2002・10・1 No.17


沖縄・祖国復帰三十年
酒井恵真 Eshin Sakai

 沖縄は今年、祖国復帰三十周年を迎えた。しかし、沖縄の人々にとっては、この節目を素直に喜べない、複雑な思いで迎えたに違いない。
 沖縄は、最近いろいろと話題になっている。2000年の先進国首脳会議(サミット)の開催、沖縄の図柄が入った2000円札の発行、NHKの朝の連続ドラマ「ちゅらさん」の放映、さらに独特の方言等の文化、そして食べ物など南国情緒が人々の関心を呼んで、沖縄を訪れる旅行者も増えていた。
 しかし、昨年9月19日のアメリカ同時多発テロは、沖縄の主力産業である観光産業に大打撃を与えた。修学旅行を始め、日本の旅行者が急に沖縄のもう一つの現実を思い出したからである。その現実とは巨大な米軍基地の存在である。このテロ事件は世界中のアメリカ関係施設がテロの危機に曝されていることを意識させた。勿論、テロの報復に向かう軍隊が駐留する沖縄の米軍基地も例外ではない。本土の日本人は「危険な基地の島・沖縄」を避けたのである。
 その心配を裏付けるかのように、この冬に沖縄を訪れた私の目に奇妙な光景が飛び込んできた。日本の警察の機動隊が米軍基地のゲートを警備する姿である。「日本の警察に守られた世界最強の軍隊」の存在、これが沖縄の現実を物語っている。先の大戦で「軍隊が自国民を守らない」事実を骨身に沁みて知った沖縄の人々は、「日本の警察が米軍を守る」光景をどう見たであろう。
 沖縄には日本に駐留する米軍基地の75%が集中するという。基地の整理・縮小は約束されていたが、長らく放置されていた。だから「普天間飛行場の返還」は県民にとって朗報だった。しかし、それには「県内移設が条件」という鎖がついていた。移設先には「地域振興」を名目とする政府の巨額な投資が約束され、県民世論は分断された。「基地は金になる」と地元の受け入れが進められ、本島北部の名護市移設が決まった。沖縄は復帰三十年にしても県民所得は全国最低、失業率も高い。「基地の危険性は承知、でも生活が大事」と現実主義がまかり通った。沖縄の友人は「『沖縄人』が自ら米軍基地の県内設置を認めるなんて……」とうめくようにいっていた。
 今年、沖縄では知事選挙を控えている。改めて沖縄の「祖国復帰とは何だったのか」が問われようとしている。


 
札幌学院大学臨床倫理学研究科
新 体 制 に つ い て
 
 本研究科は平成12年4月に発足し平成14年3月には6名の第一期生の卒業を見た。平成14年4月より3年目を迎えたが研究科の陣容は大きく変わることになった。これまで研究科の中心になっておられた清水信介教授、および小山充道教授が転任される一方、新たに徳田仁子教授、中原睦美助教授、岩壁茂助教授が研究科スタッフに加わることになった。
 徳田教授はこれまでやや手薄だった学校心理臨床に造詣が深く、その面での本研究科の充実が期待される。また中原、岩壁両助教授は学位を取得しての研究科への参画で、新進気鋭の研究者としてそれぞれ専門とする領域での研究指導に力を発揮されるものと期待するところは大きい。
 平成14年度の開講科目と担当者は表1の通りである。学校臨床心理学持論等の開講は来年度以降に予定している。開講科目そのものは平成13年度と変更はないが、その実施に当たって本年度大きく変更があったのは臨床心理実習AI、IIである。表1に示すとおり臨床心理学の担当者は臨床系の研究科スタッフ全員が担当することになった。本研究科は平成13年4月、日本臨床心理士資格認定協会より一種指定を受けたが、一種指定の重要な要件は、研究科スタッフの陣容とともに、学内に外来の相談機関があり、実習が内実を伴って学内で遂行できることである。この趣旨を生かすべく本年度より札幌学院大学心理臨床センターにおいて年間を通して毎週インテーク・カンファレンス、ケース・カンファレンスを実施することとし、そこに院生とともに心理臨床センターに関わる臨床系教員全員が出席することとしたものである。
 このようなシステムを作ることによって実習の内実は一段と強化されたと考えている。また表には掲載されていないが、臨床心理学科の橋本忠行講師もその一翼を担っていることを付記しておきたい。以上、本研究科の新体制と授業内容の特徴を述べた。まだまだ課題は多いが、一つずつ解決していきたいと考えている。
(池田光幸)
 
科目名称 担当者



臨床心理学特論 池田光幸
臨床心理調査演習 中原睦美
臨床心理面接特論 徳田仁子
臨床心理基礎実習 岩壁茂・奥平洋子









児童・青年期心理臨床特講 池田光幸
児童・青年期心理臨床演習 池田光幸
発達心理学特論 奥平洋子
人格心理学特論 今川民雄
教育心理学特論(後期) 小林好和
学校保険学特論(後期) 安栄鉄男









脳障害心理臨床特講 2002年度休講
脳障害心理臨床演習 中原睦美
精神保健学特講 2002年度休講
精神保健学演習 小片基
健康補助学特論(前期) 徳田仁子
集団療法特論(後期) 滝沢弘忠
精神医学特論(後期) 村上新治
科目名称 担当者





臨床心理実習AI 池田光幸・岩壁茂・小片基・奥平洋子・滝沢弘忠・徳田仁子・中原睦美
臨床心理学実習AII
臨床心理実習B 滝沢弘忠・池田光幸・小片基
ケースカンファレンス実習 2002年度休講
遊戯療法得論 東山絋久
社会心理学特論 2002年度休講
芸術療法特論(後期) 徳田仁子
生理心理学特論(後期) 沖田庸嵩
心理学研究法特論(前期) 沖田庸嵩
心理学特別演習(前期) 岩壁茂

 
表1

2002年度前期末学位記授与式
- 新たに18人が卒業 -

 本年度前期末学位記授与式(卒業式)が9月26日、本学で挙行された。全学部で59人に学位記が授与された。
 人文学部では人間科学科12名、英語英米文学科6名の計18人となった。式では、各学部長より一人一人に学位記(卒業証書)が授与された。式後の祝賀会では学長や教職員からの励ましを受けて、思い出深いキャンパスをあとにした。これで学士の学位を授与された人文学部の卒業生は、4,297人(人間科学科・2,974人、英語英米文学科・1,323人)となった。


人 間 科 学 科
九月卒業生
卒論発表会
 本年度前期末の卒業論文提出者は、「社会生活と人間」コース1名、「人間の形成と発達」コース4名、「思想文化と人間」コース2名の計七名であった。
 8月31日と9月4日に発表会が行われた。夏休み期間中でもあり、発表会は小規模なものにとどまったが、その分、発表者と出席した教員や学生との間で濃密な質疑が行われた。
(鈴木健太郎)

人文学部合同講演会
 人文学部では、一年生クラス合同で学外の講師のかたにお話いただく講演会を、例年二回ずつ開催している。今年の第一回目は「社会にとって必要とされる社会人となるために〜知と技術をどう磨くか〜」というテーマのもと、人間科学科卒業生の岩坂明氏と英語英米文学科卒業生の蒲田拓也氏を講師に迎えて去る6月28日に開催された。
 お二人は、日ごろより本学部学生の就職に関して多大なるご協力をいただいている「人文学部JOB支援システム」(前号参照)の中心メンバーである。
 当日は、このシステムの中で実際に求職学生を指導なさった経験を踏まえ、大学での勉学や日常生活と社会人にとって必要な能力との関係についてお話をいただいた。
 うかがっていて印象的だったのは、就職という一年生にとっては数年先の問題がテーマであったにも関わらず、ポイントのほとんどが大学初年度の基礎教育のそれと重なっていたことである。動機を明確に持って課題に取り組むこと、自らの思考様式に自覚的であること、問題発見能力を磨くことなどは基礎ゼミナールや論述・作文の授業の目的である。語学力の重要性が強調されたことも、一年生には改めて刺激になったようである。もちろん、講師の側で話題を選んで下さったということもあろう。しかし学生にとってもまたわれわれ教員にとっても、日々の授業への考えを新たにさせられる内容であった。
 第二回は来る11月6日に車椅子マラソンの宝塚一也選手(アトランタパラリンピック銀メダリスト)をお招きして開催する予定である。
(奥田統己)

『海外留学』

 英語英米文学科、半期留学の第三期生15名が、パシフィック・ルーセラン大学(アメリカ)、カリフォルニア大学デービス校(アメリカ)、今年度新たに加わったモナシュ大学(オーストラリア)へ旅立って行った。一、二期生同様、充実した留学生活の成果が期待される。 

留学先大学 参加人数
米国・パシフィック・ルーセンラン大学 3 0 3
米国・カルフォルニア大学デービス校 4 0 4
豪州・モナッシュ大学 8 4 4
合  計 15 4 11

人文学部一年生体育大会
 平成14年6月29日、人文学部一年生体育大会が行われました。私はこの企画の実行委員長には「ノリ」でなってしまったので、正直、最初はどうしようかと思いました。でも、他の実行委員の人達が頑張って企画内容などを決めていってくれたので、特に大した仕事をすることなく安心して当日を迎えることができました。
 当日は各クラスごとの参加者数にバラつきがあったものの、競技が始まるとどのクラスも少しずつテンションが上がっていき、思っていた以上に白熱しました。最後の種目であるバレーボールのときには、審判ミスをしたら暴動が起きそうなくらいの盛り上がりでした。終わった後の交歓会にも多くの人が参加し、それなりの盛り上がりを見せていたので、今回の体育大会は成功だったと思います。
 大学に入り、高校までのようにクラス単位や学校単位で一つのことに向かって取り組むということはなくなりましたが、今回の企画を通して、改めてその大切さを再認識できました。今後もこのような企画を行うことがあればもっと多くの人が参加し、何かを得ることができるのではないかと思いました。
(人間科学科二年小野寺翔太)

2002年度
 人文学部夏季集中講義 
  公開講座  
『二十一世紀の人間学科』
 
 人文学部は、昨年度まで21回にわたって「北海道文化論」(文化論特殊講義A)と題したリレー集中講義を市民に公開して実施してきた。そして人間科学科新カリキュラムの進行に伴い、今年度からこの公開講座を「二十一世紀の人間科学」(人間論特殊講義)というタイトルで再出発させた。 新タイトルのもとでの第一回となった今年度の講座のテーマは「事実のゆらぎ―測定誤差から捏造まで―」である。先年世間を揺るがしたいわゆる「前期旧石器」捏造問題をてがかりに、人間科学に限らず諸科学の基礎的問題である事実認定のありかたを考えることが目的である。
 講師陣には、新カリキュラムのなかで新たに設定された人間科学科「文化」領域の教員(考古学・歴史学・言語学)を核に、人文学部から哲学、社会情報学部から社会学と歴史学、そして学外から遺伝学と、人間研究の幅広い分野にわたる研究者が参加した。全体の日程は左のとおりである。
 
9月2日(月)
 考古学と「事実」
 −石器捏造事件の背景−  :鶴丸俊明(人文学部、考古学)
 −考古学におけるデータ解釈の問題−  :臼杵勲(人文学部、考古学)
   
9月3日(火)
 史料と史実
−文献史料と聞き書き:坂本能馬を誰が暗殺したか−  :船津功(人文学部、歴史学)
−史実と歴史認識:日韓歴史教科書の比較−  :諸洪一(社会情報学部、歴史学)
   
9月4日(水)
インタビュー調査と「事実」−人が人の話しを聞くということ−  :奥田統己(人文学部、言語学)
   
9月5日(木)
自然科学におけるデータ生成とその解釈に伴う問題  :斎藤成也(国立遺伝学研究所、遺伝学)
   
9月6日(金)
価値観にとっての事実の意義  :杉山吉弘(人文学部、哲学・科学論)
   
9月7日(土)
サーベイデータの事実性と恣意性  :中沢秀雄(社会情報学部、社会学)
 問題の複雑さと内容の幅広さとにも関わらず、各日ともほぼ百名の受講者を学内外から集め、講義後の反応もおおむね良好だった。学生にとっても、大学で学ぶことをそのまま鵜呑みにするのではなく相手の根拠と自分の価値観にさかのぼって考えてみることの必要性を、改めてまたは初めて、具体的に学ぶ機会になったようである。
(コーディネーター奥田統己)

人間学科
心理学特殊講義B
 
 夏期集中講義の心理学特殊講義Bでは、仙台白百合女子大学専任講師の舛田弘子先生をお迎えして開講しました。舛田先生は、私たちが話しことばを実際の日常生活の中でいかに使っているか、文章をいかに理解するのかといった言語的コミュニケーションに関する多種の研究を精力的に進め活躍しておられる若手心理学研究者です。
 講義は、私たちの日常的なコミュニケーション行動がどのように行われているかを、心理学的な視点から検討することを目的に行われました。はじめに、「コミュニケーションの一般的過程」に関して、ことばなどの様々な手段を用いて私たちが「意図の交換」を行うことが解説されました。次いで、「言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション」に関して、日常的なやりとりに含まれることばの解釈上の問題や心理学的な意味、そして、しぐさによるコミュニケーションの機能や文化差などについて説明されました。さらに講義終盤の「ことばと人間関係」に関する解説では、舛田先生ご自身の研究テーマである「ら抜き表現」や「待遇表現(敬語)」などが使われる際の心理や使用の現状などが実際の研究データをふまえて紹介されました。
 舛田先生は、授業の進展に沿って効果的にプリントを配布するなど、丁寧に講義が進められ、とてもわかりやすかったという受講生の感想が目立っていました。一般理論にとどまらず、研究成果をまじえつつ進められた講義は、学生にとって非常に刺激的なものでした。お忙しいなかにもかかわらず、熱心な講義をしていただいた舛田先生に心より感謝いたします。
(鈴木健太郎)
 
英語英米文学科
アメリカ特殊研究B
 大阪の相愛大学から山下昇教授にお越し願い、「アメリカ文学特殊講義B(小説)」をご担当いただいた。人種とジェンダーの観点から、アメリカ小説の読み直しを試みるというスケールの大きな講義だった。
 特に、ジェンダーに着目して登場人物の社会的関係を見直す解釈は、大胆で斬新なものだったと聞く。例えば、『緋文字』を「男同士の絆」で読むという実践例に、多くの受講生は新鮮な驚きを覚えたそうだ。
 最初は戸惑っていた学生たちも、詳細な資料に基づく具体的な講義を聞く内に、次第に理解を深めていったようだ。最終的には、フォークナーの短編小説に隠されたホモセクシャリティーのモティーフを読み取れるまでになったと、山下教授は喜んでおられた。
 最後に、山下教授からのコメントを紹介しておく。「学生の皆さんには、アメリカ文学に少しでも興味をもってもらえるきっかけになったら嬉しい限りです。私自身も本に纏められそうなテーマが見つけられた点で、大変有意義な機会でした」
(中村 敦志)
臨床心理学科
犯罪心理学心理 / 臨床特殊講義B
 

「医療心理臨床関連」

 本年度は、「犯罪心理学」「医療心理臨床学」の二科目が開講された。「犯罪心理学」は大阪教育大学の藤田裕司先生のご担当で、8月26日から29日まで行われた。受講生は、青少年の非行と軽犯罪に関する実態と理論的諸問題、司法的処遇の流れなどの基礎知識から非行面接と査定テストなど臨床実践の手続きまで幅広く学んだ。また、非行少女との心理面接を実演したり、心理査定結果を受講者全員が手にして犯罪者のもつ心理的特性を分析したりするなど様々な工夫がなされていた。履修者は、299名と非常に多く、関心の高さがうかがわれた。
 心理臨床特殊講義B「医療心理臨床関連」は、飯田美香先生をお迎えし、9月2日から5日まで行われた。医療機関における臨床心理士の立場と活動の現状をテーマとして、医師、看護師、作業療法上など他のメンタルヘルス実践家との関係における臨床心理士の位置づけ、医療現場で求められる資質と技量などについて、飯田先生がこれまでに臨床心理士として勤務された病院でのご経験をまじえながら話された。受講生には心理援助の実際について触れる非常に良い機会ともなった。

(臨床心理学科岩壁茂)

 
人文学部心理臨床センター第八回公開講座
『学校現場での心の問題 〜今、学校に求められていること〜』を開催
 
 平成14年7月27日(土)、28日(日)の両日、第八回目になる心理臨床センター公開講座が開催された。この講座は現場教師や児童生徒の心の問題に関わる様々な職種を対象に、より質の高い関わりを目指して毎年開催しているもので、本年度は55名(教師20名、養護教諭20名、スクールカウンセラー2名、その他教育委員会関係者等12名)の出席があった。
 テーマは「学校現場での心の問題―今、学校に求められていること―」である。プログラムの大枠は例年と変わりなく第一日目に二つの講演、二日目は午前シンポジウム、午後は参加者から事例提供を求めての事例検討会であった。
 一日目の講演は岩村由美子講師(元山吹高校・スクールカウンセラー)による「今、教師にとって大切なこと」と、久留一郎講師(鹿児島大学教授)による「スクールトラウマと学校ができること」である。岩村講師は今回三回目のご依頼であるが、都立新宿山吹高校相談室カウンセラーとしての経験を踏まえた、生徒、教師に対する細やかな配慮と、具体的な関わりの中で展開する生徒の目覚ましい成長は、毎回受講生に深い感銘と、生徒に関わろうとする強い意欲をかき立てるものである。久留講師ははるばる鹿児島大学からおいで頂いたが、最近の頻発する学校の衝撃的事件を目にするにつけ、対応のイロハを学ぶべく依頼したものである。先生はかねて学校ばかりでなく、いくつもの災害被害に際して心理的ケアのリーダーとして尽力された豊富な経験をお持ちであり、講演ではトラウマに関わる基本的概念整理から、災害場面での具体的対応の留意点など、多岐にわたって熱弁を振るわれた。講演時間の短さが惜しまれたことである。
 二日目のシンポジウムは「学校現場での心の問題への取り組みの現状」のテーマで、札幌第一高等学校養護教諭藤原幸子先生、立命館慶祥中学校・高等学校教諭高木正明先生、札幌市教育委員会金山正彦先生の三名から現場教師そして行政の様々の取り組みについて話題提供があった。午後の事例検討会は、小、中、高の校種別に分科会を設け、出席者からの事例提供を受けての検討会である。事例の検討のなかで参加者がそれぞれの経験を交流することで児童生徒の理解を深め、また実践的な知恵の獲得を目指したものである。
 二日間の講座で得た様々の知識、経験が日々の仕事に有効に役立つことを期待している。
(池田光幸)

 
  本学にて開催された学会  
 上記の公開講座以外にも本学では、左記の全国レベルの学会研修会が開催された。
 いずれも本学教員が準備から携わり、他大学や諸機関と連携しながら運営された。
 G館SGUホールを始めとする本学のキャンパスを使用して、心理臨床学に関する数多くの研究発表やシンポジウムが設定された。全国学会にふさわしい充実した内容であり、全国から多数の参加者をお迎えし活発な討論が行われ、両学会ともに盛会のうちに終了した。
 積極的に運営の手伝いを申し出てくれる学生・研究科院生が増えていることは有り難く、また、彼らにも有意義な体験となったと思われる。

 平成14年7月7日
  日本臨床心理士会・北海道臨床心理士会第四回被害者支援研修会

 平成14年9月27日〜28日
  日本電話相談学会第一五回大会


 
私 の 留 学 生 活
 人文学部には大韓民国東国大学交換留学制度による留学生と沖縄国際大学総合文化学部との単位互換制度にもとづく国内留学生が学んでいる。英語英米文学科の林志宣さんと人間科学科の比嘉真弓さんに、故郷を離れて半年、それぞれの思いを語ってもらった。
自立に向かって
 
 「あなた、本当にお嬢様だったよね。」日本に初めて来たとき、そう言われたことが結構あった。向うでの私のことを振り返ると、やっぱりそうだったのかも知れない。向うではご飯も炊いたこともなかったから。
 日本で一人で迎えた四月の朝、私はとりあえずご飯を炊くことに挑戦してみた。だが、その日は一日おかゆだけ食べなければならなかった。翌日はその反対に水の量が少なかったため、お米がみんな立っちゃって。本当にご飯なのかと思うほど、おかしくなっちゃった。
 ご飯も炊けない人が自分でおかずを作るはずがない。いくら腐ったキムチでも、それだけで何とか食事ができるんだという事を、日本にきてやっと分かるようになったのだ。しかも、結構美味しくさえ感じるようになった。
 私は奨学生なので、アルバイトはしていない。しかし、日本は物価が高いので、奨学金も節約して生活すべきだと痛感した。韓国で暮らしたときの私だったら、早々に「お小遣いください。」と親のところに飛んでいっておねだりしたものであった。私のホームシックはだんだん大きくなり、カレンダーだけを見上げた。そのとき思った。今、生まれて初めて、寂しさを味わっているのだと。でも、ここの生活に慣れるためには、何とかやらなければならないのだと。それで私は友達にいっぱい会ったり、日本語や英語の勉強に力を入れて過すことにした。
 留学して六ヶ月目、私は自分が180度変わったことを自覚しはじめている。今では、片目をつぶっても、上手に炊飯器に入れるお水の量を合わせられるし、韓国料理だけじゃなく、日本料理や中華料理にまで手を出すようになった。それに、自分が作った料理を友達に食べさせて、喜んでもらうことを楽しんでさえいる。お金はちゃんと溜めて、夏休みには旅行をする事ができた。私も頑張ればできるんだと実感し、初めからすべてうまく行く人はいないという思いを強くして、暮すようになってきている。
 夏休みの時、二週間ぐらい韓国に帰ってきた。そのとき、久しぶりに友達に会って、いろいろ日本での独り暮らしの話をしたら、「あんた、もう主婦になって帰ってきたじゃん。」と言われたものだ。留学というきっかけで私は、自立に向かっていろいろなことを学んでいるのだと思う。「お嬢様から主婦に変わったなんて、結構いいじゃん、やっぱり日本に来てよかったな。」と思っている。これからももっと頑張り続けて強い人に成長するぞ。
(英語英米文学科 林志宣 いむじそん)
北海道で暮らして
 北海道といえば、〈アイヌ民族〉のイメージが強かったです。沖縄にあるような、本土とは違った独特の文化や雰囲気があるのかなど思っていましたが、そうではなくて〈開拓〉の二文字も色濃く残っていました。時々「北海道の歴史は開拓の歴史だから」という話を耳にします。そう言われてみると、街のあちらこちらに明治時代以降の開拓の様子や歴史が展示されている資料館が目に留まりました。地名などにはアイヌ語がしっかり根付き、一方ではこれまでの開拓の歴史が後世に受け継がれている所なのだなと感じ、本来あったものと、後から入ってきたものがうまく混ざり合っているような印象を受けました。しかし、ここで出来た友だちとの会話にアイヌについての話題が多く上がらない事を考えると、まだまだタブーの多い問題なのかもしれないと思いました。沖縄の基地問題と似たような側面があると感じます。北海道に住むからには「客」としてではなく、本や資料からは伝わりにくい部分を感じたいと思いました。
 札幌学院大学に来て一番の収穫といえば、様々な考え方に出会えたという事です。例えば、教職の授業の中ではあらゆる教育観を知ることが出来ました。「教育」という一つのジャンルに対して多種多様なアプローチの方法があることを実感しました。そのきっかけは授業の中に限らず、同じ教職仲間の中でも得られることができ、すごくいい刺激をもらっています。この経験は、滅多に出来ない事だと思います。そして、一層外の世界へ興味が湧きました。たくさんの刺激を自身の中で反芻し、独自の教育観を形成してゆけたらいいなと思っています。
 最初の頃は、独りに慣れず寂しさが勝っていましたが、気付いてみればあと半分を残すばかりとなってしまいました。後の半年を悔いの残らないように頑張りたいです。
(人間科学科比嘉真弓)

2002年度学部教員の人事、研究活動等(4/1〜9/30)
◎海外研究出張
岩壁 茂  2002年6月20日〜30日 アメリカ「San Francisco Psychotherapy Research Group 研究発表」
臼杵 勲  2002年7月4日〜7月15日 ロシア「文部科学省研究費による日ロ共同発掘調査」参加
奥田統己  2002年5月24日〜5月30日 スペイン「Third International Conference on Language Resource and Evaluation」出席
川瀬裕子  2002年8月18日〜8月25日 中国「京劇の勉強のため」
後藤 弘  2002年8月21日〜8月26日 オランダ「Vrije University で開催される国際学会 First Language Attrition」出席
坪井主税  2002年5月30日〜6月9日 スイス「国立海洋博物館にて奴隷船に関する資料収集」 イギリス「ジャンデブロッホ戦争と平和博物館百年記念国際シンポジウム」発表
松川敏道  2002年9月21日〜9月28日 オーストラリア「インクルージョン・インターナショナル第十三回世界会議」出席
松本伊智朗  2002年3月22日〜4月2日 イギリス「イギリスにおける児童虐待対応等の聞き取り調査」
T・P・P・グローズ  イギリス「To Study Language Teaching Integration Programmes」
   
◎委嘱発令
奥平洋子  北海道教育モニター・アドバイザー (2002年8月5日〜2003年3月31日)
奥谷浩一  北海道自然保護協会理事(北海道自然保護協会) (2002年5月〜2004年4月)
奥谷浩一  江別市教育委員(江別市教育委員会) (2002年7月10日〜)
笹岡征雄  (財)江別市スポーツ振興財団評議員(北海道教育委員会) (2002年6月1日〜2004年5月31日)
滝沢広忠  全日本ろうあ連盟「ろう重複者生活支援のための啓発資材作成・研修事業」研修委員会(2002年5月〜2003年3月31日)
鶴丸俊明  (財)北海道埋蔵文化財センター評議員(継続) (2002年6月16日〜2004年6月15日)
中川文夫  北海道高等学校英語教育研究会役員(顧問) (北海道高等学校英語教育研究会)(2002年5月20日〜2003年3月31日)
前田武男  道立高等学校通学区域改善検討委員会議委員(北海道教育委員会) (2002年4月15日〜2003年3月31日)
松川敏道  北海道福祉村オンブズマンに係る委員(北海道福祉村) (2001年3月〜)
松川敏道  札幌市障害者ケアマネジメント体制整備検討委員会委員(札幌市) (2002年2月〜2003年3月)
松川敏道  権利擁護委員会委員((社)北海道知的障害施設協会) (2002年6月〜2004年3月)
松本伊智朗  不服申し立て審査委員(札幌児童擁護施設研究会) (2002年4月〜2002年4月4日)
松本伊智朗  日本子ども家庭福祉学会理事(日本子ども家庭福祉学会) (2002年6月〜2005年6月)
湯本 誠  大麻のまちづくり協議会評議員(大麻のまちづくり協議会) (2002年5月25日〜2004年5月24日)
   
◎研究助成
岩壁 茂 「心理治療における作業同盟の確立過程の研究」 (科学研究費補助金若手研究)90万円
臼杵 勲 「サハリンから北東日本海域における古代・中世交流史の考古学的研究」 (科学研究費補助金分担者)30万円
内田 司 「新たな都市・農村関係の創造を探求する実証的研究」 (科学研究費補助金基盤研究A)590万円
奥田統己 「北海道を中心とするアイヌ語諸方言の記録・整理」 (科学研究費補助金特定領域)180万円
奥田統己 「アイヌ語の副助詞の形式意味論による理論化とフィールド研究への還元」(科学研究費補助金基盤研究C)60万円
工藤与志文 「授業による理科学力形成とその変化に関する縦断的研究−小学校理科における単元進行に伴なう学力差拡大の是正を目ざして−」(文部科学省)290万円
工藤与志文 「誤った知識の保持状況と修正過程に関する研究−小学生の誤概念はひとりでに修正されるのか−」(日本学術振興会)50万円
滝沢広忠 「社会・文化的視点に立った聴覚障害児・者の心理査定に関する実践的研究」(平成十四年度科学研究費補助金)250万円
松本伊智朗 「児童貧困の測定に関する基礎的研究」(科学研究費)90万円
松本伊智朗 「育児をめぐる家族関係と児童虐待に関する研究」((財)北海道青少年育成協会委託研究)
湯本 誠 「新しい職業能力を職業経歴の動向についての研究」(科学研究費補助金分担者)30万円
訃報
 去る五月三十日、人間科学科一年の深瀬聖(ふかせ・たかし)くんが、バスケットボールサークルの練習中に急逝した。
 医師の診断による死因は心不全の疑いである。
 入学後二か月という短い時間であったが、多くの友人を得て学生生活が楽しいと、山形のご家族にも話していたとのことである。ここにご冥福をお祈りする。
(一年四組担任 奥田統己)

編集後記
  少子化・不況のなかで大学の独自性が求められ、全国的にさまざまな取り組みがなされている。大学、ひいては学生のためになる改変を祈りたいものです。…人文学部報はどのような改変が必要か…
(中原)