自己の日常の利害や生活から切り離されたところにアイヌ民族を置いておこうとする姿勢にほかならない。右に「人間軽視」と述べたのはこの意味である。
 梅原猛氏のアイヌ語・日本語同系論のような、その論拠を少し観察すればナンセンスだとわかる説が、なかなか一般への影響力を失わないことも、アイヌについて通りいっぺんの理解で満足してしまう現在の社会状況を反映しているといってよい。
 では、こうした事態に対して大学は何をなしうるだろうか。文化人類学を基盤とするかたちでの研究・教育システムは、この点でほとんど無力といってよい。右に批判したようなこれまでのアイヌ文化の像は、主に文化人類学者たちによって提示され、継承されてきたものであった。そして、同じ学問の訓練を受けた若い研究者がアイヌ文化を論じた著作は、文化を眺める視点―この視点に敏感になること自体は理論的基盤として重要なのだが―を批評的に論じることに満足し、自説の根拠を実証的に再確認することをやはり怠っている。
 こういう状況のなかでわれわれは来年度から、考古学を基盤とした物質文化研究、文献の読解・分析に基づいた歴史研究、聞き取り調査を行いながらの精神・生活文化研究、の3つの方法論を訓練する新たな授業科目を設置する計画である。
 その第一の目標は、地に足を踏まえ事実を追う力を身につけながら、アイヌ民族の歴史を含む北海道の歴史を考える力を養うことに置かれている。しかし最終的な目標は、いうまでもなく、本稿が冒頭から批判してきたような人間軽視の文化観・歴史観を克服し、文化を営む人間そのものを重視する姿勢を身につけることである。



臨床心理学科新設計画について
- 2001年4月開設をめざして -

 人文学部ではすでにご案内のように純増による定員90名の新学科「臨床心理学科」の平成13年4月の開設に向け鋭意準備を進めているところである。すでに4月21日および7月24日に文部省に赴き設置認可申請書を提出している。今後順調にいけば本年12月中には認可になる見通しである。新学科の担当教員は現在の人間科学科の発達と形成コースに係わっている教員が大部分移動する予定である。純増による新学科設置であることからこれまでの学部学科はそのまま維持され人間学部全体の教員組織も大きな変貌を遂げざるをえず現在その作業が進行中である。

臨床心理学科の基本理念

 本年4月臨床心理士やスクールカウンセラーの養成を目標として臨床心理学研究科が開設された。「心の専門家」の養成に大学院教育が必須とされてきているからである。新学科の開設は研究科開設の趣旨をふまえ、学部段階の基礎教育を充実させ、学部・研究科を一貫させた高度の専門教育を実施しようとするものである。様々の社会要因を背景とした心の問題の噴出は広い視野を持った心の専門家を要請しており、学部教育の充実が求められている。

臨床心理学科の特色

 新学科の特色は専任教員9名のうち8名が臨床心理士という臨床心理学に特化した教員陣容にあるといえよう。このことによって学科の名称も臨床心理学科となり得たし、また実際の教育内容にしても実習教育を重視した、しかも学生の自由選択の幅の大きいカリキュラムを可能にしている。臨床心理学の学問領域はその対象としての乳幼児から成人・老人に至る様々の発達段階や障害者そして援助技法としての査定や様々の心理療法を含むが、そのほとんどの領域を網羅したカリキュラムが準備されている。たとえば心理療法に関しては深層心理学・クライエント中心療法、行動療法・芸術療法、遊戯療法の5科目が用意され、また実習も臨床心理学実習A〜Fの6科目が用意されている。学生はそれぞれの興味・関心に従って心理臨床の基礎・応用・展開へと学習を進め、一貫した知識を習得してゆく。学部卒業後は臨床心理士を目指した大学院進学の道ばかりでなく、教育・福祉・医療さらに民間企業にあっても、心に係わる十分な基礎教育を生かし、各領域で人間尊重の立場に基づいた活躍をすることが期待される。
(池田光幸)



大学院臨床心理学研究科の教育始まる

 大学院臨床心理学研究科における教育が本年4月からスタートした。一期生として入学した10名は全員女性であり、年齢別の構成は、20代3名、30歳以上7名となっている。
 学生たちの入学前のキャリアは多彩である。例えば心理学系学科を卒業後福祉現場で10年余り働いた後に入学された方、英文学系学科の卒業者であるが、社会の中で心理臨床とも関わりの深い社会活動に携わってこられた方。大学卒業後一時心理臨床の仕事に携わったが、その後家庭に入り長年主婦として働いておられた方。外国の心理学科を卒業後本研究科に入学された方など。また、今春4年制大学を卒業した人は三名で、いずれも心理学専攻者である。そのうち2名は数年以上社会人として他分野で働いた後に大学に進み心理学を学んでいる。10名の学生は、全員『臨床心理士』資格の取得を目ざしており、勉学に対する意欲はきわめて高い。
 本研究科では、大学院生は、各自の志望に基づいて専修科目(特講・演習)を一つ選択し、その担当教員から研究指導(修論指導)を受ける仕組みになっている。現在、「精神保健学特講・演習」担当の小片基教授の下に4名、「脳障害心理臨床特講・演習」担当の小山充道教授のゼミに3名、そして「児童・青年期心理臨床特講・演習」担当の清水信介ゼミに3名の学生が所属し、それぞれ修士論文のテーマを固めるべく奮闘中である。学生の中には入学前からかなり具体的な研究計画を持っていた者もいるが、多くの者はテーマを来年二月までに確定することを目処として進んでいるようである。
 1年次の授業が半分終わって、学生たちも大学院生活に大分馴染んできたという印象を受ける。後期に入ると、2年次の「臨床心理実習」を視野に入れた、いくつかの準備教育が予定されている。心理臨床家の卵として体験的な学習を徐々に重ねながらたくましく成長していくものと期待している。
(清水信介)



人間科学科のカリキュラム改革

 99年度末より検討してきた人間科学科カリキュラムの改定作業はその大枠が承認され、新年度導入に向けた具体的な作業が教務委員会を中心に行われることになった。
 今回の改定の基本的要件は以下のとおりである。

  1. 人間科学科の設立趣意を継承する。
  2. 学生定員、専任教員定数など、現行の要件を継承しつつ、1大学院臨床心理学研究科、臨床心理学科の新設にともなう心理系スタッフの移動、2全学共通教育の再編と人事再配置計画の進展、3定年退職などによる退職者の増加、などの存立条件の変化に対応したプログラムを編成する。
  3. 全学的なセメスター制への移行に対応しつつ、より効果的な授業形態、バランスの良い科目数・単位数の配意を目指す。
  4. コース制を廃止して学科一本のカリキュラムとし、自由度の高い履修を可能にする。
  5. 社会、福祉、心理、文化を基本領域とし、教育・教職、体育・健康、思想、哲学などの諸領域とも結合した学際的な編成を目指す。

 以上を踏まえた今回の改定では、必修と選択必修で現行より各2単位増加したが、選択科目が34単位減少し、過大が問題となっていた科目数と単位数については一定程度の削減を果たすことができた。

 基幹科目群(必修科目)では人間学概論に代えて人間科学基礎論の設置、1年次の基礎ゼミナールの開講形態の変更(前期は教員5人による輪番制の講義、後期は演習方式)に加え、2年次の演習、3年次の総合演習の新設などが特色である。現行の基礎ゼミナール・専門ゼミナール・卒業論文に新たに2つの演習形式の授業が加わったことにより、双方向授業・学生参加型授業に厚みがますとともに指導上の継続性が確保されたことになる。

 基本科目群(選択必修)では、基本領域から出された概論科目を核に、それに対応する研究法・実験・実習を設置した。これに資格課程(社会教育主事・学芸員・社会福祉士)の実習が加わるので、必要に応じて広い分野にまたがった体験的・実務的学習が可能になる。
 学科一本のカリキュラム編成によって、現行並の専門性を求める履修を保障しつつ、今以上に学際的な履修を可能にする点が、改定の目玉の一つとなる。学生が何を求めているのかを掘り起こし、それを指導し支援する場としても、1・2年次のゼミは重要性を増すことになるだろう。
(人間科学科 鶴丸 俊明)



2000年度前期末 学位記授与式

新たに11人が卒業

 本年度前期末学位記授与式(卒業式)が9月28日、本学で挙行された。全学部で44人に学位記が授与され、めでたく卒業となった。
 人文学部では人間科学科9名、英語英米文学科1名の計10人となった。式では、各学部長より一人一人に学位記(卒業証書)が授与された。式後の祝賀会では学長や教職員からの励ましを受けて、思い出深いキャンパスをあとにした。これで学士の学位を授与された人文学部の卒業生は、4,064人(人間科学科・2,810人、英語英米文学科・1,254人)となった。


2000年度
  人文学部夏季集中講義
  公開講座・北海道文化論  

『北海道と国際交流』 心の国際化を目指して

 様々な分野で20世紀を振り返り、来るべき新世紀への展望を模索する試みがなされているが、北海道におけるこれまでの国際交流活動をふまえ、今後の展望を探る本学部主催の公開講座が次の日程と内容で実施された。人間科学科の学生を中心にのべ500名の学生と48名の一般市民が熱心に受講していた。



9月4日
北海道における国際交流とその理念 人文学部英語英米文学科 宮町 誠一

9月5日
「国際住民」に対し21世紀の日本・北海道のあるべき姿 北海道情報大学 アルドウィンクル・デビット

9月6日
わたしたちの街江別ではじめた国際交流 前江別市民国際交流協会会長 山岸 民千世

9月7日
大学に外国人留学生を受け入れて 北海道大学留学センター 関 道子

9月8日
十勝圏の国際交流 ―ある英会話学校の挑戦― ジョイ・インターナショナル代表取締役 浦島 久

9月9日
シンポジウム…21世紀の国際交流―その実践と理念―

 最終日のシンポジウムでは講師全員がそろい、それぞれの主張の補足・解説を加え、聴衆からの質疑応答も活発になされた。公衆浴場や飲食店における外国人排除の問題、道内の市町村と小中高における国際交流の極端な西欧偏重の実情、官主導脱却への方策なども検討された。また、アルドウィンクル氏が講義の中で指摘された日本の閉鎖性、排他性については学生からの反応が際立っていた。特に在日外国人に対する差別的報道、戸籍や住民票における侮辱的な取り扱い、また、帰化申請に対する納得しがたい対応など、今後の課題が浮き彫りにされた。この講座の内容は『フォーラム人文』にまとめて今年度中に出版される予定です。
(コーディネーター宮町誠一)

人間科学科
文化論特殊講義B

 今年の文化論特講B(比較文化論)は、本学との間で学生の交換留学を行っている沖縄国際大学から文学部教授・小熊誠先生をお招きして開講した。北海道らしからぬ蒸し暑さが続くなか、8月28日から6日間の集中講義を無事終了した。
 文化人類学専攻の小熊先生の講義は、沖縄の地理的諸条件、沖縄がヤマトと東南アジアと中国から影響を受けつつ複合的な文化を独自に発展させて行ったことの説明から始まった。そして、沖縄の祭り、祖先崇拝と親族制度、中国文化の影響を強く受けた風水の思想、死霊結婚、久高島に伝わる宗教的儀式へと広がっていった。学生に質問して挙手させたり、質問票に丁寧に答えたり、また沖縄特産の黒砂糖菓子を配ったりしながらの親しみやすい講義であった。
 お忙しいなか、遠方にもかかわらず講義を快くお引き受けいただき、熱心にお話しくださった小熊先生に心より感謝申し上げたい。そして、沖縄国際大学と本学との交流が今後ますます発展することを心から願ってやまない。
(奥谷浩一)

英語英米文学科
アメリカ特殊研究B

 今回の夏期集中講義アメリカ特殊研究Bは、東京大学アメリカ研究センター助手の菅美弥先生をお迎えして開講されました。菅先生は若手移民史研究者として、学会でも活躍が期待されているかたです。
 授業では、最新の多文化理論を初学者向けに簡潔、丁寧に紹介し、その上で移民やマイノリティをみるアメリカ社会のまなざしの変遷について、ビデオを利用して説明しました。受講生の多くは、菅先生の質問攻勢に最初は戸惑いながらも、現代アメリカ社会が抱えるマイノリティの問題について、理解を深めることができたようです。
 菅先生は、受講生は当初は一般理論を消化することは難しいようだったが、逆に事実関係から一般理論を導くのが非常にうまく、その中で自分は移民研究の新しい可能性を発見した、と感想を述べておられました。
 最先端の移民研究者を迎えたことは、学生にとって大変意義のあるものでした。同時に菅先生の今後のご研究に受講生が大きな刺激を与えることができたこと、すなわち大学の理想である双方向の成長を実現できたことを、心強く思います。
(平体記)

アメリカ特殊研究C

 夏期集中講義アメリカ特殊研究Cでは、立教大学教授野田研一先生をお迎えして、アメリカ文学と文化の形成に自然環境および自然の概念が担ってきた役割と意味について学びました。またネイチャーライティングという新しい自然文学の様式について考えることもできました。
 授業では19世紀・20世紀のアメリカの詩やエッセイに現われた「自然」の歴史的・観念的推移と人間と自然との関わりを考えました。本来、自然とは人間の手の入っていない未開の土地の筈なのに、私達は人間の都合に合わせて住みやすく美しく改造して、文明化された自然を本当の自然と誤解していたのだと、野田先生の講義を通して理解することができました。「人間も自然の一部なのに、作られた自然の中に暮らす私達は自然本来の を失っているのではないか?」という先生の言葉はとても印象的でした。この講義で、私は人間は自然の中で生かされていることを再確認すると同時に、私の概念の中の自然が文明化された自然であったことを痛感させられました。
(英語英米文学科 3年 三浦 由里子)



人文学部合同講演会について

 平成12年6月2日、難病連の伊藤たてお氏と山道直樹氏をお迎えして「人間みな同じか」というタイトルで講演会が行われた。伊藤氏は難病連のパンフレットや資料をもとに、現在の難病連の啓蒙活動や支援活動について具体的に話をされた。他方山道氏は、患者としての自立にともなう苦労や施設整備などの要望についての話であった。
 学生の感想には「普段あまり意識をしたことのない環境設備や国民年金加入などの実状を聞いて驚いた」「難病罹患率2〜3%という実態を人ごとではないと感じた」というものが多かった。多くの学生にとっては、現代医学の急速な進歩によってもなお2百種から3百種の病気には明確な治療法が確立されてはいないという現実を講演によって初めて知るというよい機会になった。また、今回山道氏が難病を抱えながらも努力して仕事に通い、生き生きと生活しておられる姿を間近に実際に感じられたことは、「生きること」に対する学生の意識をより高めたように思われる。また、講演の参加者には、ボランティアに関心の深い学生も多く、高校などでの体験者も多かった。講演はその彼らに「自分にできることは何か」を考えようという姿勢を強めたようだ。「ちょっとした親切が多くの人を支えることになることがわかった」「難病とはそれにかかった本人のみならず関係する人すべてにとって難しいものだ。難病者の家族にも声をかけていきたい」という学生の声は、学生たちのより積極的な面を引き出した成果だと思われる。
(徳田仁子)



韓国東国大学生との交流
- 本当の国際交流 -

 「アニョンハセヨ」。私はこの言葉で歓迎委員会代表の挨拶を始めた。このような体験は初めてで、それまでに味わったことのない緊張で一杯だった。これからの一週間はどうなるのだろうという不安も拭えなかった。
 今回私達委員会が行った主な仕事は、東国大学生達にできるだけ有意義な時間を過ごしてもらうことを根底に、一週間のプログラムを組み、実行することだった。その内容は次の通りだ。私達が先生になる「日本語レッスン」、学内を案内する「キャンパス・ツアー」、私達が韓国料理を習いながら交流を図る「食文化交流」、英語による自由な会話を楽しむ「オープン・ディスカッション」、学院大YOSAKOIチームの指導で踊りを体験する「スポーツ交流」「札幌市内観光」である。それぞれのイベントの責任者を決め、必要に応じてボランティアを募り、打合わせを重ねて実行に移す準備が整った。それでも準備に不足はないかと不安は残して初日が始まった。
 日本語レッスンを皮切りにキャンパス・ツアー、昼食交流会と1日目が滑り出し、プログラムは予定通り進んでいった。2日目の韓国料理(豆腐チゲと豆腐ハンバーグ)は好評で、生協前での試食コーナーでは、用意した100食以上が十分ほどで品切れになる賑わいであった。また学内最後のイベントとなったオープン・ディスカッションとスポーツ交流での盛り上がりを忘れることができない。ここに参加した全ての人々が積極的に言葉を掛け合い、踊りに加わって楽しい「時」を共有できた。特にボランティアの人々の積極的な姿は感動的であった。
 改善すべき点は色々あるが、私達の第1回目の国際交流は大成功と言えると思う。東国大学生達にとっても彼等を迎えた私達にとっても忘れることのできない素晴らしい経験になったと思うし、参加者全てが、自ら進んでこの交流に加わり心から楽しんだこの経験を、誇りをもって語ることができると思う。
 私は今回の経験を通して、本当の国際交流は、ボランティアの人々が示してくれたように、他から押し付けられるのではなく自ら積極的に交流することから、心を通わせ合う本当の国際交流が生まれるのだと実感することができた。今、私は、私達の第1回目の試みが後輩達に受け継がれることを願っている。
(英語英米文学科 四年 高西 貴幸)



札幌都心部に市民アクティブセンター開設
市民講座に受講者殺到!

 本学は、札幌圏に開かれた大学をめざし、今年5月より札幌都心部に進出して、アクティブセンター(札幌市中央区のSTV北一条ビル別館六階)を開設した。受験生減少と私大の危機が叫ばれるなか、本学が江別市だけにとどまらずに、札幌を対象として諸活動を行い、本学の教育・研究と教授陣をPRするとともに、市民・高校・企業・同窓生から情報をいち早く受信・発信するための前進基地をつくることがその趣旨である。
 5月からここで開講した市民講座「コミュニティ・カレッジ」の前期は、一般教養6講座、パソコン講座8コースで始めたが、のべ540名(そのうち、本学同窓生107名、本学学生17名、高校生1名)の受講生を集め、パソコン講座は急遽5コースを増設するなど、予想をはるかに超える盛況のうちに無事終了することができた。
 この講座のうち人文学部教員が担当したのは、小片基教授の「心の病を考える」、布施晶子教授の「『ジェンダー』の社会学」、奥谷浩一教授の「自然と人間の共生を求めて」の3講座であった。とくに小片教授と布施教授の講座には定員50名をはるかに超える市民が殺到し、補助椅子を出して対応したほどであった。どの講座でも市民の方々は無心に受講し、真剣な質問も多く、学生相手の講義とはまた異なった緊張感と充実感を講座担当者に与えてくれた。終了後のアンケート調査でも、ほとんどの受講生が受講して良かった、ためになったとの感想を寄せていて、講座開設が市民の注目を集めただけでなく、生涯学習の要求に応えることに貢献しえたことを示している。同窓生にたいする受講料半額割引の特典も同窓生との連携の強化に大いに役立った。
 後期講座は10月から開始の予定で、初級英会話を含む一般教養5講座、パソコン講座11コースを用意した。とくに人文学部臨床心理学の池田光幸教授、奥平洋子教授、徳田仁子助教授、岩壁茂講師による「現代社会の中の心理学―心の健康と臨床心理学」は、本学臨床心理科の開設に合わせて開講されるほか、通信衛星を利用して全国に放映するという本道初めての試みでもある。後期の申し込み受け付けと同時に、この心理学の講座が定員超過となり、英会話には定員の4倍もの申し込みが殺到するなど、嬉しい悲鳴をあげている。肝腎なことは、来年以降もこうした流れを維持し続けることである。人文学部の教員諸氏には今後も格別の協力をお願いしたい。
(奥谷浩一)



人文学部Web サーバー新設

 人文学部ウェブ・サーバーを新設しました。公式アドレスは<http://jinbunweb.sgu.ac.jp>です。札学<http://www.sgu.ac.jp>は大学の顔ページの役割を果たしていますが、とても機密性の高いものです。インターネットの双方向教育方法の開発と活用にはより柔軟なサーバーが求められます。新設された"人文ウェッブ"は教授用、セミナー用、グループ用として活用できる柔軟性を備えています。下記の4種類です。
  1. SGU's/hum/ページ(管理者が管理し、ニュース、発行物、等々を取扱う。)

  2. 人文ウェッブ/スタッフ/ページ(教授が管理し、リサーチ・ページ、教授ページ用。)

  3. 人文ウェッブ/セミナー/ページ(学生が管理し、授業ページ用)

  4. 人文ウェッブ/グループ/ページ(関係bグループページで、OBG、学生委員会、リサーチ集団用。)

 新システムのパスワード希望の方、ご提案をお持ちの方は管理者ダン・ヒンクルマンまでご連絡ください。
(管理責任者 ダン・W・ヒンクルマン)



心理臨床センター 第六回公開講座
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「こどもとの出会いと関わり方 〜学校で相談活動を行うための工夫」を開催

 小学校から高等学校までの教員を対象とする公開講座が、7月31日、8月1日の両日にわたって本学で開催された。教員70名、スクールカウンセラー10名、教育委員会関係者を含む他10名で、合計90名が参加した。講座運営にはセンター受付担当者2名、大学院生9名、心理臨床を専攻する学部室2名、心理臨床系教員8名、心理臨床センター事務職員1名があたり、合計102名が公開講座に関わった。参加者は北は名寄、東は釧路、西は岩内、そして南は函館と全道にわたった。今回から公開講座は、講演・シンポジウム・事例検討会を加えたものとし、年1回実施とした。
 初日には、「スクールカウンセリングの体験から」(徳田仁子助教授)、「学校に相談活動がねづくためには」(名古屋・心理相談室"こころ"室長)の二つの講演が行われた。翌日は午前に「学校の中での相談活動の実際とその工夫」というテーマでシンポジウムが組まれた。佐藤渉教諭(札幌市立北陽小学校)、友田龍多臨床心理士(リュウ心理臨床オフィス)、開邦光スクールカウンセラー(北海道立寿都高校)、小山祐子養護教諭(岩見沢市立光陵中学校)の4名のシンポジストと、指定討論者として岩村由美子スクールカウンセラー(東京都新宿山吹高校)が加わり、熱心な討論が行われた。午後は高等学校、中学校、小学校の三つの部会に分かれ、シンポジストと指定討論者と本事例をもとにした検討会が実施された。講座終了直後に実施したアンケート結果は、両日が真夏日であったため、冷房設備が欲しかったという声があったことを除けば、そのほとんどが好意的なものであった。
 以上、今夏の公開講座も盛会のうちに終了した。来年度は冷房設備のあるG館での集中開催を計画中である。心に関心のある道内の学校教師の研修の場としての役目はさることながら、次年度開設予定の臨床心理学科、大学院臨床心理学研究科をアピールするためにも本講座が道内に広く定着しつつあることは喜ばしいことである。
(小山充道)



人文学部JOB支援システムの設立

 今年の5月上旬、支援システムにEメイルで人文学部の女子学生から喜びあふれる内定報告が入った。彼女は支援システムの開催した勉強会に参加し、その後も第一次面接に合格したあと、助言を求めてEメイルを送ってきた学生であった。
 1999年11月に、社会の各分野で活躍している人文学部卒業生の相互協力の下で、教員有志も加わり現学部学生の就職支援のために「人文学部JOB支援システム」が設立された。
 設立趣旨は、学部OB・OGと現在の学生との交流の場を設定し、低迷している就職状況の中で、社会の現実の動向と就職活動の意味を、お互いの立場から情報発信し対話していくことにある。安易にフリーター志向に流れるのではなく、学生に仕事の意識、就職することの自覚を明確につかんでもらうことをめざしている。
 これまで2回開催したガイダンスを含む勉強会をこれからも開いていく。さまざまな分野で活躍している同窓生会員を拡大し、相互の情報交換にシステムを活用してもらうと同時に、学生を支援するネットワークを構築したい。新たに設置された学部独自のサーバーを活用したインターネットを介して活動を推進していく予定である。
(杉山吉弘)



人文学部第I期 〜 V期合同同窓会の開催

 人文学部卒業生の第I期生から第V期生を対象にした合同の同窓会が本年7月1日(土曜日)に京王プラザホテル札幌で開催された。
 開催されるに至るには3つの契機があった。一つは「人文学部JOB支援システム」という学部卒業生の活動。第2に、1997年に人文学部20周年記念行事を実施するために卒業生・教員有志で発足した「祝う会」の参加者の中に合同の同窓会を開催しようという気運が高まっていたこと。第3に、I期生はこれまで「I期の会」を継続的に、最近は4年に1度、行なってきたが、今年がその開催の年に当たっていたこと。そうした状況の中で、英語英米文学科I期生の宮本巌氏や人間科学科V期生の岩坂明氏を中心に準備が進められ、実施の運びとなった。
 当日は、卒業生のほか、現学部長の杉山、退職された杉本、中野の各先生、酒井、川井、笹岡の各先生、事務局の白鳥忠明氏など、約60名が参集し旧交を温めた。
 道外から駆けつけた懐かしい卒業生の顔もあり、参加できなかった卒業生の近況を伝え合ったり、学部創設期の話に花が咲いた。卒業生は学部の宝であり、学部としても同窓会の活動を今後も大切にしていきたい。
(杉山吉弘)



2000年度学部教員の人事、研究活動等(4/1-9/30)
◎留研
●T・P・Pグローズ 長期在外研究員(2000年4月1日〜2001年3月28日)イギリス・チチェスター大学
'Communication Methodologies in English Language Acquisition'
●酒井 恵真 短期国内研究員(2000年10月1日〜2001年3月31日)沖縄国際大学「周辺地域の比較社会学的研究」
●笹岡 征雄 在宅研究員(2000年10月1日〜2001年3月31日)「日本ボブスレー・リュージュ競技に関する研究」
   
◎海外研究出張
●岩壁 茂 2000年7月24日〜8月30日 カナダ「博士論文執筆と継続の共同研究」
●奥田 統己 2000年5月20日〜5月27日 アメリカ「特別展示見学および資料収集」
●後藤 弘 2000年8月14日〜9月1日 アメリカ「文献収集とアメリカ英語発達の歴史に関わる地域およびハーヴァード大学訪問」
●坪井 主税 2000年8月9日〜8月16日 ノルウェー・ポーランド「国際平和史学会参加とジャン・デ・ブロッホ協会との共同研究打合」
   
◎人文学部教員出版物
●菅原 秀二
(分担執筆)田村秀雄編著『千年王国論―イギリス革命思想の源流』研究社出版
2000年5月198頁3,000円

(分担執筆)岩井淳・指昭博編『イギリス史の新潮流―修正主義の近代史』彩流社
2000年7月247頁2,500円

●北爪 真佐夫
(分担執筆)新妻二男・内田司編『都市・農村関係の地域社会論』創風社
2000年4月1,900円

●富田 充保
(分担執筆)門脇厚司・久富善之編著『現在の子どもがわかる本』学事出版
2000年9月273頁1,800円

●船津 功
(分担執筆)山川出版社県史1『北海道の歴史』
2000年9月322頁1,900円

●酒井 恵真
(分担執筆)地域社会学会編『キーワード地域社会学』ハーベスト社
2000年5月348頁2,900円

◎委嘱発令
●奥田 統己
 国立民族博物館共同研究員国立民族博物館(2000年4月〜2001年3月)

●奥平 洋子
 北海道大学教育学部附属乳幼児発達臨床センター研究員北海道大学教育学部(2000年4月〜2001年3月)

●奥谷 浩一
 北海道自然保護協会理事北海道自然保護協会(2000年5月〜2002年4月)

●小山 充道
 社会福祉士(国家)試験委員及び精神保健福祉士(国家)試験委員(財)社会福祉振興・試験センター(2000年7月〜2002年6月)

●北爪 真佐夫
 「角川源義賞」候補著作推薦委員角川文化振興財団角川源義賞選考委員会(99年以降)

●佐倉 朔
 母と子のよい歯のコンクール中央審査委員厚生省健康政策局(2000年9月〜2000年11月)

●笹岡 征雄
 江別スポーツ振興財団評議員江別市スポーツ振興財団(2000年6月〜2002年5月)

●鶴丸 俊明
 北海道埋蔵文化財センター評議員北海道埋蔵文化センター(2000年5月〜2002年5月)

●徳田 仁子
 スクールカウンセラー札幌市教育委員会指導部(99年4月〜2001年3月)

●富田 充保
 全国私立大学職員課程研究連絡協議会代議員全国私立大学職員課程研究連絡協議会(2000年5月〜2002年5月)

●坪井 主税
 北海道地方自治研究所理事北海道地方自治研究所(2000年4月〜2002年3月)
 基金賞選考委員日本平和共同ジャーナリスト基金(2000年4月〜2001年3月)
 「平和研究・教育奨励」懸賞論文審査委員北海道平和共同研究会(2000年4月〜2001年3月)

●中川 文夫
 北海道高等学校英語教育研究会役員北海道高等学校英語教育研究会(2000年4月〜2001年3月)

●松本 伊智朗
 北海道教育モニター・アドバイザー北海道教育庁企画総務部総務課(2000年7月〜2001年3月)

◎研究助成
●岩壁 茂 ホクサイテック若手研究者奨励補助金「心理治療における作業同盟の確立過程の実証研究」(40万円)
●奥田 統己 文部省科学研究費補助金(特定領域研究A)「環太平洋の『消滅に瀕した言語』に関する緊急調査研究」「北海道を中心とするアイヌ語諸方言の記録」



編集後記

 表紙には、昨年度在宅研修を終えられた奥田教員の寄稿による「人間重視の文化研究をめざして」と題する一文を載せた。アイヌ文化研究の現状に対する批判と新たな研究上の視点が述べられている。人間科学科再編は、基本枠が決まり、その具体化の柱となる臨床心理学科の新設と人間科学科のカリキュラム改革の作業が進行中である。その一端の紹介記事を掲載した。
(生田邦夫)