2001・10・1 No.15



葬儀は旧人から始まった
佐倉 朔 Hajime Sakura

 ここに掲げる写真は1961年に西アジアのイスラエルとシリアに挟まれたティベリア湖(聖書に出て来るガリラヤの海)の北方にあるアムッド谷の遺跡で発掘されたネアンデルタール人の全身骨格である。
 発掘は日本の調査団による初めての海外更新世人類遺跡調査であった。発見のニュースは即座に日本に伝えられ、筆者が撮影したこの写真とともに、朝日新聞の第一面に全段ブチ抜きの記事で報道された。
 写真は発掘現場での人骨の出土状態を示し、頭部は上方、胴体は左側、下肢は下方で膝を折り曲げた形に置かれ、体の左側を下にして「横臥屈葬」されたことがうかがえる。ムステリアン型の石器を含む周囲の地層を検討し、この人骨は旧人の遺体で、中期旧石器時代の生活面を浅く掘りくぼめて埋葬されたことが確認された。
 この例に限らず、旧人段階では死者の遺体が残された仲間によって埋葬されたと推定される人骨の発見例はかなりの数に上っている。しかし、旧人より前の原人および猿人の段階では、まだ確実なものは一つもない。
 遺体の埋葬にあたって何らかの葬儀が行われたらしい証拠も少数ながら発見されている。例えば、アムッドと同じ西アジアの、イラクのシャニダール遺跡で発見された人骨の一体では、七種の色とりどりの美しい花の花粉が周囲に密集していたことから、これらの花は葬儀に際して遺体に手向けられたものと推定された。発掘を指導したアメリカ調査団のソレッキーは「The First Flower People」という本を書き、シャニダール旧人の人間的な心情について述べている。
 これまでに得られた知見から、現代人(新人)にも見られる葬儀の風習は、人類の進化の過程において、旧人の段階で出現したものと考えることができる。人類は数百万年の昔から、猿人・原人・旧人・新人の段階を経て進化し、時代的に身体形質と生活・文化を発展させて来た。旧人はそのうち約20万年前から4万年前までの、新人に移行する比較的新しい段階に相当する。各段階を通して人類の進化を概観すると、脳の増大と咬器(歯・顎骨・咀嚼筋)の退化という二つの主要な傾向のあることが分る。しかし脳の増大の方は旧人段階で極点に達し、頭蓋容積から推定される脳の大きさは、固体差はあるものの中央値では、旧人と新人に差がない。
 この事実から人間性の基本となる高度の精神機能、学習能力や知能などの行動能力において、旧人はすでに新人と同程度の水準に達していたと見るのが自然であろう。このことはまた、先史学・考古学的な知見から推測される彼等の精神生活からも裏づけられる。その中には、多種多様な剥片石器を製作する文化があったこと、シカやカモシカなどの敏捷な動物を狩猟するための多人数の共同作業が可能であったこと、身体障害者への扶助があったこと、そして、葬儀の前提となる死の認識がある。
 筆者は昨年、日本人類学会の進化人類学分科会シンポジウム「死の歴史と進化」に招かれ、「死の認識と葬儀の発生」と題して講演した。その内容は右に述べたことを含むが、結論を言うと、動物の中で明確な死の認識をもつのは人間だけであり、そこから葬儀というきわめて人間らしい風習が必要になった。
 旧人と新人をホモ・サピエンスと呼ぶのは故あることである。


 
新時代に挑戦し続ける人文学部
― 三学科体制で新たな出発 ―
 

人文学部長 杉山 吉弘

 人文学部は、2001年4月から三学科体制に再編成された。従来の英語英米文学科(学生定員70名)と人間科学科(定員130名)に加えて、今年度新たに道内初の臨床心理学科(定員90名)が創設された。
 また人文学部に関連した大学院として、臨床心理学科を基盤とした大学院臨床心理学研究科が、昨年4月に開設され、今年になって道内唯一の臨床心理士資格取得の第一種受験資格大学院に指定された。
 人文学部は「人間とは何か」という問いに挑戦するために、1977年に創設された。その設立趣意書で「真に人間尊重の立場に立つ総合的な人間の科学と、それにもとづく教育システムの創造」を謳っており、これまで地域社会に貢献しうる人間的・実践的な人材の養成にたえず努め、学生に生きる希望を培ってきた。
 今や人文学部は、新たな時代の要請に応えて、新世紀にふさわしい三学科構成の夢多き学部として新たに出発することとなった。

 新世紀を拓く 英語英米文学科

 英語英米文学科は21世紀の新時代に対応すべくここ数年で大きく変貌してきた。
 高度情報化社会の到来と国際化の進展によって、コミュニケーション手段としての英語の重要性は増大しているが、学生の活性化と進路を重視して、コミュニケーション科目の新設やインターネット活用などの多彩な授業科目によって英語運用能力の向上に努めている。さらに最先端のコンピュータ支援つき語学学習機器や多くのネイティブスピーカー、徹底した小人数教育など、英語学習にとって最良の環境が整備されている。
 そして本学科の最大の特色は、全学の学生を対象とした短期・半期留学制度とは別に、学科独自の半期海外留学プログラムを専門カリキュラムのなかに位置づけていることである。米国と英国に加えて、オーストラリアヘの留学制度も来年度から実施される予定である。
 伝統的な英文科の殻を完全に脱皮して、国際社会のコミュニケーション手段としての英語とその背景文化を集中的に学ぶことによって、学生は新時代を生き抜くパワーアップを図ることが可能であり、また英検など各種の資格講座を開講している「エクステンション講座」を活用すれば、更なるパワーアップが可能である。

 今こそ人間科学科の時代

 人間科学科は道内唯一のユニークな学科としてすでに20年以上の実績を積み上げてきたが、混迷する新世紀を迎えて、学際的教育を志向するその存在意義はますます大きくなってきている。
 このたび臨床心理学科の新設を契機に、人間科学科は社会の新たな要請に応えるべくカリキュラムを改革した。とりわけ資格との関係をも重視して、「福祉」と「文化」(特に「北海道文化」)の領域の拡大を図り、「心理・教育」領域では臨床心理学科との同時開講科目を多数配置し、大学院進学希望者に必要な科目も整備した。
 改革の要点の一つは、従来のコース制を廃止して、学科一本のカリキュラムにすることによって、学生の主体的な関心を喚起すると同時に、各種のアプローチを可能にするために「社会」「福祉」「心理・教育」「文化」「思想」の五領域を提示したことである。そして改革の力点は、対話型・双方向型の教育方法を全学年にわたって徹底し、課題発見的・課題解決的教育をめざすことである。
 人間科学科には、自分の生身の身体を動かしながら、現場で考える、という教育の伝統がある。このたびの改革はそうした学科の教育方針を更に充実し徹底させることになる。
 また人間科学科の一つの大きい特徴でもある諸資格課程(教職、社会福祉士、社会教育主事、学芸員)との関連も強化され、更に教職「福祉」を2002年度から開設するため、現在申請を準備中である。

 「こころの時代」に応える道内初の臨床心理学科

 2001年4月新たに開設された臨床心理学科は、道内の高等教育界に鮮烈な新風を巻き起こした。社会的な要請の大きさと学生の期待の高さは、今年度の入試状況からも明かである。
 ほとんどが「臨床心理士」資格をもつ専任教員スタッフの陣容と専門カリキュラムの充実、そして「心理臨床センター」を擁する関連実習施設の充実は、道内随一である。
 「臨床心理士」第一種受験資格大学院に道内で唯一指定されている大学院臨床心理学研究科との一貫教育も大きな魅力である。「こころの専門家」としてスクールカウンセラーなどへの道が開かれている。
 さらに一般企業の産業カウンセラーやさまざまな医療・福祉施設への進路など、幅広い分野で活躍することができる人材の養成をめざしている。
 人文学部の三学科は相互の連携の下で新たな船出である。

人文学部合同講演会

 恒例の人文学部合同講演会が去る7月13日(金)三講時に開催された。これは人間科学科と英語英米文学科の新入生を対象にして、毎年、実施されているものである。
 今年度は、新入生にとって大先輩にあたる小泉昌弘氏に講演をお願いした。小泉氏は本学人文学部の第一回卒業生で、現在、北海道建設新聞社に勤務し、新聞記者として活躍されている。小泉氏はあいにく、風邪のために体調不良であったが、約一時間にわたって「魅力度を高める」と題して、熱弁を振るわれた。
 いわゆるバブル経済崩壊後の長期不況のもとで、良好な雇用のチャンスがかなりの程度、減少している。そのために、大多数の学生にとっては、就職こそが最大の問題であろう。来たるべき就職活動に備えて、早い時期から資格習得に励む学生が少なくないのはそのためであろう。就職予備校化する大学が出現し始めているのもそのためであろう。
 資格の取得それ自体は否定すべき事柄ではない。しかし、大学卒業者にふさわしい教養や知的好奇心、思考能力、さらに対人能力といった内容が伴わなければ、たんなるノーハウの習得に堕する危険性がある。「魅力度を高める」ことはこの点と無関係ではないであろう。ともあれ、新入生には自己を見つめ直すきっかけになったと思われる。
 なお、臨床心理学科の一年生は時間割の関係から、今回の講演会に参加することができなかった。後期の合同講演会は主に臨床心理学科の学生を対象にして開催する予定である。
(湯本 誠)


2001年度前期末 学位記授与式
- 新たに9人が卒業 -

 本年度前期末学位記授与式(卒業式)が9月27日、本学で挙行された。全学部で33人に学位記が授与された。
 人文学部では人間科学科5名、英語英末文学科4名の計9人となった。式では、各学部長より一人一人に学位記(卒業証書)が授与された。式後の祝賀会では学長や教職員からの励ましを受けて、思い山深いキャンパスをあとにした。これで学士の学位を授与された人文学部の卒業生は、4,279人(人間科学科・2,962人、英語英米文学科・1,317人)となった。

人文学部一年生体育大会

 2001年6月22日に人文学部一年生体育大会が行われました。初めにこの企画を聞いた時は、大学生にもなってみんなで汗を流してスポーツを一生懸命やる人なんでいないと思っていました。もちろん私もヤル気ゼロでした。
 そんな私が実行委員長となって体育大会の実行委員会がスタートしました。とは言っても実行委員長というのは名ばかりで、他の実行委員たちが、それぞれの種目のルール浜めや必要な道具を集めたり、大会後に行われる歓交会のスケジュール決めや賞品を決めて集めたりと、楽しいイベントにするためにとても忙しそうでした。ヤル気ゼロの私もただ座ってそんなみんなの様子を見ながら、見守っていました。
 そして体育大会当日、行われる日が休日で単位にも特に影響はなく、ほとんど参加者がいないのではないかと心配していたのですが、意外や意外、考えられない程の人数が集まりました。また競技が始まっても、みんな真剣そのもので、目が血走り、乱闘がおこってもおかしくないくらいの熱気でそれぞれのクラスが一丸となり頑張っていました。その上、選手はもちろん、試合にでていない周りの人たちや先生方も、一緒になって熱い応援をしていました。
 大会が一通り終わった後の歓交会にもたくさんの人が来てくれて盛りあがっていました。中学や高校と違って大学ともなるとクラス単位、学校単位でみんなが動くということが少ないし、歳をとるにつれてどんどん減っていくと思うけど、やっぱり大勢で何かをするということは人間にとってとても大切なことだと思うので、みんなが盛りあがっただけでもこの大会は大成功だと思います。そして、その模様の中心で動かさせてもらって良かったです。
(人間科学科 鎌田 裕次郎)


2001年度
人文学部夏季集中講義
  公開講座・北海道文化論  

『北海道の生活文化』

 「北海道の生活文化」2001年度の北海道文化論は「北海道の生活文化」を総合テーマとして、以下の日程で三、四講時に本学G館(五十年記念館)SGUホールで開講され、テレビ会議システムを用いて札幌萬の札幌学院大学アクティブセンターでも同時放映された。


9月3日(月)
北海道古代・中世史の特徴を考える 札幌国際大学 関口 明
北海道近世・近代史の特徴を考える 札幌学院大学 船津 功

9月4日(火)
北海道の民具 元北海道開拓記念館 関 秀志

9月5日(水)
二十世紀、道民生活百年の衣食住 元北海道開拓記念館 矢島 睿

9月6日(木)
祭りと地域文化 札幌国際大学 森 雅人

9月7日(金)
アイヌの口承文芸 札幌学院大学 奥田 総己

9月8日(土)
北海道の日本語 −ことばに見る北海道らしさ− 札幌学院大学 山崎 哲永

 受講者は各日ともに学生約90名、市民20数名、アクティブセンター約10名であった。
 総合テーマは1993年度実施の北海道文化論「アイヌ文化の現在」の「文化とは生活全部です」という基本的視点を継承して設定され、歴史学、民族学、言語学の立場から北海道の生活文化を考えてみようとするものである。
 各講師の講義は、先住民族のアイヌ文化に和人の移住・開拓で形成されたのが北海道の生活文化であること。具体的にはアイヌ文化、松前文化、ロシア文化、アメリカ文化、移民の母材である本州府県の文化が融合し、北海道民の主体的な選択・努力によって新しい北海道の生活文化が創造されているのだという点でほぼ一致していた。
 歴史学からは北海道史の特徴として北方で米作が困難、先住民族のアイヌ民族の存在、国境地帯であること等が指摘された。民族学からは民具の定義と分類、ソリ、ストーブ、稲作、電化製品など、具体的な民具の紹介、祭りの由来と様態、よさこい・ソーラン祭りの分析などが映像も利用して話された。言語学は録音テープを使用しての講義で、アイヌ文化も当然ながらアイヌ自身の選択で現代に合わせて変化しており、日本語もアイヌ語も、文字を持っていることばもそうでないものも同じ価値を持っていること等が論じられた。
 本年度の北海道文化論の実施にあたっては奥田統己先生、奥谷浩一先生にご協力いただき、大変お世話になりました。
(人文学部・日本近代史 船津 功)

人間科学科
文化論特殊講義B

文化論特殊講義Bについて

 文化論特殊講義Bでは、北海道大学言語文化部の簗田憲之先生をお迎えして日英文化の比較、現在の英国について講義していただきました。地域訛り、階級訛りについての時間では映画や演説など実際の音声を聞いて比較し、また時には先生の留学時代から現在までの英国の風景や街並みをスライドを使用し視覚を通しても教えていただきました。そして、日英間における美意識、歴史認識のズレには考えさせられるものがありました。英国では古き良きものに美を見い出し、それらの歴史文化を継承していくのに対し、日本は現世主義であり断片的な歴史認識であるとのことでした。確かに我々は消費社会においてすぐに新しいものを求める傾向にあります。歴史・文化的建築物さえ簡単に破壊して近代的建物にしてしまいます。今回の講義で日英文化比較を学び日本の伝統継承意識の低さを再認識し、英国のように我々は日本の歴史・文化を継承していく役目を担っていかなければならないのではないかと痛感しました。そしてまた英国の文化を学ぶことによって日本の文化を改めて認識できた絶好の機会であったと思います。
(英語英米文学科三年 角 知行)

社会学特殊講義B

「国際化とエスニシティ」を焦点に

 今年度の人間科学科の社会学特殊講義Bは、神戸大学の浅野慎一助教授をお招きして夏期集中講義として開講した。浅野助教授は北大出身の社会学者で、近年国際的な移民・出稼ぎ・難民などの人口移動や外国労働者の研究を精力的に手がけている新進の研究者である。
 講義は8月27日から9月1日の一週間で、約40名の学生を対象に、詳細な資料を示しての綿密な講義が展開された。
 21世紀を迎えて、世界的規模で人の移動はますます活発化している。日本もその流れの例外ではない。すでに年間1,500万人を超える日本人が海を渡り、人口の1%を超える外国人が日本社会に住むという現実がある。「世界と直接向き合う時代をどう理解するか」は極めて今日的なテーマである。
 講義の前半は、世界の移民・難民問題の現状とその歴史的背景を、米、英、仏、独などの欧米やマレーシアなど第三世界の事例に即して紹介された。そしてこれらの諸国における「民族と国家」をめぐる諸問題の根深さと困難さを指摘された。また、後半では、日本社会に根強い、「単一民族神話」の形成と変貌過程を「近代日本」形成史に即して明らかにされた。そしてその虚構性を鋭く批判しつつも、日本社会の国際化の中でその終焉が来ていることを強調された。
 受講生は少なかったが、熱心な質問も多数出て、あらためて「国際化する日本」を世界的視野から考える上で、大きな示唆を得ることが出来たと思われる。
(酒井 恵真)

英語英米文学科
イギリス特殊研究A

イギリス特殊研究の紹介

 16世紀の宗教改革後、イギリスではプロテスタンティズム、とりわけピューリタニズムが浸透し、17世紀には「市民革命」といわれるピューリタン革命をむかえる。本講義では、M・ヴェーバーやE・トレルチらドイツ人学者によって提起された「チャーチ」や「セクト」という集団概念を用いておもに革命期の民衆的宗教運動を分析した研究書、大西晴樹著『イギリス革命のセクト運動〈増補改訂版〉』御茶の水の書房、2000年をテキストとして輪読し、カルヴァン主義という宗教思想と基本的人権・近代資本主義・植民地支配との関連や、「ブリテッシュネス」というイギリスの国民意識とケルト周辺諸国の関連など、近代のイギリスが世界史にもたらした功罪について、履修者のレジュメ報告をもとに教員学生相互に議論した。そこでは、ミルトン、バニヤン、スィフトら英文学史の知識やイギリス都市史や初期アメリカ史の知識のうえに新たな概念的発見がなされたと見受けられ、研究書というテキストの性格上履修者は多くはなかったとはいえ、寒心に取り組んだ履修者には必ずや学問的充足感を与えたものと確信している。
(明治学院大学教授 大西 晴樹)

臨床心理学科
心理臨床特殊講座A

心理臨床特殊講座A

 集中講義「心理臨床特殊講座A」は、北海道教育大岩見沢校平野克己先生のご担当で9月3日より8日まで行われた。講義は「いじめ」をテーマとするもので、第一講「いじめの現状と定義」、第二講「いじめの構造といじめの方法」、第三講「いじめられる側の心の傷と支援」、第四講「いじめる側の心理と援助の焦点」、第五・六講「いじめられる側の心理と援助の焦点」、第七・八講「いじめる子どもの心理面接」、そして第九講「まとめ」、であった。
 まず、いじめの定義として、これまでの文献から「力の不均衡」と「被害の発生」の二つをキーワードとして取り上げ、・自分本位の要求からいじめは始まる・いじめは主体性を傷つけ破壊する行いである・いじめられたとの訴えがあったらそれはいじめである、と明確に定義された。また、いじめをおこしにくくする環境づくりを様々なワークでおこなう方法がVTRで紹介され、平野先生ご自身がスクールカウンセラーとして勤務している中学校教師が、この方法を授業の中に取り入れて成果を挙げた例を披露された。また、いじめられた子どもの心の傷としては、体験の解離やフラッシュバック・感情鈍麻などが挙げられていた。他方、いじめる側へのアプローチとしては、善悪を超えた視点を持つことが必要と指摘し、心理治療実践例を取り上げられた。
 この講座は臨床家ならではの、様々な工夫の一端やヒントが盛り込まれており、臨床心理学科初年度にふさわしい、大変有意義な講義内容であった。
(人文学部・臨床心理学科 徳田 仁子)


『海外留学』

 英語英米文学科「新カリキュラム」による半期留学の第二期生22名が、一年半の準備の後、期待と不安とを胸に留学先へ旅立って行った。特に今年度は、米国で9月11日に同時多発テロ事件が発生し、留学生にもその家族にも大学側にも緊張が走ったが、留学先の担当者から詳細な連絡を受けて安全が確認されての出発であった。目下、予定通りのプログラムが進行中である。今年度は英国・エセックス大学留学希望者も出て、多彩さを増した。この制度が定着し、ますます大きな効果をあげることが期待される。

留学先大学 参加人数
米国・パシフィック・ルーセラン大学 5 0 5
米国・カリフォルニア大学デービス校 10 4 6
英国・エセックス大学 7 3 4
合   計 22 7 15



人文学部心理臨床センター 第七回公開講座
「教育とカウンセリング 〜学校で相談活動をいかすために〜」を開催

 小学校から高等学校までの教員を対象とする公開講座『教育とカウンセリング-学校で相談活動をいかすために』が、7月27日(金)、28日(土)の両日にわたって本学で開催された。講座には養護教員70名、スクールカウンセラー4名、医療関係者10名、教育委員会関係者9名、合計93名が参加した。講座運営にはセンター相談室員3名、大学院生20名、心理臨床系教員8名があたり、合計122名が公開講座に関わった。参加者は北は手塩・稚内、東は芽室・釧路、西は泊・北桧山、そして南は洞爺村・函館からと全道にわたった。昨年から公開講座内容を講演と事例検討会の二本立てとしたが、本年は三つの講演・バズセッション、そして学校則(小学校、中学校、高校)の分科会での事例検討会を加えた。
 初日には、「教育とカウンセリングの接点〜双方の専門性をつなぐには」(中原睦美本学専任講師)、「通常学級内で問題となる経度発達障害の理解とかかわり〜学校に相談活動がねづくためには」(愛知学泉大学後藤秀爾教授)の二つの講演が行われた。中原講師は、参加者に優しく語りかけるように「教師とカウンセラーはともに発達援助者である点は似ているが、教師はほめたり、叱ったり、評価活動に参与したり、集団を統制したりできる。一方、カウンセラーは時間をかけてひたすら聴く、状態像を見立てて内界に関わるという専門性を発揮する。この違いをしっかりとおさえておくことが重要」と明快に述べた。数多くの臨床体験にもとづくわかりやすい話に、多くの参加者がうなづいていた。続く後藤教授は、通常学級の中で障害児理解を図るためにおさえるべきことをまずいくつかとりあげ、「正しい理解と適切な対応は、不要な摩擦や二次障害の発生を防ぎ、実りのある交流を作る」とまとめられた。OHCを用いた具体的でわかりやすい内容だったが、時間が足りず、「もう少し聴きたかった」という意見もあった。
 午後は東京都立新宿山吹高校、岩村由美子生徒相談室カウンセラー、後藤秀爾教授、そして本学心理臨床センター研究員がファシリデーターとして加わり、バズセッションが行われた。バズであることから内容がまとまることを意図はしていなかったが、各グループでは参加者の苦心、苦労、うまく進んだ話など経験談に心をよせ、自分のこととしてとらえていったようだ。全体会でのグループ発表で、その動きがつかめた。
 翌日は午前に「教育とカウンセリング-カウンセリングを学校の中でいかすために」というテーマで、岩村由美子カウンセラーの教育講演が実施された。「つまづきによって一時期に弱まっている心の機能の回復を目指すのがカウンセリングの目的」と位置づけ、こどもが成長するにつれて備えていく力として「待つ力」「洞察する力」「問題解決をする力」を指摘された。事例をもとにした講演は好評で、多くの参加者が真剣に聴いていた。午後は高等学校、中学校、小学校の三つの部会に分かれ、参加者の先生の事例をもとにした検討会が二名の助言者を加えて実施された。具体的には、第一分科会(高等学校)では岩村由美子カウンセラーと北海道札幌開成高校坂口毅教諭が助言者となり、第二分科会(中学校)では北海道教育大学平野直巳助教授と札幌市教育センター教育相談部和田悦明相談員が、第三分科会(小学校)では北海道教育大学森範行助教授と岩壁茂専任講師が加わり、熱心な討論が行われた。講座終了直後に実施したアンケート結果では、講演については「事例に則した講演はわかりやすかった」、バズセッションについては「それぞれの分野の混合で、それぞれの活動がよくわかりました。交流をするということではよかったです」など好意的な意見が多数を占めたが、事例検討会では「事例は興味深いが、先生方の目がなぜ学校の中だけの子どもにしか向いないのは不思議です」「四〜五人のグループ討議など、話し合える工夫をして欲しいと思いました」など、「もっと…」を期待する声が多かった。これらについては次年度の課題としたい。
 本年度は昨年度の反省から初めて冷房設備のあるG館での集中開催を実施した。総じて快適な環境だったが、中には陽が照る窓際に座り「暑い」という人、反対に冷房で「寒い」という参加者もあり、スタッフはこまめな環境調整を行った。
 本公開講座は道内の学校教師の研修の場としての役目をもっていることは周知のとおりであるが、本学臨床心理学科、および臨床心理士養成を目的とした大学院臨床心理学研究科をアピールするためにも、本講座が道内に広く定着しつつあることは喜ばしいことである。次年度はさらに講座内容の充実を図り、臨床的により意味ある公開講座の開催にこぎつけたいと思っている。
(臨床心理学科 小山 充道)




人間学科卒
 鈴木 康夫 氏

 私は、現在児童養護施設興正学園と興正こども家庭支援センターに勤務し、石狩市の中学校でスクールカウンセラーをしています。今回は、興正学園と興正こども家庭支援センターの紹介をさせていただき、このような機関の援助・支援のあり方について私見を述べさせていただきたいと思います。
 児童養護施設興正学園は、現在入所している子どもの殆どに親がおり、家庭の事情や情緒的な問題、発達上の問題・親からの虐待などで入所している子どもで占められています。したがって、基本的人権および子どもの権利保障の場として施設が提供されるべきであると考えられています。業務内容は、入所している子どもに対する養育、入所している子どもの親に対する支援を軸に、個々の発達段階と能力に応じた個別・集団援助プログラムサービスを提供し、人間性の回復・人格の再形成・自己実現に向けて援助が展開されています。
 興正こども家庭支援センターでは、児童相談所をはじめとする、保健・医療・教育等の関係機関と連絡調整を図りながら、問題解決への相談支援活動を行っています。活動内容は、地域の子どもや子育て家庭の福祉に関する諸般の問題について、来所・電話・FAX・インターネットにより24時間体制で相談を受け、来所面接・家庭訪問・適所指導・心理判定などを実施して問題解決の支援を行っています。また、児童相談所からの指導委託を受託し、子どもや家族への支援を行い、緊急に子どもを保護する必要性が生じた場合は、一時保護を行います。
 私は、生活の中にこそ子どもや親の一人一人違う切実な欲求があると考えています。ですからその援助・支援は個々の生活場面を媒体として行われていくのが自然だと考えています。福祉と心理を折衷し、経験を伴う知識・技術がフィールドワークによって提供されるようなきめ細やかな具体的で包括的な支援体制を今後作り上げて行くことが課題となると思います。それは、子ども・親が現代社会で切望している援助・支援のあり方だと思います。

英語英米文学科卒
 出雲 一 氏 (江別第一中学校教諭)

 札幌商科大学から札幌学院大学へと校名が変わったのが、私が二年から三年へと進級するときでした。校名募集が行なわれ、談話室の掲示板にさまざまな校名が張り出されていたのを覚えています。曰く「文京台大学)、「原始林大学」などなど…。彼是15年以上前になるでしょうか。商学部のみならず、人文学部も当時からあり、さらなる発展のための校名変更だと記憶しています。
 私が卒業する年には、LL教室を含む新校舎が建てられるなど、変化が形となって現れ始めました。もう少し在学していたいと卒業するのが残念なような気もしました。その後、五、六年が過ぎ、一度英語英米文学科出身の中高教員の集まりが持たれ、久々に母校に足を踏み入れました。瀟洒な建物が駐車場の前に出来ていて驚きました。新聞等での各運動部の活躍の記事を見て誇らしく思ったこともありました。母校の発展を実際に見たり、人伝に聞くたびに嬉しく思ったものです。
 今年に入り、「人文学部英語英米文学科出身教師の会」設立のための準備委員をさせていただくことになり、何度か大学に足を運びました。巨大なタワーや、前庭の美しさに仰天し、このような環境で学ぶことのできる学生たちがうらやましくなりました。自分はこの大学の卒業生なのだと、母校の着実な発展に胸をはりながら、設立準備会に参加しているところです。
 さて、「札幌学院大学人文学部英語英米文学科出身教師の会」(仮称)について、最後に少々述べておきたいと思います。目的は、同学科出身の教員が、教科教育・学校教育に関わる研究や研修を行い、会員各々の資質を高め、相互の連携と親睦を図り、合わせて母校の発展を資することとしています。先日、設立に向け、本学出身の教員の方々にアンケートを実施しました。多くの方々に賛同をいただきまして、現在設立総会に向け準備をしているところです。
 設立総会を成功の内に終わらせ、後に続く多くの後輩たちへ、また母校へ、わずかでも貢献できればと思っております。


  本学にて開催された学会  

 臨床心理学科が開設された本年度、左記の二つの全国心理学系学会が開催された。いずれも本学教員が中心となり、学科・研究科の教員、人間科学科・臨床心理学科の学生に加え、大学外有志の先生方や臨床家の応援を得ながら運営された。
 G館SGUホールを始めとする本学のキャンパスを使用して、心理臨床学に関する数多くの研究発表やシンポジウムが設定された。全国学会にふさわしい充実した内容であり、全国から多数の参加者をお迎えし活発な討論が行われ、両学会ともに盛会のうちに終了した。学会の手伝いで参加した学生にも意義ある体験となったと思われる。

平成13年8月31日 〜 9月3日
 日本人間性心理学会 第20回大会(準備委員長・滝沢広忠)

平成13年9月23日 〜 24日
 日本箱庭療法学会 第15回大会(大会会長・清水信介 | 事務局長・徳田仁子)


2001年度学部教員の人事、研修活動等 (4/1 〜 9/30)
◎海外研究出張
●奥田 統己 2001年5月12日〜5月19日 アメリカ「アイヌ研究文献調査」
●奥谷 浩一 2001年7月29日〜8月20日 韓国「韓国語研修」
●平体 由美 2001年8月1日〜8月15日 アメリカ「児童労働規制に関する政府関係資料と改革団体とのマニュスクリプトの閲覧」
●後藤 弘 2001年8月1日〜9月4日 アメリカ「アメリカ英語と英語学の研究・文献収集」
●富田 充保 2001年8月12日〜8月20日 フィリピン「フィリピンの教育事情視察と開発、国際理解教育等について学ぶ」
●及川 英子 2001年8月15日〜9月13日 イギリス及びオランダ「観劇及び資料収集」
●中村 敦志 2001年9月4日〜9月11日 アメリカ「アメリカ詩に関する資料収集」
●岩壁 茂 2001年8月22日〜9月6日 アメリカ及びカナダ「アメリカ心理学協会でポスター発表、SFPRGで資料収集、カナダ・マギル大学で共同研究打合わせ、データ収集」
   
◎委嘱発令
●奥谷 浩一 江別市生涯学習推進協議会理事・総務委員長(江別市教育委員会)(2001年5月〜2003年4月)
●小山 充道 スクールカウンセラー(立命館慶祥中学校・高等学校)(2001年5月〜2002年3月)
●酒井 恵真 北海道社会学会理事(北海道社会学会)(2001〜2002年)
●佐倉 朔 代田区文化財保護審議会委員(2001年4月〜2003年3月)「第五十回母と子のよい歯のコンクール」(厚生労働省)(2001年度)
●津田 光輝 江別市高齢者保健福祉計画等評価委員(2001年3月〜2003年3月)
●鶴丸 俊明 前・中期旧石器問題調査研究特別委員会委員(日本考古学会)(2001年6月10日〜2004年5月31日)
●廣川 和市 市教員能力認定委員会委員(北海道私立専修学校各種学校連合会)(2001年6月1日〜2003年5月31日)
●松本 伊智朗 北海道教育モニター・アドバイザー(北海道教育委員会)(2001年7月〜2002年3月)
   
◎研究助成
●鶴丸 俊明 「北海道における前・中期旧石器文化の研究」(高梨財団)30万円


編集後記
 本年度前期の学部活動の報告と共に、「人間とは何か」を根底に据えた人文学部再編について杉山学部長に語って頂いた。世界が混迷の度を深める昨今、この問いの意味は並々大きくなる。在学生への激励の一助にと願って「卒業生だより」を企画した。
(及川)